第89話 嵐の前の……Part.6-2
やがて運ばれてくる食事は、かしこまり過ぎず、お箸で食べるのがふさわしいと思わせるカジュアルなイタリアン。
(カジュアルだけど……なんておいしいんだろう!)
「お料理はいかがですか?はい、ありがとうございます!!あ、ワインお注ぎしますね」
若い店員の気が利いていて、山田がボトルで頼んだワインをどんどんグラスに注いでくれるので、手酌する暇もない。
「山田チーフ、良いお店をご存じなんですね。お店の皆さんもとても気が利くので居心地も良いですね。よく来るんですか?」
それを聞いて、山田も笑顔がこぼれる。
「そうか。雰囲気も落ち着いているし、ここは夜も遅くまでやっているからね。女の子一人でも安心して入れるから、気に入ったのならまた来たらいいよ」
そうして素敵な雰囲気と料理とお酒の力を借りて、二人の会話は……やはり仕事の会話だった。
「片岡本部長が宿題をすんなりと受け入れてくれて助かりました」
「そうだね。片岡本部長は、今日のことがあろうがなかろうが、いずれにしても最後は事業本部がシナジー具現化を説明しなければいけないことを理解していたんだと思うよ」
「そうなんですか?」
「うん、M&Aはシナジーのために実行する場合、最終的には事業を担う責任者にきちんと妥当性を説明する義務が課せられるんだ」
「では、MA推進部にいる限り、事業本部に最後の責任をお願いせざるを得ないんですね」
「うん。逆にいえば、事業から望まれる仕事をしっかりしていくことが大事なんだ。M&Aを実現させるのはぼくたち、そのあとしっかりと成果を出すのが事業本部。一蓮托生だよね」
(一蓮托生……そっか、これなんだ)
真奈美は、その言葉を聞いて、ものすごく気持ちが固まった。
経営管理では実現できなかったこと。事業推進と管理の立場。
これに対し、一蓮托生で新しいことを成し遂げる。
(やっぱり、MA推進部に来て、よかったな……)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます