第153話 借りを返す
山田は再びマイクをミュートにして、真奈美と小巻に呟いた。
「とにかく一旦持ち帰って相談しようか」
真奈美と小巻もうなづいた。
真奈美はミュートを解除し、今日のお礼と、白馬機工で内容検討させてもらうと回答。
大津証券からは、契約ドラフトを準備しているので、次からはタームシートではなく契約ドラフトベースに協議したいとの申し出を受け、了承し、会議は終了した。
その日の午後、山田は真奈美を呼んだ。
「実はさっき、岡野取締役から電話がかかってきたんだ」
「岡野取締役からですか」
「うん。率直に言うと、今回はゼロ回答になってしまったが、このままお互いがゼロ回答を投げ合うことは良くないので、うちから折衷案を提案できないかってお願いだったよ」
確かに、このままでは平行線になりかねないことは理解する。
でも向こうはゼロ提案だったのに、こっちから折衷案っていうのは若干引っかかるが……
「……先日のDDで借りがあるから、借りを返すという意味では、こちらから折衷案を提案することもありでしょうか」
真奈美は山田の顔色を窺うと、山田は苦笑しながら言った。
「うん、その通りだね。借りたものは返そうか。折衷案の検討、社内議論を進めてくれるかな」
「はい、やってみます」
真奈美は元気よく席に戻り、法務部のオフィスへと走っていった。
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