第87話 ついに意向表明書提出

 片岡とのテレビ会議を終えると、山田は中野に意向表明書の社印を取るよう指示した。

 中野の手には、すでに意向表明書と社印申請書がクリアファイルにまとめられていて、さっそくオフィスを走って出ていった。相変わらず、手際が良い。


「ついに意向表明提出だね。大津証券も今日の結果を待っているから、さっそく会議で伝えようか。段取りしてくれる?」

「はい。わかりました」


――まもなく中野が捺印版の意向表明をpdfにして送ってきた。それを大津証券にメールで送付し電話会議のアポ入れし、すぐに電話会議が始めた。


「先日面談の機会をいただきましたので、おかげさまで弊社内でもスムーズに議論が進みました」


 山田は冒頭のあいさつを終えると、早々に真奈美に意向表明書の説明を促した。


(ここまでにの道のりは長かったけど、ついに正式に意向表明を提示できる)


 真奈美は感無量になりながら説明を進めた。


 説明が終わると、山田が補足のコメントを入れた。


「マイアミ(宮津精密のコードネーム)様のご意向である10%10億円というご要望にそのまま応える形での意向表明を出させていただきます。ただし――」


 山田は一呼吸おいて続けた。


「これは弊社として協業シナジーを織り込んだ提案となります。この後のDDや協議において、シナジーの具現化について最大限のご協力をいただきたい。これが意向表明の前提となります」


 これを聞いた大津証券のFAの推進チーム谷口ディレクターは答えた。


「最終確認は必要ですが、マイアミの要求を最大限考慮いただきましたので問題なく受領されると思います。GW明けに次のプロセスの案内をさせていただきます。ありがとうございました」


 大津証券も意向表明の内容には満足したようで、会議はなごやかに終了となった。


 こうして、意向表明の提出というM&A前半戦の最大ミッションは無事に完了した。

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