第152話 契約交渉第2戦
「昨日はありがとうございました。早速ですが、マイアミ様とも確認をしたうえで回答案を準備させていただきましたので、ご説明申し上げます」
大津証券の谷口Dが会議直前に送ってきたタームシートのマークアップ(修正履歴が残っている修正資料)について、修正部分を中心に説明を始めた。
やはり、というべきか。
これまでに社内で話題になった部分はことごとく打ち返されてきていた。
谷口の長い説明が続いているが、山田はそれを聞くこともなくマイクをミュートにして真奈美と小巻に語り掛けた。
「ほぼ全部の論点を押し返されたね」
小巻が応える。
「そうですね。想定もしていたとはいえ、全部押し返されるとつらいですね」
「さてさてどうしたものか……」
悩む二人を見て、真奈美が質問した。
「あの……うちがまた元に戻して返したらどうなるんですか?」
山田は困った顔をする。
「よほど交渉上優位であればそれでもいいけど、議論が進まなくなるし、相手との信頼関係を崩しかねないから、本来双方がいくらかは歩み寄る案を出しあうのが常套句なんだけどね」
「なるほど……確かに、交渉で平行線が続いたらになったらよくないですもんね」
真奈美が納得したようにうなづいた瞬間、スピーカーから大津証券の質問の声が聞こえてきた。
「……と考えておりますが、ハワイ様のお考えはいかがでしょう」
(ハワイは白馬機工のコードネーム。うちへの質問?やばい、聞いていなかった)
真奈美は慌てて山田をみると、山田はさっとミュートを解除し、すらすらと回答を始めた。
(……私たちと話していたと思ったのに……向こうの話も来ていたのかしら。聖徳太子並みのマルチタスク搭載AIスピーカーみたい?)
助けられた自覚もなく失礼な想像をする真奈美だった。
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