第143話 表明保証

「表明保証は、どこまで強気で行くか悩んでるのよ。どう思う?」


 めずらしく、小巻が悩んで真奈美に意見を聞いてきた。


(お!ここで私がかっこよく……)


 答えようと思ったが、残念ながらそうはいかなかったようだ。


「……えっとね、表明保証って、なんとなく理解できているような、でも理解があやふやなのよね」


 真奈美はやんわりと説明を求めた。

 すると、小巻は(珍しく)優しく簡単に説明をしてくれた。


 表明保証とは、売り手が「財務諸表は間違いはない」とか「コンプライアンス遵守している」とか、様々な事項について表明し保証すること。

 表明内容が後日間違いだった判明としたら、表明保証違反となり、補償(お金を払う)する義務が発生すること。


「表明保証はRepresentation and Warranty、略してレプワラ。補償はIndemnification。インデムっていうのよ。こんがらがらないようにね」


 小巻はくぎを刺した。


(やっぱり、ここでも英語略語が出てくるのね)


 真奈美は苦笑しながら答えた。


「わかりやすい!ありがとう。だからこんなにたくさんの表明保証事項が列挙されているのね」


 表明保証だけで、何ページにもわたっている。


「本格買収ならこれの10倍くらいは出てくるけど。今回は10%だからね」

「……どこらへんが揉めそうなの?」

「そうね。やっぱり、訴訟の恐れがないこと、偶発債務がないこと、他社の知財を侵害していないこと、あたりかな」

「あら……でも、それって、DDのときにありませんって回答されているところでしょ?だったら表明保証も受けてくれるんじゃないの?」


 真奈美はこんがらがって眉をひそめた。


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