第147話 契約交渉の会議アレンジ

 次の日の朝、真奈美は昨晩完成したタームシートを大津証券に送り込んだ。

 Web会議で説明する旨も伝えてところ、さっそく午後にでも会議がしたいとの要請が返ってきた。


 真奈美は、事業本部の佐々木企画部長に連絡を入れた。


「午後に、宮津精密のFAに対して出資関連の契約説明をするんですが、事業本部からも参加していただけますか?」


 出資の責任者は事業本部である以上、出資契約交渉には参加してもらうべきである。しかし……


(事業本部は業務提携契約の協議に入っているから、『そんなん本社でやっといてくれ』って怒られそう……)


 真奈美は恐る恐る佐々木の返事を待った。


 すると、佐々木は意外にも快諾した。


「わかりました。じゃあ接続情報をメールしてください」


 どう説得しようかと肩に入っていた力が一気に抜けて、自分から質問をしてしまった。


「あ、あの、でも、業務提携契約の方もあって大変では?」

「ん?ああ、あっちは事業部に任せた。今、事業部長自らが陣頭指揮を執って宮津精密さんと協議し始めている。事業関係は事業部に任せておけば大丈夫だ」


 事業本部長の下には企画部のような間接部門だけでなく、実際の事業を推進している複数の事業部が連なっており、それぞれ事業部長達が統括している。

 つまり、事業部長は片岡本部長ほどではないにせよ、その次に偉い人たちと言って過言はない。


(事業部長自ら?なんとまあ、心強くありがたい。それだけ、片岡事業本部長が本気だということね)


 こうして契約交渉体制も整い、真奈美はついに契約交渉の第一歩に足を踏み入れることとなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る