第12話 決着

 真奈美は、MA推進部のオフィスに戻ると、法務部とのレビュー結果を山田に伝えた。


「了解。お疲れ様。交渉の論点が期間だけであれば、そんなに揉めることもなさそうだね」

「はい」

「うん、ありがとう。ぼくも1~2年で決着でよいと思うよ。

 じゃ、投資銀行にメールで回答して調整を進めてくれる?」

「はい、わかりました」


 真奈美は元気に自分の席に戻って、メールを送る準備を始めた。

 単位メールを送るだけだが、ドキドキする。

 経営管理のころは、毎日社内向けには何十通もメールを出していたが、社外にメールを出すことなどほとんどなかった。


(このメールが、社外交渉の第一歩なんだ)


 やがて、小巻から修正版のファイルも届き、真奈美はメールの送信ボタンをクリックした。


「えいっ!!」


 その声が意外と大きかったのか、オフィスのみんなの注目をあびてしまい、赤面し小さくなった。



 翌日、投資銀行から回答が返ってきた。

 ざっと修正履歴を確認すると、やはり期間のところは再修正されている。

 真奈美は小巻にチャットを打った。


『やっぱり、2年で返ってきた。小巻の読みすごいね、当たったよ』

『でしょー!契約交渉なんてだいたいこんなもんよ』

『八百屋の値引き交渉と一緒ってことね』

『そうそう!遠慮せずに1年くらいで返しちゃっていいと思うよ』

『ありがとう、じゃあ、1年で決着できたらお礼に一杯おごる』

『おお!いいね!がんばって』


 こうして、真奈美と投資銀行とのやり取りの結果、+1年で決着した。

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