第187話 クロージング前提条件(CP)の確認

 昼食が終わると、先日DDで使用した大きな会議室に案内された。

 森社長、岡野取締役、そして大津証券の谷口Dが待機していた。


「お昼を御馳走になってしまいました。本当に素敵な食堂ですね。うちとは大違いです」


「お恥ずかしながら、食堂には全力を注いでおりまして……」


 片岡と森が、雑談に花を咲かせる。

 そして、雑談が一段落すると、ついにクロージングの手続きが始まった。


 大津証券の谷口が説明を始める。


「SSAで規定しているCP、つまりクロージングの前提条件は……」


 クロージングするためには前提条件を満たす必要がある。その前提条件はCP(Condition Precedent)と呼ばれる。


 今回の出資契約に規定されたCPは、


 ・SHAおよび業務提携契約が締結されていること

  → SSAと同時締結されているのですでにクリアされている

 ・必要な手続き(宮津精密による株主総会の特別決議)が完了していること

  → すでに議事録の抄本で確認済み

 ・表明保証に違反していないこと

  → 宮津精密から違反がないことを宣言する誓約書が提示された

 ・そして……


「関連契約の発効条件がすべて満たされていること。つまり、業務委託契約に規定された技術情報の開示が完了している必要があります」


 谷口がそういうと、間髪入れずに森社長が机の上に用意されているキングファイルを紹介した。


「こちらのデータをご確認ください。もちろん、電子データも別途用意させていただきます」


「ありがとうございます。確認させていただきます」


 片岡本部長は、キングファイルを手に取ると、黙々と内容を確認していった。

 途中、片岡が質問を行い、森社長が答えるシーンが続く。


 他のメンバーは一言も発せずにその光景を固唾をのんで見守っていた。


 やがて……


「詳しい内容は部下にもチェックさせますが、これから協業を深めるためのデータはそろっていると思います。ありがとうございました」


 片岡が森社長に近づき、握手を求めた。


「これからが本当の協業です。楽しみにしています」


「こちらこそ、ありがとうございます。ぜひとも御社事業に貢献できるよう頑張ります」


 こうして、CPがすべて整った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る