第14章 クロージング

第183話 第三者割当増資の手続き

「おはようございます。大津証券さんがクロージングの手続きについて説明しに来られるんですが、お時間はありますか」

「ごめん、任せてもいいかな。法務にも協力を要請してもらえる?」

「はい、わかりました。では私の方で段取り確認しておきます」


 最近山田は別件で忙しそうだった。


(ま、もう契約は結んでいるんだし、クロージングなんて大したことない。余裕でしょ~)


 ……と思ったら、大間違いだった。


 応接室で、真奈美と小巻は大津証券の谷口Dを迎えて話を聞き始めた。


「こちらが具体的な段取り表になります」


 そこには、びっしりと何行にもわたって段取りが書いてある。

 真奈美の額に冷汗が浮かび始めた。


 谷口Dが説明を始めた。相変わらず丁寧だが説明が長い。


 色んな前提をグダグダと並べて説明しているが、簡単にまとめると……


 ・宮津精密の株主総会での特別決議


 以上のようだ。


「つ、つまり、うちは特別決議の結果を待てばいいということかな……」


 真奈美が小声で小巻に尋ねると、小巻は涼しい顔で答えた。


「そうね。今回は総数をうちが引き受けるから、対象会社による募集要項通知も弊社の申込書も、その回答の通知も必要ないということね」


(もし総数引受じゃなかったらとしたら……大変だったのかしら)


 真奈美はぞっとしたが、今回はシンプルなんだから長ったらしい注釈は必要ないじゃんという気持ちも若干残っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る