第894話◆強くてニューゲーム
俺が夕飯を作って、他のみんなが俺達が箱庭にいく準備をする。
箱庭に入れないメンバーが、箱庭に入るメンバーのために持ち物を調えてくれる。
いくのは俺達四人だけど、みんなの力で箱庭の平和を取り戻すみたいで楽しくなってくる。
役割分担万歳。
ま、箱庭を混沌とさせたのは俺達なんだけどな。
箱庭いきの準備はみんなに任せ、アベルとカメ君に暑さ対策の魔法までしっかりと掛けてもらって、暑い中でもひんやり涼しい気持ちでキッチンに立つ俺。
こんなにヒエヒエだとつい温かい料理を作りたくなるぜ。
そうだなぁ、夕飯は挽き肉ステーキのトマト煮込みかなぁ。最近は竜肉が多かったからたまには、基本に戻ってブラックバッファローとグレートボアの合い挽き肉だな。
夕食の後は箱庭にいく予定だからしっかり食べておかないといけないので、バハムートのオイル漬けとキノコの冷製パスタも追加で。
バハムートを漬けていた香りのよい植物性油をそのまま使うので、パスタに絡まりまくったバハムートの旨味を存分に味わうことができるぞ。
パスタにといえばやっぱりガーリックトーストだし、野菜スープも欲しくなるし、夏野菜のサラダも欲しくなる。
後はみんなで摘まめる揚げ物や燻製物系の大皿メニューとデザートだな。
っと、今日は箱庭にいくので俺とアベルとカリュオンは酒はなしだ。
夕飯の献立はすぐに決まったのだが、夕飯の時間までにはまだ少々あるので夕食の準備の前に箱庭に持っていく携帯食料の準備だ。
箱庭内では収納スキルが使えないため、いつものように収納に突っ込んでいるできたて料理のストックを出して食べることはできない。
かさばらず、腐らず、崩れず、すぐ取り出せてすぐ食べられて、尚且つ腹を満たせるもの。ついでに体力や魔力を回復できるものなら更によし。
そんな都合のいい食べ物ってあるのかって思うのだが、あるんだよなぁ……。
クッキー! そう、クッキー!!
かさばらず、すぐには腐らず、強い衝撃で割れたり崩れることはあるが、割れても崩れても食べられる。
片手で摘まめるし、一口サイズなら口の中に放り込むだけ。しかもバターを多めにすればそれなりに腹に溜まる。
そしてポーション素材をクッキーの生地に練り込んでおけはポーションほどではないが効果はあるので、腹を満たしながら美味しく体力や魔力を回復することができる。
ちょっぴり薬っぽい味が混ざっても、クッキーのバターの風味と甘さの中ではアクセントになる。
カメ君と出会った島で手に入れた水属性のドラゴンフロウを乾燥させたものをゴリゴリと挽いて粉にして生地に練り込んだ体力回復効果のあるクッキー。
体力を回復するだけではなく、小さな傷くらいなら治ってしまうはずだ。さすが水属性、癒やし系。
それからシュペルノーヴァの住み処でたくさん採ってきて乾燥させておいたリュウノコシカケを生地に練り込んだ魔力回復効果のあるクッキー、これはココアパウダーで茶色にしておこう。
ヒ……さすがシュペルノーヴァの魔力をタップリ吸収して育ったリュウノコシカケ、思ったより効果が高くなったかも。これは、やっすい魔力回復ポーションより効果があるかもしれない。
まぁ、アベルがバッコンバッコン魔法を使うはずだし、カリュオンも魔力の消耗が激しいから、魔力の回復量は多いに越したことはないな。
クッキーをオーブンに入れた後は手が空くので、クッキー以外にも持ち運びが楽な食糧やポーションを用意しておくか。
まだまだ夕飯までに時間があるし、俺にできる準備をしっかりしておくのだ。
備えあれば憂いなし!!
