第159話 サミット会議開幕

 6月2日月曜日。


 白馬機工の要請に即座に応じた形で、宮津精密の森社長、岡野取締役、FAである大津証券のメンバー、そして白馬機工からは事業本部から片岡本部長、佐々木部長、本社から山田、真奈美、小巻と、錚々たるメンバーがそろった。

 4拠点によるWeb会議、まさにサミット会議が行われるところだった。


 会議を仕切るのは大津証券。


「それでは、本日は出資契約でまだ合意できていない4つの論点につき、集中的に解決を図りたいと思います」


 画面には4つの論点が映し出される。

 内容は、先日真奈美が社内会議で示した資料と変わりはないが、プレゼン資料としての見た目は断然きれいなものだった。


(やはり専門家の資料は見やすくてきれいね……フォント、色使い、配置……わたしも見習おうっと)


 真奈美は感心しながら大津証券の会議の進め方を注視した。


 大津証券の谷口は、挨拶は長いが、本題に入るととてもスムーズなファシリテーターぶりを発揮した。

 言葉遣い、話の振り方……さすがにM&Aを数多く実行してきた専門家である。

 経営管理で社内を取り仕切ってきた真奈美とスキルは似ているが、レベルは格違いであった。


(これも、見習うべきところね)


「……状況の共有は以上になります。それでは、マイアミ様より、まずはコメントをいただけますでしょうか」


 マイアミとは宮津精密のコードネーム。

 プロジェクト関係者しかいない会議でもコードネームを徹底しているところも抜かりがない。


 こうして、最初のピッチャーマウンドに立ったのは、宮津精密の森社長だった。

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