第2章 NDA

第7話 法務部と初ミーティング

 真奈美が席に戻ると、さっそく法務部からメールが入ってきた。


 ――明日以降で、都合がよいときに背景説明と内容協議がしたいとの内容だ。


 真奈美は早速、明日の早い時間を指定しミーティングの約束を交わした。


「よ~し、明日までに契約書ドラフトを全部読んでおこう」



 ――そして次の日。真奈美は法務部の打ち合わせ室に赴いた。


「初めまして、MA推進部の酒井真奈美です」

「法務部の高橋小巻です」


 そこにいたのは、まさにキャリアウーマンといわんばかりのきりっとした女性だった。


(鋭い目つき、すらっとしつつ豊満な胸を持つ魅力的なプロポーション、背も高い……どれか一つだけでも欲しい!)


 あいさつの後、二人はしばらく雑談に興じた。


 真奈美が経営管理部だったこと、つい先日MA推進部に異動してきたこと。

 小巻も、最近弁護士事務所から当社に出向してきた弁護士であること。

 年齢もほとんど同じであること。

 自然とふたりは打ち解けて、真奈美・小巻と呼び合うことになった。


――後日、真奈美はこの日をしみじみと思い返すことになる。

  この出会いは、それほどの重要な出来事であった。


「じゃあ、お互いルーキーということで、どうぞよろしく」

「こちらこそ。出向してきて、まだ会社の仕組みやら誰が誰だかわからないから、いろいろ教えてね」

「社内方面は任せて。こう見えても会社生活長いので……」


 ふふふと笑いあうと、漸く本題に入った。


「先日、山田チーフ宛に投資銀行からこのノンネームシートが来て……」


 真奈美はプロジェクターに資料を写した。


「この会社は新しい加工技術の開発のために資金調達を計画していて、うちにも出資しないかと声がかかったみたい。事業本部の企画部が一度真剣に検討したいといってるみたいだから、NDAを結んでより詳しい情報をもらおうと思って……」


一通り説明を終えると、小巻の質問が始まった。


「なるほど。じゃあ、基本的には情報をもらう方よね」

「そうそう。でも、それによって何か違ってくるの?」


 小巻の口元がニッとほほ笑んだ。


(鍛えがいがありそうね)

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