第04話 異世界の裏路地には気を付けろ
異世界モノあるある。
やたらリアルな銅像が作られていることがある。
その銅像は凛とした表情をしていて、覚悟を決めたような顔は男ならば憧れ、女ならば惚れるような面貌で。
明確な意思を持つ双眸は、銅像だというのに圧力を感じさせるもので、青年さが残る顔立ちの中でも際立って見えた。
「……イケメン過ぎないか? 目……鼻……口。いや、オレと同じ部位のはずだよな?」
ラノベで言うところの『騎士長』だろうか。
女の子が思い描く『カッコイイ男』の要素をふんだんに押し込んで作ったような見た目だ。
シンプルなデザインの上に羽織られているマントは途中でチラと見えたが、鷹の翼と蘭花が筆致な模様で描かれている。
それでも鼻につかない理由は、金臭さが感じられないからだろうか……。
「こんなイケメンがこの世にいるのか……? さすが、異世界。ブサイクな奴は悪役だからなあ」
『いや、そうじゃなくて……! その下の名前とか……贈った人の名前とかのとこなんて書いてる?』
銅像の周りには人が近づけないように簡易的なロープが張られていたが、映し出している画面の上で人差し指と親指を動かして拡大。
『騎士王――ヴァルフリート……フェブルウス王国』
『ねぎねぎ』は吹けば飛ぶような声で読み上げると、何か気が付いたように黙りこくった。
同じチャンネルの大人たちが呼びかける中、ガタガタと席を立つ音が聞こえて――……足音が近づいてきた。
『ちょっと、調べてくるっ!』
というと『ねぎねぎ』のアイコンのマイクアイコンに射線が着いた。
ミュートにしてどこかに行ったらしい。
「……えっ、ここからどうしたらいいの?」
ミタは取り残されたように銅像の前で、立ち尽くしていた。
そこからはチャンネルに残っていた者達と連絡を取り合って。
写真を何枚か送って。
人気のないところで待つことにした。
さっきみたいに『一つ目の男』に襲われても困るから……と。
盛り上がっている街路を背中に、じめじめしている路地裏に入っていく。
「昔の映画でこんな場所があったなぁ。決まった場所を叩くと、横丁への道が開くとかなんとかって」
『ねぎねぎ』が「待ってて」と言ったのだから、待つしかない。特別、何か用事がある訳でもないし……現状は。
「まっ、めちゃめちゃ可愛い少女とばったりあったりするかもしれないし? それかもしくは、仲間……とか? それかステータスとか判明してスカウトされたり!?」
今まで順当に異世界あるあるが起こったのだ。
これ以降も「あるある」が続くのだろう。
そうに決まっている。
「いよいよ、マイライフセカンドストーリーカモンベイベー。オレの第二の人生が始まったらしい」
指で適当な場所を叩いて、にやにやと笑って妄想していたミタだったが――凍り付くように表情が固まった。
音だ。
後ろから足音が聞こえた。
バッと振り返ると、そこには今日一番で怖い見た目をしている奴が立っていた。
可愛らしい少女なんかじゃない。
仲間なんかでもない。
一つ目――そして、ぐにゃりと歪んだ口元。
青白い肌。手に持っているのは大きな棍棒。
そんな化け物はミタを見つけて、笑った。
「みぃつけた」
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