第6話 初仕事の指示をゲット

「そういうわけで、事業本部も興味を示しているし、まじめに会社の情報を取ろうかと思うんだ」


 そして、山田は画面に契約書の原稿(ドラフト)が映した。


「NDAのドラフトも来ているんだけど、今までNDAは見たことある?」


「決裁書の合議チェックのときに眺めたことはありますが……

 細かく見たことはないです」


「オッケー。じゃ、簡単に説明するね」


 山田はドラフトをさっと流しながら説明を続けた。

 基本的には秘密情報とは何かを定義して、第三者に開示しないことを約束する契約で、ビジネスで用いるNDAと大きくは変わらない。ただしM&A情報なので売り手も警戒しているため、秘密保持期間や役職員勧誘禁止なんかを入れてくることもあるが……


「……まあ今回はそんな面倒くさい条項は含まれていないようだね」


(山田チーフのレビュー、早すぎ!ほとんどよくわからなかったけど……)

 真奈美は苦笑いしたが、山田は気づきもせずに続けた。


「法務部長には一言いれておいたから、たぶん誰か担当をつけてくれると思うよ。ということで、後のフォローよろしく頼むね」


(まあ、法務の担当に詳しく聞くことにしよう)


「はい!がんばります!!」


 真奈美は元気よく答えた。


 ついに、お勉強ではない、実際のM&Aにつながる初業務だ。

 胸の鼓動が早まっていくのが実感できた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る