前世のことわざだが、とてもよいことわざである。
俺がキッチンで俺なりの箱庭へいく準備を終え夕食の支度を完了する頃には、リュネの実で酔っ払って寝てしまったジュストと焦げ茶ちゃんも起きていて、ラグナ・ロックは先ほど話した通り焦げ茶ちゃんに預けてモールに加工してもらうことになり、明日俺も一緒にタルバのとこにいくことになった。
そして夕食後、少し休んだら仮の鍵を使って再び箱庭の中へ――。
「ふははははははは! 見たか、スゴロク! これが
「ちょっとおおおおおお、なんで爆発物を持ってるのおおおおお!? ねぇ!? どこ!? それはどこから出てきたのおおおお!? グランが変な爆発物を作らないように、みんなが空気を読んでくれたのに!! どうして!? ねぇ、どうして!? どうして、爆発物がナチュラルにポケットから出てくるのおおおおおおお!!」
「ははは、単体では爆発炎上しないが混ぜると爆発炎上をするものを、混ざらないように持ち歩けばいいんだよ!! これはとある金属の粉を詰めた瓶、この瓶の外に雑に水の魔石を貼り付けてポーンと投げると瓶が割れて中身の金属粉が飛び散りながら水の魔石が放つ水の魔力と混ざり合う、そこにポイッと火の魔石を投げ込むと――あら、不思議! 大爆発の大炎上だーーーー!!」
「何その新種の爆弾!? とある金属って何!? どうせまた作りっぱなしで商業ギルドにも登録してないんでしょ!? って、なんで追加で投げてるのおおおおお!! 何個持ってきてるのおおおお!!」
「Aランクに上がる試験でバルダーナも似たような原理の爆発を使ってたから、きっと世間でもよく知られている爆発の原理だと思うだから商業ギルドに登録する必要はないよ」
「は? バルダーナ? あの人は称号に爆弾魔って付いてる人だよ!! あの人は二つ名で東の爆弾魔とか冒険者ギルドの爆弾魔とかって呼ばれてる人だからね! その人が使ってた爆弾が世間一般的に知られてる爆弾とは限らないよ!! ああ~、爆発が爆発を呼んで燃え広がってるぅ~、このままだと昨夜みたいなことになっちゃうかもしれないから程々のとことで消火するよ! は……ああああああああ!?」
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
「おぉっと、アベルが雨の魔法を放ったから更に爆発をしてしまったー!! 危ないから、離れろー!! いいか、ジュストこれはファンタジーでもあるが化学でもある。中学の理科の授業で習ったかな? 金属火災に水は厳禁だぞぉ」
「は、はぁいいいいい~!! 習ったような気もするけど、覚えてないので今覚えました~! でも金属火災と普通に火災の見分け方がわかりません!!」
「お~、何だかよくわかんないけど安全に持ち運べる爆弾なら問題ないかぁ? いや、使い方としては問題あったなぁ。ま、水で更に爆発するのはおもしれーなー、使いどころが難しそうだけどなー」
「面白いけど、面白くないよ!! 爆発物に関してもそれ以外に関しても、ホント油断もすきもないグランだよ!!」
夕食後箱庭にやって来た俺達は、今回もまた森を燃やしていた。
ここはあの別荘から割れ目の方へ進んだ森の中。
焼き払ったと思っていたスゴロクの森は、割れ目の近くにまだ残っていた。
俺の投げた金属粉末爆弾で燃え上がる森の中、炎に包まれ消えていく木の看板が見える。
運命とは指示されて進むものではなく、自分で切り開くものなのだ。
昨夜燃やしきれなかったのか、それとも割れ目から漏れるスゴロクの魔力に影響されて再びスゴロク化したのか。
しかしこのまま放置しておけばまたスゴロクの森が広がることになるだろう。
だから俺は投げた。
分解スキルでとある金属をサラサラ細かい粉末にしただけの粉が詰まった瓶を。水の魔石と一緒に。
そして追い打ちに火の魔石を。
その効果にアベルがびっくりして魔法で雨を降らせたが、これが水を掛けると更に爆発的に炎上するタイプの爆弾なんだよなぁ。
ははは、ジュストは知っているかな?
思ったより爆発してしまったので、爆心地から距離を取りつつジュストに小声で種明かしをする。
ジュストもいつか俺のように、日本での知識を上手く利用できるように育ってほしい。そしてその知識で危機を回避できるようにもなってほしい。
見上げれば思ったより燃え上がっている。
どうだ、収納スキルがなくても安全に持ち運べる爆弾はすごいだろ!! もっと俺を褒めていいぞ!!
俺達の目的は割れ目をどうにかすること。
つまり、割れ目から溢れるスゴロクの魔力を消耗させること。
要するにスゴロクの影響を受けたものをぶち壊すこと。
つまり今日も森林火災だーーーー!!
いや~、備えがあったから憂いはなかったな~。
これぞ物資の力。
強力な物資が持ち込めるのなら影響された場所だとしても、チマチマとスゴロクの指示に従う必要などなく、物資の力で全て踏み越えていけばいい。
これはまるでニューゲーム状態。
スゴロクよ、これが
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