第17話 忘れてたことにしよう
レザス商会を後にした僕らは真っ直ぐに冒険者ギルドに向かう。今回の儲けを口座に入れておくためだ。
「今日はベクルトさんのところは無理そうだね」
「今から行ってももったいないもんね」
ベクルトさんの剣術道場は1日銀貨3枚だ。何時から参加してもそれは同じなので、できれば朝から参加したい。
「日本円にはちょっと余裕があるから明日はベクルトさんのところに行ってもいいんだけど……」
「だけど?」
「高レベルの冒険者に依頼してポータルを開けられるところまで開けちゃうって考えもあるんだよね」
「パワーレベリングの下準備かぁ。でも仲間が揃ってからでもいいんじゃない?」
「それもそうなんだよなあ」
「ヴィーシャちゃんが仲間になったら、また1層からポータル開けなきゃいけないんだし」
「メルはヴィーシャさんを気に入ってるんだね」
「うん! なんでかは自分でも分かんないんだけど」
ボッコボコにされたのになあ。普通なら苦手意識が植え付けられそうなもんだけど。2人で体術の練習をしていたときになにかあったのかも知れない。いや、そこでヴィーシャさんに質問して逆ギレされたことも知ってるんだけど。
「それなら明日はベクルトさんのところに行こうか。あと聖女ギルドに寄付も行きたいんだっけ」
「そうそう。いくらくらい寄付したらいいんだろうなあ。持ってるのが大金過ぎて感覚が分からないよ」
「うーん、今後も寄付を続けるなら金貨10枚くらいが限度じゃない?」
「でもお世話になった分だけでも返したいんだよね。多分私を育てるのにも金貨10枚では足りなかったはずだし」
「何年くらいお世話になったの?」
「4年くらいだね」
「それじゃ金貨40枚くらいかなあ」
多分それだけあれば孤児を1人、4年育てることができるだろう。いや、家賃がかからないならもっと少ないか。でも孤児院の固定資産税とかあるのかな? その辺のアーリアの税制について僕は詳しくない。
「回復魔法使いの人も紹介してもらわなきゃだし、ここは金貨50枚出しておこうかな」
「まあ、メルのお金だからね。僕は金貨10枚くらいにしておこうかな」
金貨10枚だって大金だ。今後ポータルの開通や、パワーレベリングで冒険者にお金を払わなければならないことを考えると、資金に余裕はあればあるほど良い。
「ひーくんも寄付するの?」
「そりゃまあ、メルが寄付するのに後ろで黙って見てるだけってわけにもいかないし」
そうすると僕も50枚出したほうがいいのかな? より良い回復魔法使いを紹介してもらうためだと思えばそんなに高くない気もする。いや、僕も相当金銭感覚ぶっ壊れてるぞ。僕の感覚からすると金貨50枚は650万円相当だ。
そこで僕は気付く。
「そう言えば商売に税金ってかからないのかな?」
「えっと、商人だと町に入るときに商材から徴税され……あっ!」
メルも気付いたようだ。僕はキャラクターデータコンバートで直接アーリアの町の中に商材を持ち込んでいる。意図していないこととは言え、実質脱税をしていたわけだ。
「あわわ、どうしよう。ひーくん」
「ここまでは冒険者として町に出入りしてたから気付かなかったことにするにしても、次からは町の外から持ち込んでいる振りだけでもしないとマズいな。あとこれまでの分も払わないといけないし、追徴課税とかがあるかも」
「人頭税の延滞税みたいなの?」
「そんな感じ。一旦レザス商会に戻ってレザスさんに相談してみよう」
僕らは慌てて来た道を戻るのだった。
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