第15話 それぞれの悩み

 -美優-

 地元へ帰るバスの中で健太君とLINEのやり取りをする。

『お疲れ様。

 おばあちゃんの家遠いんやね。

 俺、ちょうどそのへんの時間、駅前にいるかもしれんしタイミング合えば送ろうか?』


『えぇマジで!?どうしよう、普通に嬉しい』

 そう思いながらバスの中、1人でニヤけてしまう。


 でも本当にどうしよう。あの女の霊、やっぱりいるよね?御守りあるから少しは離れてくれないかな。

 まぁそれは明日会っても一緒か。


 それよりもどのタイミングで女の霊とかお祓いの話したらいいの?

 だってまだ2人でデートもした事ないんだよ。


 今日もし会えたとしてその時に御守りを渡したらいいかな?

 そして明日デートの時に女の霊とかお祓いの話とかする?


 いやいや、初めてのデートで

『健太君に女の霊が憑いてるからお祓いした方がいいの』

 なんて言ったら絶対変な宗教に勧誘してるヤバい女だって思われちゃう。


 とりあえず1回朱美に相談しようかな。


 色々な悩みを抱えつつバスは目的の駅に着く。


『さてここから電車と新幹線を乗り換えて約4時間。帰る頃には日は暮れてるなぁ。ちょうど健太君が空いてる時間だったらいいなぁ』

 そんな思いを抱きつつ次に乗る電車を待った。


 -健太-

 バイク屋へ行き美優ちゃんの為のヘルメットを探す。

 美優ちゃんの趣味がわからないからシンプルな物の方がいいかなっと思いながらもどれにするか決めかねてる。

 そもそも新品のヘルメットを美優ちゃんに用意したら逆に気を使われるんじゃないか?でも『あっこれは元から家にあったやつだから』とか言ったらなんか中古っぽく聞こえるかもしれない。


 あぁこんな時、相手に気を使わさず、さり気なくプレゼントを渡せるような話術が俺にあったらなぁ、と思いながらとりあえず値段はそこそこでシンプルな物を選ぶ。


 気が付くとヘルメット1つ選ぶのに1時間程使っていた。

『自分ながら優柔不断だな。考え過ぎなのかな?明日もこんなんじゃさすがにマズイな』

 そう自分自身を戒めながら再び駅前へとバイクを走らせる。


 そして再び駅前に戻って来た。


 スマホを取り出し画面を確認する。


 時間は3時過ぎ、確か『早くて夕方』って言ってたしまだ時間はあるかな。


 とりあえず誰かに見られても面倒だし1人喫茶店に入る。

 

 しかし喫茶店に入った瞬間に自分の選択が間違っていた事に気付く。


「あっ健太君」

「おっ何してるんだ?」

 佐和子と泰文がいた。


『うわっマジか!?』

 滅多に1人で喫茶店に入る事なんかないのに何故このタイミングでコイツらはいるんだ!?


「あれっ?用事終わったの?」

 佐和子がすかさず聞いてくる。


「いや、まだ終わってない。今ちょっと休憩しようかと思ってな」


「おお、今日はノブは一緒じゃないのか?」

 泰文が声をかけて来る。


「今日は知らないけど、朱美ちゃんと一緒なん違うかな?」


「まぁ突っ立ってないでとりあえずここ座ったら?」

 佐和子が泰文の隣へ促してくる。


「えっ、お、おお」

 戸惑いながらも上手くかわす言葉も見つからず泰文の隣へ座る事になる。


『マジか、俺は1人でこれからについて考えたいのに、何か見えない力が俺の幸せを邪魔してるのか?

 まぁ少ししたら何か理由付けて離脱しよう』

 そう思い何かいい理由がないか考える。


 しかし傍から見たら泰文と佐和子がデートしてたようにも見える。

 実際この2人はどうなんだ?佐和子はまぁ距離感がよくわからないからなぁ。

 泰文はどうなんだ?


 自分の事は棚に上げながら他人の事が気になりだした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る