第42話 嵐の前の……Part.3
会議が終わると、佐々木企画部長が工場訪問が初めての山田のために工場案内を用意してくれた。
正門に一番近い管理棟、厚生棟、開発棟、生産棟……
真奈美は何度か見学したことがあったが、初めてだった山田にとってはとても新鮮な経験だったようで喜んでいた。
そうこうしているうちに、すっかり暗い時間になってしまったので、二人は本社には戻らずに業務終了とすることとした。
「せっかくだから、食事でもしてから帰ろうか」
「あ、それならば私良いお店知ってますよ」
以前に事業本部の人から聞いたことがある、駅前繁華街の一角にある落ち着いた居酒屋に案内した。
ふたりはビールで乾杯し、食事を楽しんだ。
「まあ、今日は良かったね。片岡本部長も乗り気になってくれているから」
「はい。良い提案を出せるといいですね」
「うん。明日からは早速提案資料をまとめくれるかな。一度大まかに作ってもらえたら、それをもとに打ち合わせしよう」
「はい」
「……あ、仕事の話ばっかりになっちゃったな。ごめんごめん」
ふたりは笑いあった。
「ところで、うちの部署ってみなさん中途採用の方ばかりなんですよね」
真奈美は話題を変え質問した。
この2週間、ほとんど山田とのマンツーマンチームのため、実は部署のメンバーとの面識はまだ深まっていなかったのだ。
「そうなんだ。部長がコンサル出身で、専門知識がある即戦力を集める主義なんだ。おかげで、なかなか新入社員を育てていこうという感じにはならない」
「そうなんですか。たしかに何も知らない新人がこの部署に配属されたら、1週間と持たないかもしれませんけど……」
「ははは、手厳しい」
山田は苦笑いした。
「おかげで、万年人不足で困っているよ。社内の他の部門から移動してもらう話もなかなか成立しないんだ。今回は、酒井さんが来てくれたのは本当にラッキーだったよ」
「いえ、とんでもない。拾っていただいて……でも、お役に立てそうならうれしいです」
「期待しているよ」
「ありがとうございます」
――結局、仕事の話ばかりで盛り上がった二人だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます