第12話 休息

 -健太-

「う~ん、はぁ、よく寝た」

 ノビをしながらベットから起き上がる。


 スマホで時間を確認すると既に昼は回っていた。


 そしてそのままLINEを開くと美優ちゃんからLINEが来ていた。

『おはようございます。健太君はまだ寝てるかな?(笑)

 私は今日はおばあちゃんの所に行って来るので 明日の夕方ぐらいに帰って来ます。それから明後日の時間決めてもいいかな?

 また起きたら連絡してね』


「今日からおばあちゃんの所に行くのか、ハードスケジュールだな」

 そんな事を考えながら美優ちゃんに返事を送る。


 するとちょっとしたら美優ちゃんからLINEが来る。


 そして俺が返す。


 暫くそんなやり取りを繰り返し『じゃあまたね』って事になり、ようやく行動を開始する。


 美優ちゃんと普通にLINEのやり取りをしている事に些細な幸せを感じながらも、昨日見た夢について考える。


 まず、昨日見た夢で既に3日続いている。

 感覚が麻痺しているが普通に考えたらまずありえない事だ。


 更に途中で出てきたお爺さんだ。

 何処かで見た事があるんだ。

 でも思い出せない。


 そして最後は美優ちゃんだ

 最後に出て来て俺を助けてくれた。

 女の子に助けてもらう俺も情けないが何故美優ちゃんが最後出て来た?


 しかも夢がずっと続いている事を考えたら一昨日の晩の夢、ようは2日目の夢の時点で美優ちゃんの登場は決まっていた?


 その時は俺が美優ちゃんの顔をはっきり覚えてなかったから顔が見えなかったのか?


 考えれば考える程、気味が悪くて訳が分からなくなる。


 まずは分かりそうな所から考えるか。


 あのお爺さんは何処で会ったんだ?


 絶対見た事あるはず。


 俺にお爺さんの知り合いなんかそうはいない。


 よく考えよう。いつも行くコンビニでよく出会うとか?学校の行きしなに出会うとか?・・・・・・


「ふぅ、」

 出るのはため息ばかり、何気なくベニア板がハマった窓を見ていると、


「思い出した!」


 そうだ、あのお爺さんは隣の建物が幽霊ビルになる前、まだ建築会社の寮だった頃に住んでいたお爺さんだ!


 隣だったからよく顔を会わせていた。


 でも何故そんなお爺さんが今頃俺の夢に出てくる?


 結局謎は深まるばかりだった。


 -信之-

 昼を回った頃、朱美から連絡がきた。

「あっ、ノブ。家にいた?」


「おお、部屋でゴロゴロしてた」


「そうなんだ。今、美優と別れたんだけど今からそっち行っていい?」


「おお、じゃあ待ってるわ。来る時コンビニで何か食べる物買ってきてほしい」


「はーい。後で請求するからねぇ」

 朱美は今日も元気そうだ。


 暫くして『やっぱり迎えに行った方が良かったかな?』

 そんな事を考えていると


「お邪魔しまーす」

 元気良く朱美の声が響く。


『思ったより早かったな』

 そんな事を考えていると、勢い良く部屋のドアが開く。


「お待たせ」

 そう言って部屋に入ってきた朱美は両手に大きなコンビニの袋を持っていた。


「えらい沢山買ってきたな」

 そう言いながらびっくりしていると


「うん。だって後で請求するって言ったでしょ。はいこれレシートね」

 そう言ってレシートを渡される。


「あ、ああそうだな」

 財布を手に取りお金を渡そうとすると


「あ、あとタクシー代ね」


「タ、タクシー?」


「うん。だって誰かさん迎えにも来てくれない上にコンビニで食べ物まで買って来いって言うんだもん」


『あっやばい。これは怒ってる』

 すぐに察知し素直に謝る。


「すいませんでした。僕が至らなかったです。申し訳ございません」

 朱美は仁王立ちでこっちを見ている。


「ふぅ。じゃあ、仕方ないし半分づつにしてあげる」

 そう言って朱美は笑っていたが


「いや、今回は全部払うよ」

 そう言って全額払った。


「それで美優ちゃんはどうするって?」

 昨日の話が中途半端になってたので聞くとおばあちゃんの所へ行く事になった経緯を朱美は教えてくれた。


「そっか美優ちゃんも色々心配してるんだな」


「うん。美優があんなに一生懸命になるとは思わなかった」


「前の彼氏の時とかそんな感じじゃなかったんだ?」


「そうだね。詳しくはわからないけど、もっとクールな感じだったし、最後の方は『浮気してたみたいだし別れようと思ってる』ぐらいにしか言ってなかったし」


「へぇー美優ちゃんぐらい綺麗でも浮気とかされるんだ」


「相手がどんなに綺麗で可愛くても浮気する人はするんじゃない?」


「まぁ確かにそうかもな」

 俺は腕を組みながら深く頷いく。


「ふーん、浮気する気持ちわかるんだ?」

 いきなり鋭い質問が飛んでくる。


「い、いやいや、そう言う意味じゃなくて」

 慌てて両手を振りながら否定する。


「ほほう、・・・なんかだいぶ慌ててない?」

 朱美が目を細めながらこっちを見てくる。


「いやいや違う、そうじゃなくて、気持ちがわかるんじゃなくて・・・・・・」


「えっ!?気持ちわかんないけど適当に相槌打ってたの?」

 どんどん泥沼にハマっていく。


「いや、だから・・・・・・」

 もう何を言ってもダメな気がする。


「あはは、だいぶ楽しんだしまぁ良しとしようか」

 そう言って朱美は笑う。


「それでなんだっけ?」

 朱美がとぼけた感じで聞いてくる。


「えっと・・・美優ちゃんが今回は違うって話だ」

 俺も半分忘れかけてた。


「あっそうだ、そうだ。っで、健太君の方はどうなのよ?」

 朱美が目を見開きながらこっちを見る。


「う~ん。健太かぁ、難しいなぁ」

 腕を組みながら上を見上げた


「えっ、健太君、美優の事あんまり?」

 朱美が更に目を見開き驚いている。


「いやいや、違う。健太も美優ちゃんの事は絶対気に入ってる。寧ろ好きやと思う」

 俺は大きく頷きながら言った。

「問題は前の失恋が酷かったから中々次に進めずにいる事やわ」

 俺はちょっと呆れたように朱美の方を見た


「それって前の彼女がまだ好きって事?」


「いや、それもたぶん違う。簡単に言うと酷い裏切りと別れ方したからあまり人を信じられへんみたい」


「どんな事になったらそうなんの?健太君そんな悪い人じゃないやんな?」

 朱美の口調が少しきつくなる。


「俺が知ってる限り健太が悪い事はない。悪いのは前の女ともう1人の奴や」

 気が付くと俺も感情的になっていた。


「ふぅ。だから健太は皆でいても、何処か1歩引いたような感じしてなかった?」


「あっ確かに。前も皆で集まって盛り上がってても1歩引いた所にいたような感じだった」


「だろ?だからひょっとしたら美優ちゃんの方に頑張ってもらわないとあかんかも」

 そう言って困っていると


「今回の美優はいつもとは違う感じだけど・・・どうなるのかな?あの2人」

 そう言って朱美も困った様に笑っていた。


「う~ん、とりあえず見守っとかな仕方ないかな」

 そう言いながら俺は朱美の方へ近づいていき肩に手を掛けた。


「ちょっと、ちょっと、今そういう気分じゃないんだけど」

 朱美はそう言って笑っている。


「えっ、そんな事言わずに、」

 そう言ってベットに軽く引っ張る


「もう」

 朱美もそう言いながらベットに入ってきた。

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