第158話 本質は早期協業の実現

「それでは、一度ドラフトを修正したうえで、来週宮津精密側に回答しようと思いますがよろしいでしょうか」


 真奈美は会議のまとめを始めたが、片岡は何か引っかかているようだった。


「結局いつ契約がまとまることになるかな?」


 真奈美は返答に窮した。


「宮津精密がすべて飲み込んでくれれば次で合意になるのですが……」

「でも、宮津精密さんは交渉に出てきていないんだよね?」

「はい、今のところFAの大津証券と交渉をしています」


 片岡は少し考えてから……


「次は私も出るので、宮津精密さんにも出てもらおうか。一気にけりをつけたい。要請してもらえますか」


 真奈美は、おどろいて山田と小巻の表情を見た。

 立場が高い人ほどなかなか交渉現場には出たがらないことが多いが、片岡は比較的機動的な思考を持っているようだった。


「せっかくの良縁なのに、議論や交渉だけで時間を浪費していても意味がない。本質は早期協業の実現。時は金なりだ。私が森社長と一気に決める。どうかな?」


 真奈美は脱帽した。


「はい、ぜひ、そうしていただけると助かります」


 その後、森社長との交渉時の話の持って行き方、それぞれの役割分担を決めて会議は終了した。


 その日のうちにFAを通じて日程調整が行われ、6月第1週月曜日にいよいよ片岡と森のトップ対談が設定されることとなった。

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