第13話 帰省
-美優-
新幹線と電車を乗り継ぎながらおよそ4時間。
ようやく目的の駅に着く。
「ふぅんん〜〜ん、はぁ、やっぱりもうちょっと計画的に来るべきかな」
ずっと座りっぱなしで固まりそうな全身を伸ばしながらそう呟く。
『ああ、ここから更にバスで1時間かぁ』
そう思いながらバス停へ行き時刻表を確認する。
『げっ、次のバスまで30分以上ある』
そう思いげんなりしていたが仕方ないので参考書を取り出す。
『ここ最近は色々出掛けたりしていたし、明日、明後日も忙しいからこういう時にしとかないとする時無いもんねぇ』
そう思い軽くだが勉強を始める。
そして30分程が経ちバスが到着したので乗り込む。
『さて、ここから1時間か。ちょっと疲れたな』
そんな事を考えつつイヤホンを取り出し、スマホでお気に入りの音楽を聴きながら窓の外を眺め物思いにふける。
そしてふっと気が付き外の景色を見ると田んぼや畑が増え自然豊な景色に変わっていた。
『ヤバい、寝てた』
そう思い慌てて腕時計を見る。
バスに乗ってから50分程が経過していた。
『えっ、次何処に止まるの?』
慌てて次に止まる停留所を確認すると目的地の1つ手前だった。
『ほっ、よかった』
そう思いながら自分の持ち物を整理する。
そして目的地のバス停に着きバスを降りた所でおばあちゃんに連絡する。
「もしもしおばあちゃん?うん。美優です。今バス停降りたから今からそっち向かうね」
そう言いながら田んぼに囲まれた田舎道を歩いて行く。
10分程歩いておばあちゃんの所にようやく到着するとおばあちゃんは心配してか、玄関の前で待っていた。
「おばあちゃん久しぶり。元気だった?」
私が手を振り駆け寄ると、
「まあ、美優ちゃん綺麗になって。さぁ疲れたろう?早く家の中でゆっくりお休み」
そう言って家の中へ招いてくれた。
「ごめんね、おばあちゃん急に」
「よい、よい。遠かったろう?本当によく来てくれたねぇ」
皺だらけの笑顔で微笑んでくる。
「それでねおばあちゃん実は相談があるの」
いきなりで申し訳なく思うが そう言っておばあちゃんをじっと見つめる。
「ほか、ほか。よいよ。美優ちゃんが来るっちゅうけん、なんばありよったんじゃろか、思いよったんよー」
(※そうか、そうか。いいよ。美優ちゃんが来るって言うから何かあったのかなと思ってたのよ)
「そのね、まだたまに見えたりするんだけどね、私の身近な人にタチの悪そうな霊が憑いてたんだけど何か良い手はないかなって思って」
「そうね、まぁ」
おばあちゃんはそう言ってびっくりしたように口を手で押さえてる。
「ほじゃったら、ばあちゃんもっちう、よう効きようもんばあげっちゃねぇ。ちょっと待っとろう」
(※それだったら、ばあちゃんが持ってる、よく効く物をあげるからね。ちょっと待ってて)
そう言っておばあちゃんは立ち上がり奥の部屋へ入って行った。
『久しぶりに来たけどおばあちゃんの方言もたまにわからない事もあるけど懐かしいなぁ。』
そう思いながら部屋をキョロキョロと見渡していると、
「あった、あった。奥にしまっとったけん、往生しよった。」
そう言っておばあちゃんはお菓子が入ってそうな四角い缶を持って来た。
「これは御守りじゃ、そしてこれは清めの塩じゃ。このお塩は昔近所の神主さんがご祈祷されてからくれたもんじゃて」
そう言って古い御守りと白い紙に包まれた塩を私にくれた。
「年代物じゃて、まだ力は衰えてなかろう。塩はちょっと摘みよって水ば入れてのんじゃらよか」
(※年代物だけどまだ力は衰えてないだろう。塩は一掴み水に入れて飲んだらいい)
「ありがとうおばあちゃん。これで大丈夫かな?」
私が少し心配そうに覗き込むと、
「心配なら明日一緒に近くの神社ば行って神主さんに相談せんね」
「うん。じゃあそうしようかな」
「そんで、その人は美優ちゃんの大事な人かえ?」
おばあちゃんはジッと私を見ていた。
もうそれなりの歳なのに凄い眼力だ。
「うん、まぁ勿論大事な人だよ」
少し誤魔化すように言ったがその鋭い眼光は私の心を全て見透かしているようだった。
「なるほど美優ちゃんもいい年頃じゃもんねぇ。是非その人ばお目にかからんば、ばあちゃんまだ死ねんたいねぇ」
「ちょっとおばあちゃん、縁起でもない事言わないで」
「ははは、そうじゃのう」
そんな事を言いながら、おばあちゃんとの貴重な時間は過ぎて行く。
次の日の朝、騒がしく蝉の鳴く音が響いてる。
『蝉の音って夏って感じだけどこれだけ騒がしいとちょっと鬱陶しいかも』
そんな事を考えながら居間に入って行くと既に朝食が用意されていた。
「わぁ、おばあちゃんありがとう」
私は食卓に並ぶ卵焼きやお味噌汁を前に素直に感謝する。
「あぁ、美優ちゃんおはよう。ばあちゃんこげんもんしか作りきらんよってなぁ」
おばあちゃんは少し困った様に笑ってた。
「何言ってんの?凄くありがたいよ!さぁおばあちゃんも一緒に食べようよ」
おばあちゃんも横に座ってくれるよう促すとちょこんと座ってくれた。
「おばあちゃんありがとうね。いただきます」
両手を合わせお味噌汁からいただく。
朝起きたばかりの胃に優しく浸透していく。
おばあちゃんが作ってくれた朝食はどれもこれもシンプルながら最高に美味しかった。
「ご馳走様でした。おばあちゃん凄く美味しかったよ。ありがとうね」
「ほうか。良かった、良かった」
おばあちゃんは穏やかな笑みを浮かべていた。
「さて、ご飯も食べたけん神主さんの所へ行こうかねぇ」
そしておばあちゃんと歩き神社へと歩いて行った。
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