第948話◆これはキッチンの試運転
三時のおやつの後は再びキッチンに篭もって、キッチン小道具を新しい収納場所に移動させつつひたすら料理をしていた。
そして気付けば、アミュグダレーさんとタルバやペッホ族君達が帰る時間。
だって楽しかったんだもーん。
明日は俺達は冒険者ギルドの仕事で家を空ける予定で、カメ君とサラマ君もお出かけ予定で、焦げ茶ちゃんと苔玉ちゃんは魔導具作りでタルバの工房、ラトは明日こそ森の見回りに行くんじゃないのかな?
なので留守番は三姉妹達にお願いする予定だったのだが……。
え? じゃあタルバとアミュグダレーさんも明日も作業する? その方が焦げ茶ちゃんと苔玉ちゃんもうちにいることになるから安心だろうって?
そうだなぁ……うちの周りには時々変態が出るから、可愛い幼女三人でお留守番は不安だしお言葉に甘えようかなぁ。
作業終了の時間までには戻ってくるのでよろしくお願いしちゃお。
なんならアミュグダレーさんはうちに泊まっていってもいいんだけど……預けている弓や装飾品のメンテナンスが終わるまでドワーフのクーモの家に滞在してんだっけ?
空いている部屋はあるけれど物置になっているのでカリュオンと同じ部屋になるけれど……いてっ! カリュオンめ、なんで後ろから俺のかかとを足でこっそりコツッとした!?
あ、今日はクーモの家に戻ることになっていて夕食も用意されているから戻る? じゃあ、明日から?
それなら物置になっている部屋を片付ける時間も……いてっ! カリュオン、さっきより強くコツッとしたな!? お前さ、親父さんが絡むと妙にガキっぽくなるな!?
それはそれでカリュオンの素を見ているようでちょっと嬉し……だからみんなから見えない角度でコツコツするな!
と、とりあえず今日はお土産用のココナッツミルクのプリンがよく冷えているので、みんなに持って帰ってもらおう。
クーモのとこに滞在しているといっていたからクーモ達の分も作っておいた俺は確実にデキる男。
じゃあまた明日、よろしくお願いします!!
今日は夕食の後ちょこっとだけ箱庭に行く予定なので夕食はあまり食べすぎない方がいいのだが、新しくなったキッチンが嬉しくてつい作りすぎてしまった。
えへへー、俺のリクエストが詰め込まれまくった理想のキッチンだからすごく嬉しくて楽しくて、ついつい料理が滾りまくちゃったんだよぉ。
というわけで超ご機嫌な俺が超張り切って作ったメニューだ。
いやー、これは新しいキッチンの作動チェックも兼ねていたからな、色々試して不具合があればペッホ族君に伝えて直してもらわないといけないからなー。
そういうのってできるだけ早い方がいいじゃん? ね?
というわけで、おやつタイムが終わったらキッチンに篭もって新しくなった調理器具を片っ端から触ってみた。
とりあえずオーブン。キッチンにあるオーブンは二つ。
主にパンを焼く時に使う大型のオーブンと、料理やお菓子作りに使う小型のオーブンだ。
しかしすっかり同居人が増えたので、最近ではパン以外も大きい方のオーブンを使うことが増えて来た。
最初に少し空焼きをした後、大きい方のオーブンでパンを焼いてみることにして、小さい方のオーブンでは先日いったダンジョンで仕留めたブラックドラゴンのモモ肉を使ったローストドラゴンを作ることにした。
高温で焼くだけではなく、低温でじっくり焼けるかちゃんと確認しないといけないからね。
それから四つあるコンロの作動確認もしないといけないので、じっくりと煮込み料理。
ゴロッと角切りにしたブラックドラゴンのスネ肉を飴色に炒めた玉ねぎや人参、キノコと一緒にトマトと赤ワインで煮込んでみた。
ゼラチン質を含み煮込むとトロッと蕩けるような食感になるのは竜も牛も同じ。じっくりコトコト煮込んだ蕩ける竜肉を食らえーー!!
このトロトロ竜肉のトマトと赤ワイン煮込み、そのまま食べてもいいのだが、ごはんにかけると前世の記憶にあるハヤシライスっぽくしてもいいし、パスタにかけてもパンを浸しながら食べてもいいので米とパスタも用意しておこう。
おっとローストドラゴンもハヤシライスも肉々しいので、ハヤシライスには夏野菜を素揚げしてトッピングできるようにしておくか。
これは揚げ物をした後のコンロの掃除がどれくらいの手間になるかの検証なのだー。
よしよし、コンロの表面には汚れ防止の付与がしてあるので油が飛び散っても布巾で拭き取れば綺麗になるな。
調理台の隅っこにある浄化ボタンを押すと浄化魔法が発動して調理台全体を綺麗にしてくれるみたいだが、これは動力に聖属性の魔石を使っているからあまり使うと魔石の消耗が激しくなるし、魔法が発動する時の魔力は食品の品質にも影響するので、汚れが酷くなった時に調理台の上から食品を撤去してからだな。
前に比べて掃除は楽になったが、日頃からこまめに掃除をすることを怠らないようにしよう。
そんなに汚れにくい加工がしてあっても汚れた場所を放置しておくとやはり汚くなっていって、後で纏めてとなると思ったより労力がかかることになるのだ。
せっかく綺麗になったのだから、綺麗な状態を維持できるように努めよう。
赤ワイン煮を作っている横では、ブラックドラゴンの尾の肉を骨や玉ねぎやセロリ人参なんかと一緒に煮込んでいる。
先端に近い部分なので多少は細いが、あのバカでかいブラックドラゴンレベルで細いというだけでそのまま輪切りは無理なのでゴロッと角切り。
こちらは今日の分ではなく、数日分のスープを纏めて作っているのでバカでかい寸胴での調理。
灰汁を取りながらじっくり煮込んで、煮込み終わったらスープを一度ザルで漉して万能ドラゴンスープになる予定。
そう、これは大きな鍋を使った時の検証なのだー。
ここらの作業をしている時にアミュグダレーさんとタルバそしてペッホ族君達が帰る時間になったので見送りにいってカリュオンにコツコツされまくっていたのだが、その最中も色々な料理の香りが家中に広がっていて非常に気になっていたので換気の面も改良してもらわないとなぁ。
こんなに食べもののにおいをプンプンさせてしまうと森から魔物やら妖精やらが集まってきてしまいそうだ。
アミュグダレーさん達が帰った後は夕飯に向けてラストスパート。
煮込みだけじゃなくて、新しいコンロの火加減に慣れるためにフライパンを使った料理も試しておかないとなぁ!?
そしてここまで来たらやっぱブラックドラゴンの肉だよなぁ。
よぉし、じゃあ繊細な焼き加減を求められる部位の肉を焼いちゃうかー。
その部位とは――前脚の間にある部分、肩バラとか前バラとか呼ばれる部分。
解体のやり方によってはバラ肉と一緒にされてしまう部位だが、俺は竜種のこの部位の美味さを知っているからちゃんと分けて切り出しておいたぞ!
前脚が退化してしまっている二足歩行系の亜竜種はそうでもないのだが、強靭な前脚を持つ四足歩行系の竜種及び亜竜や前脚が翼になっているタイプの亜竜のこの部分の肉は美味い。
赤身と脂身は半々くらいで見た目はバラ肉に近いのだが、前脚の動きが激しい竜種はこの部位の肉はよく引き締まっており、心地の良い歯ごたえとトロッとした脂身を同時に味わうことができるのだ。
前脚が翼になっているワイバーンやドレイク系もこの部位の肉はかなり美味いのだが、やはり本家純正の竜種であるブラックドラゴンには敵わないだろう。
というわけでこの前バラ部分を薄くスライスして、フライパンでサッと焼く。炭火で炙るのも捨てがたいのだが、昼が炭火焼き鳥だったので今回はフライパンでジュワッと。
醤油ベースのタレで食べもいいし、レモンを搾ってもいい。ブラックドラゴンなら何も付けずにそのまま肉の味を味わってもいいかもしれない。
この後、火を使わないサラダや酒のつまみ風の料理も作ったし、食卓に並べきれないほどの量になってしまった。
はーーーーーー、新しいキッチンマジで楽しい! 料理楽しい!!
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