第906話 ◆俺の考えた最強の神殺し計画

「この大きさのラグナ・ロックを、でっかい生きものを真っ二つにできるような武器に加工するのは無理も、よって剣の案は全部ボツも。というか武器ならオイラよりドワーフに相談するほうがいいも。同じ理由で防具もダメも、ラグナ・ロック大きさ的に装飾品が限界も。それと属性を塗り替えるだけなら、魔力を吸い込むだけ吸い込んだ後に爆発させればいいも。も、こっちの魔道具がそれ系もね。魔力を吸い込む量と増やして、魔力変換のによる爆発の威力を上げることは簡単もだけど、一回だけの使い捨て爆発物だからテストできないのが不安もよ。それでもいいなら、限界までラグナ・ロックの性能を引き出すもよ?」


「やっぱ、その大きさじゃあかっこいい剣は無理かー。今ある剣を改造する感じでも無理? って、うるせぇぞナナシ! 少し大人しくしてろ! うーんでもお手軽簡単なのは、やっぱ強烈な属性変換爆弾かなー。できるだけ威力マシマシ――」


「いやいやいやいやいや、お手軽簡単に爆発させないで! 爆発させないで普通に変換できるように加工して! 確かにラグナ・ロックは限界まで魔力を吸収すると爆発的に他の属性に魔力を変換するけど、その勢いを制御することもできるよね? ていうかラグナ・ロックの魔力変換の性質を利用して、偏った魔力を整える魔道具だってあるよね? 爆発しない程度に徐々に変換するように制御されてるやつ。え? 爆発させたほうがラグナ・ロックの性能を十分に発揮できるロック? 焦げ茶の君さ、大人しそうに見えて実はすごく適当でしょ!? いたっ! 小石をぶつけても、安易になんでもかんでも爆発させるのはダメ! 爆発はよく考えてから!」


「つまり、よく考えた上での爆発なら問題ないな。それを考えるために今日はタルバのとこにきたんだし、よぉく考えて効率良く爆発させよう」


「なんで! なんで、すでに爆発することになってるの!! よぉく考えてじゃなくてもっとよく考えて!!」


「カメェ……」


「ちょっと、そこのカメ! 自分だけ常識亀のふりしてため息なんかついてんじゃないよ! つめたっ!」



 うぉ~い、他所様の工房で騒ぐな~、暴れるな~。

 モールの工房にはどんな高級品があるかわかんねーから、ふざけていて壊したら大変だぞぉ~。




 光るキノコ妖精達に送ってもらいタルバの工房までやってきた俺達は、ラグナ・ロックをどう加工するかタルバと話し合っていた。

 そして俺が考えたゴッドスレイヤー案達をお披露目したのだが、片っ端からダメ出しをくらっている最中である。


 ゴッドスレイヤーといったらやっぱかっこいい剣かなーって思って、剣の案をたくさん持ってきたけれど全部ボツにされてしまった。

 ですよねー、拳大くらいのラグナ・ロックじゃ武器は無理? もちろん防具系も?  あ、武器とか防具とかはドワーフだよね!!

 じゃあ今あるミスリルロングソードの鍔に、ラグナ・ロックを埋め込んで何かかっこいい付与をして魔法剣みたいに――ってナナシ、うるせぇ! 俺の考えた最強のゴッドスレイヤーを実現するための大事な話をしてるんだから大人しくしていろ!!


 え、爆発? やっぱ、爆発のが簡単? だよねー!!

 爆発する系の魔道具もちゃんと考えてきているよ!

 ラグナ・ロックの能力を活かしまくって、威力マシマシにした属性変換爆弾も浪漫があるよな!!


 と思ったら、爆弾に対して妙にヘイトの高いアベルが騒ぎ始めてしまった。

 お前だって爆弾で爆発させていないだけで、魔法で爆発させてんだろー。

 というか範囲魔法を垂れ流せるお前には、魔法が使えない範囲弱者の俺の気持ちなんてわからないよな。

 よく考えないで爆発させるからダメなのであって、よく考えた上で爆発させればいいのだ。

 ラグナ・ロックの属性変換を制御することが可能なら尚更いいじゃないか。ほら、焦げ茶ちゃんも賛成してるよ。


 なのにアベルが煽るから焦げ茶ちゃんが石ころを発射しているし、ついにカメ君のことも煽るからカメ君からも水鉄砲を撃たれているじゃないか。

 ここは俺の家じゃないんだから、子供みたいにじゃれ合わないで大人しくしとけ。

 まったくぅ、みんなガキっぽいんだからぁ。



「もぉん……ラグナ・ロックの属性変換能力をできるだけ有効に使った武器とか防具とかアイテムを作れと言われても、その用途と目的がわからないと調整が難しいもよ。まさか森で使うつもりじゃないもよね? 森で爆発させるとさすがに主様に怒られると思うからダメもよ」

