第162話 嵐の前の……Part.10
月曜日にトップ会談で折衷案に合意した後は、大きな争点は発生しなかったものの、契約文言は意外にも細かい文言のやり取りが続きかなりの時間を要した。
修正案の投げ合いが何度か続いた末に、ついに金曜日、SSA、SHAともに契約書の内容合意に至り、タイミングを合わせたかのように事業本部からも事業提携契約合意の連絡が入った。
「お疲れ様~」
「お疲れ様~」
真奈美と小巻の二人は新宿のにぎやかなスペインバルのカウンターで乾杯した。
「ああ、この2週間よく働いたわ。でもよかったわね。合意できて」
「ありがとうね。小巻が頑張ってくれて助かったわ」
「ふふふ。法務がここで頑張らないとどこで頑張るの?って言われちゃうからね」
二人は談笑しながらワインを飲み干していった。
スペインのスパークリングワイン。
タパスの皿がどんどんなくなっていく。
「お、きたー」
「これこれ、待ってたのよ」
アツアツのパエリアが運ばれてきた。
エビ、イカ、ムール貝……
ふたりはハフハフ言いながら食べまくる。
二人の食はとどまることを知らない。
「おいしいわぁ……ムール貝って、なかなか近くのスーパーで売ってないのよね。だからいつも貝抜きパエリアしか作れなくて少し寂しいのよね」
それを聞いた小巻が驚いた顔で真奈美を見る。
「え?真奈美、パエリアなんて作れるの?」
「失礼ね。作れるわよ。小巻も少しは料理くらいできるようにならないと……」
「いいんだもん。外食と弁当で生きていけるし。料理できなくても彼氏もいるし。料理できても彼氏がいない人もいるらしいけど……ね?真奈美ちゃん?」
「……私はたまたま、今だけフリーなだけだもん。そんなこという小巻は飲みが足りなーい」
(憎たらしーい、今日はとことん飲ませてやる)
こうして、二人の夜は深夜まで続くのであった。
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