第30話 健太の過去①
-美優-
健太君と喋ってるうちに緊張も解れいつの間にか自然体になっていた。
よく考えるとお酒を飲んで夜中に男を連れ込み、朱美にバレたら100%ネタにされるなと思い思わず笑みがこぼれる。
「どうした?なんか笑ってる?」
健太君に鋭くツッコまれた。
「いやなんでもないよ。気にしないで」
笑って誤魔化す。
「いや何?気になるなぁ」
「本当何もないから。・・・横座ってもいい?」
「勿論。どうぞ」
そうして健太君の横に移動する。
私はどうしても健太君の前の恋愛が気になっていた。
本当は聞きたくないけど気になって仕方がなかった。
健太君も聞かれたくはないかもしれない。
悩んだがお酒で少し酔った勢いもあり思わず聞いてしまう。
「ねえ健太君。その、・・・前の彼女となんかあった?」
「えっ?どういう事?」
「いや、あの、ごめん。なんか変な事聞いてるとは思うんだけどその・・・気になっちゃって。健太君が前の恋愛引きづってるんじゃないかって」
「ああ、ノブからなんか聞いた?引きづってる訳じゃないんだけどなぁ・・・」
健太君は何処かちょっと遠くを見てる感じだった。
「いやあの、ノブ君からは何か聞いた訳じゃないけど、直感というか、その・・・」
上手く言葉に出来ず、困ってしまう。
「ひょっとして美優ちゃんの事不安にさせてる?」
そう言って健太君の方から手を握ってくる。
「えっ、どうなんだろう?不安ていうか、なんていうか」
私が言葉に困っていると、
「俺もどう話したらいいかわからないからひょっとしたら美優ちゃんが聞きたくない事もあるかもよ」
「健太君が話したくないような事、私が聞いてるんだからそれはちゃんと聞くつもり」
「そっか。・・・それなら・・・」
健太君は淡々と話しだした。
-健太-
美優ちゃんの部屋で2人で話していると、突然俺の前の恋愛について聞かれた。
正直あまり
前の彼女とは高1の冬に知り合って俺の方から好きになって告白して付き合う事になった。
はじめは毎日一緒にいて順調に過ごしていた。
その頃俺はバンドを組んでいてLIVEとかもよく見に来てくれていた。
そして夏が終わり季節が秋に移り変わろうとする頃、彼女の態度に少し変化が出てきた。
遊びに誘っても
『何処か行くの?』
と聞かれ、いや特に何処行くとかは考えてないけど、と言うと
『じゃあ今日は友達と約束あるからまた今度にして』
と言われる事が多くなっていった。
さすがに『マンネリ化してるのかな?』『ちょっとマズイかな?』
そう思い何処か泊まりで遊びに行こうかと考えるようになった。
定番だが日本で一、二を争う関東、関西のテーマパークか、イルミネーションが綺麗な観光地か、それともシーズン関係なく行ける水族館とかか。
しかしどれを提案しても反応はイマイチで
『友達と約束あるし別の日にしよう』
『ちょっとバイトの休み取れないからまた考えよう』
などと言われ結局予定は埋まらないまま時間だけが過ぎ、俺の想いを
さすがにここまで来ると馬鹿でもわかる。
別れは近いかな、と。
それでも俺は馬鹿だったようで
『クリスマスになれば何か変わるかも』
そんな幻想を抱いていた。
「ちょっと待って健太君!私から聞いといてなんだけどイライラしてきたしこれ以上はシラフじゃ聞けないからお酒取ってきていい?」
美優ちゃんはそう言うとスっと立ち上がった。
「あっ俺も欲しいな。シラフで話すのもしんどいし」
「いいね。もう今日はお酒の力借りちゃおう」
そう言って美優ちゃんは力強い笑顔を見せ下に降りて行った。
暫くすると美優ちゃんは缶ビール2本とスナック菓子を持って戻って来た。
「ごめんビールしか無かった。大丈夫?」
少し心配そうにこっちを見る。
「大丈夫。俺お酒の味わかんないからなんでもいいよ」
「それ本当に大丈夫なの?」
「大丈夫だって。乾杯しよっか」
そう言って美優ちゃんと乾杯し話しの続きを始める。
12月に入り当時組んでいたバンドも忙しくなっていた。
「とりあえず20日のクリスマスLIVEだな」
ベースの秀雄がそう言うと
「ああそこは俺達合わせて2組しか出ないからいつもより曲数多いし気合い入れて行こう」
ギターの大介が同調する。
「それはそうと健太。今回は彼女来るのか?」
秀雄が悪気はなく聞いてきた。
「いやぁまだ何も言ってないからなぁ。最近上手く行ってないし」
そう言って苦笑いを浮かべていると、
「なんだそうなのか?逆に俺達はクリスマスまでに彼女作るのはそこがラストチャンスと思ってるんだけどな」
大介と秀雄は2人揃って笑ってた。
「お前らそんな不純な動機だから曲の最中に弦が切れたり、肝心なスラップの時に指がつったりするんじゃないのか?」
俺は思わず笑いながらツッコんだ。
「じゃあ彼女作るためにも早く合わせていこうぜ」
ドラムの拓也に促され俺達は練習を再開した。
数日後彼女に連絡しクリスマスLIVEの事を伝えると
「うん。行くよ」
と言ってくれた。
その受け応えに若干の違和感を感じながらも来てくれる事に俺は喜んでいた。
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