第44話 人脈

 いざ資料準備にかかると、真奈美の集中力は一気に増していった。


(過去の資料は本当にとてもきれいで見やすくて、勉強になるわ)


(とはいえ、特に会社・事業に関する内容は薄いものが多いわね。HP情報ベースで作っているからかな。私なら……)


 そしておもむろに電話をかけ始めた。


「あ、○○さんですか。酒井です。はい、MA推進部に異動しまして……」


 まずはIR部の知り合いに電話を掛けた。

 直近のIR向け会社紹介資料を取り寄せるためだ。HP情報以上に様々な情報が載っていて、公開情報の中では一番新しい内容になっているからだ。


「もしもし、○○さん?お久しぶり。酒井です。うん、うん、そうなのよ……」


 次は経営企画部。

(中期計画の詳細資料もお願いしたいのよね。秘密情報はもちろん開示できないけど、会社の将来性を語っている資料としては中期計画がバイブルだもんね)


 そして秘書室。

(最近、社長や幹部が取引先と面談する際にプレゼンした資料があれば、それも参考になるかもしれないわね)


 その調子で、次は古巣、経営管理部。

(まだ異動して間もないけど、異動後に一度経営会議が開催されているはず。その内容も念のためチェックしておきたいわね)


 こうして、真奈美はかつての人脈をフル活用し、必要な生情報をかき集めた。


 ――ただ、電話かけるたびに、『MA推進部に異動したこと、その理由やMA推進部ってどんな感じか』と、質問攻めにあうことから、この日の午前中はほぼ電話で会話しまくるだけで終わってしまったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る