第46話 信頼関係
夕方になってもどうしても揃わないパーツがあった。
事業本部との打ち合わせのときに依頼した、宮津精密既存事業との取り組み提案だ。
メールで催促はしているものの……
(やはり簡単には出てこないのかしら)
真奈美は意を決して企画部長の佐々木に電話をかけた。
「佐々木部長、例の資料出そうでしょうか?」
「やってる、やってるんだけどさ。先日の経営会議資料の宿題対応が立て込んでるんだよ」
「ああ、たしかにそういう時期ですよね……」
毎月15日の経営会議。3日前に行われたはず。
となれば、そこで指摘された宿題対応に忙しい時期であろう。
(うっ、それを言われると……)
真奈美はつい先日まで経営会議のたびに資料催促し、宿題が出ては対応を催促していた張本人である。
そんなのほっといてこっちを優先して、とは言えなくて困ってしまった。
「まあ、なんとか今晩中にはネタを提案するから。ただし片岡本部長確認前だから、内容が変更になるかもしれんけど」
「ありがとうございます。わかりました。それでも一旦ネタをいただいた方が嬉しいです」
「わかった。資料に落とし込むのはそっちでお願いね」
「了解です。はい、資料化は私がやらせていただきます」
本部長確認前のネタを引き出すことは、実は結構大変な作業だ。
企画部長からすると後から本部長に怒られるリスクもある。
とはいえ、持ちつ持たれつの信頼関係あってこそ。
(ふぅ、これで明日の午後、なんとか首の皮はつながるかしら)
まだまだ安心できない真奈美であった。
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