第936話◆これが収納スキルの力だ

 収納スキルが箱庭で使えるということは、収納スキルで持ち込んだものを自動売買ページに突っ込んでキノーを増やして買い物し放題なのでは!?!?


 っと、その前に収納スキル、空間魔法、マジックバッグの解禁のお礼をしておきたいな。

 ありがとう、キノコ君。


 しおりが置いてある靴箱の上にあるポストに手紙を入れたら、キノコ君に届くんだっけ?

 レターセットもペンもポストの横に用意されているから、お礼のお手紙を送っておこう。

 お礼の気持ちを込めて抹茶ワラビィ餅も一緒に。

 収納スキルさえあれば、食品用の包装紙だってヒョイッと出てくるのだ。


 収納スキル解禁はすごく嬉しいのでワラビィ餅だけじゃ、俺の喜びとお礼の気持ちが伝わらないな。

 ポストに入りそうにない大きさのものもポストの口に近付ければシューッと吸い込まれる仕様みたいだから、お礼の品を色々押し込んでおこう。


 肉に魚に俺の家周辺では採れない薬草や果物。

 たくさん送りすぎると食べきれないかもしれない不安があるけれど、妖精なら俺の収納スキル以上の収納スキルを持っていてもおかしくない。


 って、あれ? 入らなくなっちゃった……一日で送れる限界とかあるのかな?

 ま、お礼はしっかりできたと思うし、奥さんと一緒に召し上がってください! ちくしょう、奥さん羨ましいな! 末永く、お幸せに!!



 キノコ君への贈り物はこの程度にして、次は自動売買ページに色々売りつけるかー、ってあれ?


『空間系魔法及びスキルの解放に伴い、自動買い取りに一日あたり2000キノーの上限を設けさせていただきますのでご了承ください。物品の売却はマナーと常識を守って正しくご利用ください。正しく!!』


 あ、買い取りに上限を設定されていた。

 まぁそうだよね。

 キノコ君しかいない世界なのでキノーはキノコ君専用通貨かもしれないが、無限売りつけた物資はどうなるんだっていう話だよね。


 収納スキルが解禁されても自動売買機能は常識とマナーを守って正しい使い方をしよう!



 ………………………………チッ。



 あ、でも下に追加で何か書いてあるな。


『箱庭内の環境が安定し開発が進み発展すれば、買い取りの上限値は段階的に引き上げさせていただきますので、頑張って箱庭を平和にしてください!! 何卒!!!』


 なるほど、やはり箱庭の平和を取り戻すことが最優先だな。

 ま、今日のところは買い取り上限まで魔物の骨でも買い取ってもらうかー。





 無事に魔物の骨を本日のキノー上限まで買い取ってもらった後は夜の箱庭探索。

 空間魔法が解禁されてアベルの転移魔法も使えるようになったので、今日はその転移場所のマーキングにいくことになった。


 アベルの転移魔法はどこでもいけるわけではなく、アベルが一度訪れて目印を付けた場所。しかもそこをアベルが記憶していないと発動しないし、目印を消されても発動しない。

 なので時間で過ぎるとマーキングが消えてしまうダンジョンではマーキングが消えれば転移できなくなるし、転移魔法対策がしてありマーキングができない場所には飛べないし、もちろん空間魔法自体が制限される場所でも使えない。


 そしてマーキングしている場所ならどこでもピュンピュン飛べるような印象になるのは、アベルのとんでも魔力だけではなく、とんでも記憶力のおかげでもあるのだ。

 転移魔法を使えるだけでも普通じゃないのに、それを気軽に発動できる魔力とマーキング先を全て記憶できるほどの記憶力を持つアベルはやはり超チート男なのだ。



「やった! 収納系だけじゃなくて転移系の空間魔法も使えるようになってるよ! 瞬間移動と引き寄せ系しか使えなくて不便だったんだよねー、これで一度いったところにいきやすくなるよ。とりあえずこの別荘はもちろんで、ユグユグの樹と堕ちたる神の化身・暗黒邪竜魔王ルシファーの近くにいつでもいけるようにマーキングしておかなきゃ」


 ぐおおおおお……転移魔法解禁に喜ぶのはいいけれど、唐突にユウヤ君の真名を出すのはやめろー!!


 別荘の外に出てピュンピュンと転移魔法を繰り返しているアベル。

 目視範囲内に自分が目標に向かって瞬間敵に移動するワープ、視界に捉えているものを移動させるスナッチは今までも使えていたが、マーキングした場所なら遠距離でも移動することができる転移魔法は収納同様に使えなかった。


 いやー、移動が全部徒歩だったので面倒くさかったんだよね。

 転移魔法最高! 便利! やっぱり持つべきものはチートな親友!!


「それにしても何で急に収納スキルや空間魔法、それからマジックバッグが使えるようになったんだ? というか、今まで使えなかったのは、あのキノコが制限してたってことか……思ったよりすげーキノコなんだな。ま、妖精だし、ここは妖精の箱庭だし、何だってありか。妖精ってマジ、よくわかんねー生きものだからな」


 何故急に今まで使えなかった収納スキルと空間魔法とマジックバッグ、つまり空間に干渉する行動が可能になったのかわからない。

 いや、カリュオンのいう通り使えなかったのはキノコ君が制限していたと考えられる。


 俺達が箱庭に入ることができるようになる前、ジュストと焦げ茶ちゃんが箱庭に引き込まれたことがあった。

 あの時は収納スキルが使えたとジュストがいっていた。それにあの時は焦げ茶ちゃんも箱庭に入ることができていた。

 つまり収納スキルの制限も箱庭への出入りの制限も、キノコ君がその権限の全てもしくは一部を持っている可能性が高いのだ。


 キノコ君って実はすごいキノコだったりする? ま、キノコ君は妖精だしね!

 そしてここはその妖精の箱庭、人間の想像を遥かに超える場所なのだ。

 

「え? ディールークルムさんとケサランパトラトさんで、キノコさんにお願いをした? 僕達が収納スキルや空間魔法を使えないのは不便だと思って? ええ!? そうだったんですか!? 空間魔法や収納スキルやマジックバッグが使えるようになったのは、ガーディアンさん達のおかげみたいですよ! お気遣いありがとうございます!」


 別荘の庭先でアベルが転移魔法で色々試しているといつの間にかケサランパトラト君とディールークルム君もきていて、ジュストの通訳により今回の収納スキルと空間魔法の解禁の理由を知ることとなった。


「なるほど、そういうことか。いきなりでビックリしたけどおかげで箱庭の探索が安全で快適になるよ。キノコ君にお願いしてくれてありがとう。あ、そうそう、昨日のトレント・ワラビィをワラビィ餅にしたのがあるんだ、よかったら貰ってくれ」


 収納スキルが解禁されたと知って一旦収納の中に戻していたけれど、彼らには元からお裾分けするつもりで彼らの分も食品用包装紙に包んで持ってきているんだ。

 これからは収納スキルで外から色々持ってくることができるから、長時間箱庭内で活動しやすくなったし、平和になったらみんなでアウトドアパーティーをしようか。


 そうだなー、そのためにはユウヤをどうにかしないといけないなー。

 あの割れ目はスゴロクが吸い込まれちゃってるから、中がスゴロク化してそうだしなー……もういっそ、収納スキルで土砂をいっぱい持ってきて埋めちゃうか!

 はははは、冗談! そんなの冗談だってばー! 半分くらいしか本気じゃないってばー!

 今、対ユウヤ用のすっごい魔導具を制作中だから期待して待っていてくれ!!


「ケーッ!!」


 あー、チュペまで出てきてしまった。

 チュペの分もちゃんと用意してあるから安心しろ。


「あーあ、収納スキルが使えるようになった途端グランの餌付け行為が本格化しちゃったよ。もうさ、こんなところで食べ物を配ってたら、鈍くさいグランが落っことしてダメにしたらもったいないし、テーブルを出してティータイムにしよ? 夕食のデザートの時に思ったんだ、その抹茶っていうお茶の粉を掛けたワラビィのデザートはほろ苦い甘さだからミルクを入れた紅茶にも合うと思うんだ」

「お? 出発前にもう一回腹ごしらえも悪くないな」

「テーブルの準備、僕も手伝います」


 失礼な奴だな、誰が鈍くさいって? 

 って、アベルとカリュオンも食べる気満々かよ、夕飯のデザートだったのに。

 あーあ、収納魔法が解禁されたアベルが得意げにテーブルセットとティーセット出してきて庭に広げ始めたから、良い子のジュストが手伝い始めちゃった。

 しょうがないなぁ、抹茶味は明日タルバとアミュグダレーさんに差し入れしようと思ってたやつだけ残して全部食べちゃっていいか。

 たまには星空の下でティータイムも悪くないかー、トレント・ワラビィの根っこはまた集めて作ればいいだけだしな。


 というわけで探索前に星を見ながらのロマチックなティータイム!

 アベルはお茶係! 俺はワラビィ餅を並べる係! ついでにチーズケーキとマドレーヌも追加しちゃう!


 見たか、これが収納スキルの力だ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る