第150話 初戦終了
真奈美は続いてSHA(株主間契約)のタームシートの説明を始めた。
争点になると予測していたポイントは、
・株主総会全会一致義務(特に、定款変更、事業譲渡や会社再編などの拒否権)
・株式取り扱い(プリエンプティブあり、譲渡制限なし、タグとドラッグあり)
の2点であった。
真奈美は一通り丁寧に説明をし終えた後、質問を待った。
しばらくして、大津証券がミュートを解いて質問を始めた。
「拒否権の意図をお聞かせください。マイアミ様からすると、事業活動に制約を受けることは避けたいところです」
真奈美と小巻は目を合わせた。想定していた質問。回答案もできていたので、真奈美と小巻が交互に落ち着いて答えていった。
「今回の出資の目的は、両社の事業提携を発展させるためです。私たちも、マイアミ様の事業活動を制約する意図はありませんが、協業体制を根本から変えてしまうような大きな変更については弊社の同意をいただきたいという意図です」
「しかしグループ会社内の再編などは事業活動の一環だと考えますが」
「略式組織再編であれば株主総会は省略されますので、社内再編を阻止する意図はありません」
「……なるほど、なるほど。わかりました」
これ以上の深い突込みはなさそうだった。
その後も、質問が続き、ときには真奈美が、また具体的な内容については小巻が答えていった。
1時間ほどで質問事項は出尽くしたようだった。
「……本日はご説明ありがとうございました。理解が深まりました。マイアミ様と相談したうえで、修正案を回答させていただきます」
「わかりました。いつ頃になりそうでしょうか」
「明日にもう一度会議をさせてください」
こうして、1回目の交渉が完了した。
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