 しまった、俺の考えた最強のゴッドスレイヤーの案を書いた紙はタルバに見せたが、その用途と目的を全く話していなかった。

「やっべー沌属性の強そうな敵を倒すためかなぁ。森にいるわけじゃなくてダンジョンにいるやつ。なので森では爆発させないし、ラト公認というかラトもどちらかというと爆破推奨派だから、爆発させるなら心置きなく爆発させても問題なし」

 箱庭の説明をするのは面倒くさいのでダンジョンって言っていこう。だいたいダンジョンみたいなものだし。

 ラトもあの割れ目にラグナ・ロックを投げ込むつもりだったみたいだし、爆発系大雑把対応はラト公認。


「問題ある! すごく問題がある!! 確かに強い敵を倒すための威力は必要かもしれないけど、爆発って派手なわりに強力な敵単体にダメージを与えるには向いていないからね? 強力な単体ボス相手に使うなら、一点集中系の攻撃かボス弱体化を狙えるものがよくない? そもそもラグナ・ロックは堕ちたる神の化身・暗黒邪竜魔王ルシファーを倒すためじゃなくて、あのやばい沌の魔力を他の魔力に変換して俺達が活動しやすくするために使うんでしょ」

 ぐおおおおおおお……不意打ちでその名前を口にするのはやめろおおおおおお!!

「堕ちたる神の化身・暗黒邪竜魔王ルシファー……すごく恐ろしそうな名前もね。ラグナ・ロックはそれを倒すためも? 確かに強い相手なら爆発よりも一点集中か弱体化系がいいもね」

 ぬうおおおおおお……アベルがその名を口にしてしまったから、タルバにも知られてしまったぞおおおおおお!!

 しかもその名を聞いてタルバの顔がガチで強ばっている。

 そうだな、恐い名前だからその名は呼ばないようにしような。その名前を口にすると俺の心にもダメージが入るからね。


 あ、そうだった。

 当初はラグナ・ロックを堕ちたる神の化身・暗黒邪竜魔王ルシファーを倒すためじゃなくて、あの沌の魔力をどうにかするために使うつもりだったんだ。

 ラグナ・ロックを手に入れた時は、まだ堕ちたる神の化身・暗黒邪竜魔王ルシファーの存在を知らなかったから。



「グランに任せてるとすぐに爆発させようとするか、意味のわからない浪漫に拘り始めて全く関係ない方向に持ってっちゃうから俺が仕切るよ。堕ちたる神の化身・暗黒邪竜魔王ルシファーは強敵だから、情報を整理して真面目に対策を考えよ。堕ちたる神の化身・暗黒邪竜魔王ルシファーもだけど、その周囲の沌の魔力をどうにかしないとまともに戦えなさそう、とくにグランが。だからラグナ・ロックはこの沌の魔力対策に使うのがいいと思う。それで堕ちたる神の化身・暗黒邪竜魔王ルシファーなんだけど、とりあえず名前を呼べば弱体化するみたいだからそこを狙って攻撃をしよ。性悪剣が特効の可能性はあるけど反動があるから、頼り過ぎないように準備をするよ」


「なるほども。その敵の周辺に沌の魔力が濃いのをなんとかするのが最優先もね。ふむふむ、そうもねぇ……このくらいのサイズのラグナ・ロックを使って魔力変換系魔導具を作るなら、モールの集落からドワーフの集落までの範囲くらいなら魔力を塗り替えられると思うもよ。ただ即変換ではなくてジワジワ変換する感じになるから、設置してから沌の魔力が薄れるまでは少し時間がかかるし、魔導具を作るにも時間がかかるもだから、堕ちたる神の化身・暗黒邪竜魔王ルシファーと戦うまでには少し時間を要することになるけど大丈夫も?」


 あ~、アベルとタルバが真剣な顔で話始めて、俺の割り込む隙がなくなってきて眠くなってきたぞぉ~。

 それから堕ちたる神の化身・暗黒邪竜魔王ルシファーを連呼するのはやめろぉ~。眠くてもそれは聞こえているぞぉ~。


「それとラグナ・ロックの加工は、このモグラみたいな謎の生きものが鉱石に扱いには長けていて手伝ってくれるらしいからコキ使ってあげて。って、重いと思ったら俺の肩の上でよだれを垂らして寝てる!! マントがよだれだらけになってる!! 石のことなら任せろって張り切ってたんじゃないの!? あ、グランまで立ったまま寝てる!! なんで!? どうして!? 爆発と浪漫がなかったらすぐに寝ちゃうの!?」


 え? 話し合いに俺の出番はないみたいだし、昨夜も遅くまで箱庭を探索していたから睡眠時間が短かったし、ああ~なんだか睡魔が~。

 爆発も浪漫もないなら俺の出番はないから、出番がくるまでちょっと横に……はなれなないから、立ったままだからこのまま縦に~。

 ほぉら、ラグナ・ロック加工の主役の焦げ茶ちゃんもスヤァとしているから、賑やかしの俺も少しだけスヤァ。


 どうするか決まったら起こして。スヤァ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る