第14話 女の霊はどこから?
-美優-
おばあちゃんの家から歩く事15分。
目的の神社に着く。
「ごめんくださーい。神主さーん。おるとねー?」
おばあちゃんが元気に叫ぶと
「おお、鳳のばあちゃんねー。どげんしたとか?」
(※おお、鳳のばあちゃんか、どうしたんだ?)
奥の方から60代ぐらいの男性が出てきた。
因みに鳳とは私の母方の旧姓だ。
「神主さんに頼みがあって来たとよ。」
そう言っておばあちゃんはぺこりと頭を下げる。
「ほれ、この子が孫娘の美優ちゃんなんじゃが悪か霊に困っとるとって」
そう言って私を紹介してくれるので深くお辞儀する。
「おお、ばあちゃんこげんみじょか孫ばおっとね」
(※おお、ばあちゃんこんなに可愛い孫がいたのか)
「久しぶりにこっちに来よったばってんこげん太かなってさ、もう、うったまげちょっと」
(※久しぶりにこっちに来たけどこんなに大きくなって、もうびっくりしてるのよ)
『えっ、おばあちゃん私そんなに太ってる?』
目の前で喋ってる2人の言葉がどんどんわからなくなり、ここは異国の地なの?と困惑しながらも私はとりあえず笑顔を絶やさずニコニコしてた。
「さぁ美優ちゃん神主さんに相談ば、せるんじゃろ?」
『あっやっとわかる言葉になった』
「あの、神主さん、私の友人の事なんですが・・・」
正直、私の言葉は通じるのだろうか?と思いながらも健太君の事を知ってる限り話した。
「ほか、ほか。んんん。失礼。ちゃんとわかるようにこっちの方言は使わないようにするからね」
神主さんは咳払いした後、急に丁寧な口調で語りだした。
急に雰囲気も変わったので私も自然と背筋が伸びる。
「まず初めに話を聞いた時は地縛霊かと思ったんだがひょっとしたら違うかもしれない。地縛霊はその土地に
神主さんの話を聞いて驚いている。私もてっきり山の駐車場の女の霊が憑いて来たんだと思っていたからだ。
「ひょっとしたらもっと違う所から憑いて来てしまったのかもしれない。まずその方におばあちゃんからもらった塩を水に溶かして与えてどういう変化があるか見て下さい。そしてこの人型の紙と御守りを持たせて下さい」
そう言って人型の紙を渡してくれた。
「一応簡単なお祓いの仕方を紙に書いて渡しますから試してみて下さい」
「えっ、ちょっと待って下さい。私がお祓いとかするんですか?」
私はびっくりして確認する。
「お祓いと言ってもそんな大々的な物じゃなく、先程の塩を溶かしたコップ一杯の水を飲んで、その人型の紙と御守りを身に付け軽くお経を唱えるだけなんで大丈夫だと思いますよ」
神主さんは優しく笑みを浮かべている。
そして神主さんから簡単なお祓いの流れの説明を受けた。
「あの、御守りっておばあちゃんからもらったやつでいいんですか?」
「ええ、その御守りと塩は先代の神主がご祈祷した物で、先代は結構有名な方だったのでそれが1番かと。そしてもし、その御守りか人型の紙に異変があったらすぐにここに書いてある人に連絡してください。関西の方の私の知り合いで、力になってくれると思いますよ」
そう言ってその人の連絡先が書いてあるメモを受け取り、お礼を言って神社を後にする。
そして今日中に帰るためにバス停にそのまま向かうとすぐにバスが来た。
「美優ちゃん気を付けて帰るんじゃで」
おばあちゃんはやっぱり寂しそうだ。
「うん。おばあちゃんありがとう。また連絡するからね。そして今度はゆっくり来るから」
そう言っておばあちゃんとハグすると、私はバスに乗り込んだ。
おばあちゃんは見えなくなるまでバス停で1人見送ってくれていた。
『おばあちゃん本当は寂しいんだろな。今度は絶対ゆっくりしていくからね。待っててね』
短過ぎたおばあちゃんとの夏休みを終え私は帰路につく。
-健太-
3日連続で見ていた悪夢は昨日は見る事はなかった。
一応夢の中では完結してたっぽいからもうあれ以上続きはないのか?
いや映画やドラマじゃないんだし夢ってそんな物なのか?
そんな事を考えながらやはり1番に考えるのは明日のデートの事だ。
今はまだ昼過ぎだし美優ちゃんからは連絡ないけど今日帰ってきたら連絡するって言ってたしな。
駅からはどうやって帰るのかな?バスかな?歩き?自転車とか?
歩きかバスで、もし俺がその時たまたま駅の近くにいたら送って行くけどなぁ。
そんな事を考えつつ今、駅前の辺りをウロウロしている。
すると美優ちゃんからLINEが届く。
『今おばあちゃんの家出てバスに揺られてます。
そっちに帰れるのは早くて夕方。遅かったら7時過ぎるかも(泣)
また明日の事もあるし目処がついたら連絡します』
『うわぁおばあちゃんの家遠いんやなぁ』そう思いながらLINEを返す。
『お疲れ様。
おばあちゃんの家遠いんやね。
俺、ちょうどそのへんの時間、駅前にいるかもしれんしタイミング合えば送ろうか?』
よしとりあえず暫く帰って来れなさそうだし美優ちゃん用のヘルメット、バイク屋に見に行こうかな。
そう思い移動しようとしていると
「あっ健太君やん」
声をかけて来たのは佐和子だ。
「おお、佐和子。何してんの?」
「私は買い物。健太君は1人で何してんの?ナンパ?」
佐和子は笑いながら聞いてくる。
「んな訳ない。ちょっと用事あるから移動しようとしてたトコ」
「あっそうなんだ。暇ならちょっと付き合ってもらおうと思ったのに」
佐和子はちょっと残念そうに言うが冗談じゃない。
いつだったか『ちょっと暇なら付き合ってくれない?』て言うから軽く『いいぞ』って言ったら数時間買い物に付き合わされて振り回されてフラフラになったのに。
しかも佐和子と一緒にいる所を美優ちゃんに見られたらあらぬ誤解を招く恐れがある。
「とりあえず俺は忙しいからもう行くからな」
そう言って足早にその場を立ち去り、難を逃れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます