第182話 嵐の前の……Part.12
「契約締結、おめでとう」
「おめでとう。ありがとう」
金曜日の定時後。
ちょっと奮発してビストロを予約した小巻と真奈美は、スパークリングで契約締結を祝いあった。
オードブルには色とりどりの野菜とピンクのサーモンカルパッチョ。
「それにしても、MA推進部に入ったばっかの真奈美が、よくこの短期間でしっかり契約まで結びつけたもんね」
「いやー、小巻にいろいろ指導してもらったからだよ」
「うんうん、先生がよかったんだな」
「ははー、心得ております」
ふたりは笑いながら談笑し、飲んで食べた。
透き通ったオニオンスープ。
鯛のロースト。川がぱりぱり、身はジューシー。
そしてメインは子羊のロースト。ソースが柔らかいお肉のうまみを引き立たせる。
グラスワインも、白ワイン、赤ワインとどんどん追加されていく。
「そういえば、今週は鈴木部長と投資委員会の準備してたんでしょ?どうだった?鈴木部長は」
「……」
急に答えが返ってこなくなったので、不思議に思った小巻が真奈美を見ると……
「……しんどかったわよ~」
真奈美がテーブルに顔を伏せて呻いた。
「すんごい細かい質問や指示がいっぱいで。ごもっともな指摘なんだけど今更な内容ばっかり。それなら最初に相談したときにまじめに考えてくれてればよかったのに」
「……ああ、そういう系統のメンドクサイ人なんだ」
「うん、今週1週間はひたすら鈴木部長に走りまわされたわよ」
泣きそうな顔をしている真奈美。
小巻が頭をなでる。
「よしよし。まさか山田チーフよりさらにドSを引き寄せちゃうなんて。本当に真奈美はドMの神様に好かれているわね」
「何よそれ。そんな神様いらないわよ~」
「わかった、わかった。じゃあ、がんばった真奈美のために、二次会を準備してあげよう」
ふたりの金曜日の夜はまだまだ終わらないのだった。
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