第181話 契約締結

 午後になるとすぐに、宮津精密のFAを務める大津証券の谷口Dが、宮津精密捺印済みの最終契約書一式を持参してきた。


「無事に御社でのご決裁がいただけたとのこと、ほっとしました。ありがとうございました」

「はい。我々もほっとしております。ぜひ、宮津精密の森社長、岡野取締役にもよろしくお伝えください」

「わかりました。森社長からは、契約締結のために東京に出てきたかったのですが都合が合わず申し訳ない、ぜひクロージングの際はまた京都にお越しくださいとのことでした」


 こうして、契約書を預かると、谷口は一度貴社。後程、白馬機工の捺印が終わったらまた取りに来るとのことだった。


 真奈美と小巻は、念のため、契約書の中身に間違いがないか、一言一句の最終チェックを行った。

 1時間ほどでチェックを終えると、雑務を担当している中野に声をかけた。


「中野さん、チェック完了したから、うちの社印も捺印お願いできる?」

「はい、もう準備万端ですよ」


 中野は元気に社印の捺印を取りに駆け出していた。


 そして、真奈美と小巻は……打ち合わせコーナーで放心していた。


「やっぱり、契約書の印刷は自分からスタートすべきね。紙の契約書を一言一句確認するのはしんどいわ」

「……賛成。次からはそうする、絶対」


 10分もたたずに白馬機工の捺印が押された契約書の束を片手に中野が元気に戻ってきた。


「はい、これで完璧ですよ」


 わかっていたつもりだが、真奈美は改めて中野の実務執行能力に高さに関心し感謝した。

 正直、このような雑務を自分で一からやっていたら、それだけで半日吹っ飛んでしまう。それをいとも簡単にこなしてしまう中野はMA推進部には欠かせない存在だった。


「中野さん、ありがとう。流石、段取りいいわ」

「いえいえ、今日は定時で用事があるので根回ししておきましたから」


 中野にとっては、金曜日の夜は定時で切り上げて合コンに行くものと決まっているようだった。


 色んな意味で超級の中野の支援のおかげで、真奈美たちは無事に、6月23日夕方に最終契約(SSA、SHA、業務提携契約)の契約締結を完了したのだった。

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