第151話 特攻隊
翌日、さっそく大津証券からWeb会議の要請が入った。
「宮津精密さん、もう回答案がまとまったんですね。なかなか対応早いですね」
真奈美が驚いて呟いた。
白馬機工であれば、こんなに早く方針を決めることはできないだろう。
「中小企業のメリットのひとつだね。まあ、もしかしたら我々の提案も向こうの想定内だったのかもしれないけどね」
「たしかに……であれば、受け入れてもらえるのでしょうか」
真奈美は、それなら楽ちんなのにと期待したが、山田は怪訝な表情をして答えた。
「そんなに簡単じゃ面白くないな」
「面白くないって……山田チーフ?遊びじゃないんですよ?」
「ははは、冗談だよ。まあ、向こうはFAも付いているんだから、やはり少しは強気で押してくると思うよ」
山田は冗談といったが、はたして本当に冗談だったのかは疑問だ。山田が場が荒れれば荒れるほど喜ぶ人種だということに、真奈美もうすうす感づいていた。
「FAが付いていると、強気になるんですか?」
「そうだね。本当なら取引先でもある当社相手に、宮津精密としては言いづらい強い要求でも、FA意見としてであれば気兼ねなく言うこともできるからね」
「なるほど、確かに……FAって特攻隊みたいな役割もあるんですね」
(この後無茶難題言われたりして、当社もFA雇っておけばよかった、と後悔しなければいいのだけれど……)
真奈美は頭を振って嫌な考えを振り払いながら、交渉第2回戦に向け山田と共に会議室へ向かった。
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