第11話 美優の決意
-美優-
「ふぅ、言っちゃった」
健太君との電話を切り一息つく。
「ちょっと。いきなり後に乗せてって、積極的に行ったじゃん」
朱美が大きな瞳を更に大きく見開き、びっくりしたように近づいてくる。
「ははは、なんだろう?勢いで言っちゃった。」
そう言いながらも自分でもびっくりしていた。
「まぁ、あれかな。だいぶムカついてたの?」
朱美が何についてかはあえて言わずにちょっと引きつった笑顔で聞いてきた。
「なんの事?別になんもないし」
そんな事言えば認めてるような物だが私もあえて何についてかは言わずに微笑んだ。
「はは、まぁ何にしてもそっちはそっちで楽しく行きそうだから見守っとくけどね」
「うん。ありがとう」
素直に朱美に感謝する。
「それはそうと明日、明後日なんか忙しいの?」
朱美が不思議そうに聞いてきた。
「うん。実はね私のこの見える力みたいなの、家系が関係してるかもしれないの」
「えっ、どういう事?」
女の子ながら『可愛い』と感じてしまう程に朱美はキョトンとしている。
「私が小さい時に、おばあちゃんが『その見える人達の事で困ったらおばあちゃんが力になってあげるからね』って言ってくれてたの。実際どうかはわからないけど明日朝からおばあちゃんの所に行こうかなって思ってさ」
「えっ、そうなんだ。でも美優のおばあちゃんの家って遠いんじゃなかった?」
「うん。九州だよ。新幹線と電車とバスで片道5時間ぐらいかな?だから明日行ったらそのまま泊まって明後日帰ってこようかなと思って」
「うわぁ。それは愛の力だね」
朱美が少し意地悪そうに笑ってる。
「ふふ、否定はしないけどね。でも早く対策はした方が良さそうでしょ」
私はあえて受け止め、余裕の笑顔で返した。
「あは、流石。あっ、じゃあ今日は私帰った方がいいね?」
朱美が慌てて時間を確認する。
「あっいやいや、私は大丈夫だから泊まっていってよ。時間も時間だし」
私は慌てて朱美を引き止める。
そして色々な『これから』を朱美と語り合いながら夜は
「うっ、眩しい」
カーテンの隙間から日差しが射し込む。
「あっ、起きた?おはよう」
朱美は既に起きてたようだ。
「おはよう。あっもうこんな時間だ」
スマホの画面を見ると11時前だった。
「幸せそうに寝てたからそのまま起こさなかったんだけどね、寝言で何か『健太君大好き~』って言ってたよ」
朱美が意地悪な笑顔を浮かべている。
「絶対言ってないし」
私は少し笑みを浮かべながらもはっきり否定した。
「あはは、ちょっとは焦るかなって思ったのに」
朱美は楽しそうに笑ってる。
「だいたいそんな夢見た記憶も無いもん」
「なるほどね。っで、今日本当におばあちゃんの所まで行くの?」
「勿論行くよ。その前にご飯食べようと思うんだけど朱美はどうする?」
「じゃあランチ一緒に食べよっか。その後はどうしようかな?家に帰ってゆっくりするか、ノブの所に行こうか」
そんな事を話しながら支度を急ぐ。
そして駅前のパスタ屋さんでもランチしながらガールズトークに花を咲かせる。
「朱美達も仲良いよね。まだ1年経ってないんだっけ?」
「そうまだ10ヶ月ぐらい。ラブラブだよ」
そう言って朱美はとびきりの笑顔を見せる?
「じゃあ私もそうなれる様に頑張ろうかな」
そう言いながらそろそろ出発の準備を始める。
「あれ? 昨日とは打って変わって前向きじゃん。なんか自信付いた?」
朱美は楽しそうに笑いながら聞いてくる。
「自信がある訳じゃないよ。多分、健太君の前だと緊張してシュンってなってるかも」
私は朱美に微笑みかけ、更に続けた。
「でもね、ネガティヴな事ばっかり考えても仕方ないし、前向きに考えなきゃ何も進まないかなって」
そう言って私は立ち上がり少し大きめのリュックを背負った。
「そっか。じゃあ頑張れ!特に何も出来ないけど応援は全力でしてるから」
そう言って朱美は私の背中を強く叩く。
「だから痛いってば!」
2人で笑いながら駅の改札へ歩いて行く。
「もし上手く行かなかったら慰めてね」
私がちょっと困った様に笑うと
「もう!言ってる側からネガティヴ!」
朱美がちょっと怒った様に言う。
「はは、本当だね」
「きっと大丈夫だから、自信持って」
「うん。じゃあ行って来るね。ノブ君にもよろしく」
「了解。気を付けて行ってらっしゃい」
そう言って朱美は改札で手を振りながら見送ってくれた。
『よし!おばあちゃん所に行ったらとりあえずおばあちゃんにしっかり話してそれから・・・』
これからの予定を考えながら私は街を後にした。
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