第889話◆始めたからには

「ふむ……確かに少しやりすぎたかもしれぬな。箱庭が危険な状態にあるというのなら、その箱庭は壊すか捨てるかした方がいいのでは? 捨てるなら森の奥の竜の巣にでも捨ててくるか」


 や、弄りすぎなければ問題ないんだなこれが!!


「キッ!? キエエエエエエッ!!」

「カーッ!」

「モーッ!」


 チビッ子達も張り切るんじゃない!

 とくに苔玉ちゃんが張り切りすぎて、まだ食事中なのに今にも箱庭を蹴飛ばしにいきそうな勢いなのを、カリュオンが苦笑いをしながらレタスを渡して誤魔化している。

 そこ、レタスで納得するところなんだ。


 そもそも箱庭がこんなになっているのは、君達が張り切って弄くり回したのが原因だからね?

 俺がナナシをブッ刺して沌の魔石を埋めたのも、箱庭にヤッベー沌の亀裂ができてかなりまずかったぽいから俺もラト達のことをあまり強く言えないけれど。


 そう、つまりここにいる中ではアベルとカリュオンとジュスト以外みんなギルティ!!

 いや、アベルも夜中に弄っていたみたいだしギルティ側かもしれない。




 朝食の席で箱庭の中であったこと、箱庭の現在の状態、箱庭を壊さないために俺達ができること、そして条件付きではあるが箱庭に入れるようになったことをラト達に伝えたらこの反応である。

 みんなで張り切って箱庭を弄った結果、箱庭内の魔力が豊富になりすぎてキャパオーバーで爆発しそうなことを伝えると、みんな意外そうにものすごく驚いて神妙な表情になった。


 そんな意外そうに驚いても、どっからどう見ても君達が、そして俺もやりすぎたんだよ。

 これで少し弄るのは手加減してくれるかな?

 俺がパパッと箱庭世界を救ってくるからそれまで大人しくしていてくれよ。もちろん平和になった後も手加減は続けてくれ。


 っと、箱庭の状態と昨夜俺達に起こったことを知って一度は納得をしたラト達だが、納得した後に最高のひらめきを得たような顔になったかと思うとこれである。

 待て待て待て待て!! 壊すとか捨てるとかはダメだ!!


 すでに魔力が凝縮され小型のダンジョンのようになっている箱庭を破壊してしまうと、中の魔力が爆発的に外に吹き出して俺の家が吹き飛ぶかもしれないし、周囲に大きな影響が出るかもしれない。

 おうちの改装を控えているこの時期に家がなくなりましたは勘弁してほしいし、箱庭破壊の影響でピエモンのすぐ近くにダンジョンができた日には原因が俺だとバレるとバルダーナにめちゃくちゃ説教をされそうだ。

 その辺に捨ててくる案も、確実にその辺に箱庭の影響が出てしまうからダメに決まってんだろ!!


 それにここまで弄っておいて自分達に都合が悪いかもしれないから、壊したり捨てたりして、なかったことにしようというのは俺的にはなしだ。

 前世でゲームをやっていて上手くいなかったらリセットをしてやり直すことはあったが、これはゲームではなくて現実。

 おままごとを目的とした玩具かもしれないが実際に妖精が住み着いて生活しているのなら、それはもう簡単になかったことにしてはいけないもの。

 前世でよくやっていたゲームのような仮想のものではなく、この箱庭には生きているキノコ君が住んでいるのだから。


「昨夜はちょっとびっくりはしたけど、箱庭はみんなで育ててここまでになって、キノコ君も住んでいるんだ。それを俺達の都合で壊したり捨てたりしたらダメだろう。始まりはままごと感覚だったかもしれないけどこの箱庭にはもう住人がいる、だからこの箱庭の所有者である俺も、箱庭を育てたみんなもちゃんと責任を持って最期まで見守らないといけないと思うんだ」

 そう、始めたことは最後まで責任を持たないといけない。

 ままごとと現実の狭間のような不思議な箱庭。

 住人がいる以上、それを管理する者は責任を持って最後まで管理し続けなければいけない。

 このままでは箱庭に壊してしまいそうな勢いのラトとチビッ子達を宥めながら、これは自分にもいえたことだと箱庭を所有していることの責任を改めて心に刻んだ。


「ふふ、わたくしもグランの意見に賛成ですわ。せっかくここまで発展させたのですし諦めたくはないですわ」

「そうね、作って気に入らないからって捨てたり壊したりするのは嫌な奴みたいで嫌だわ。それにせっかくいい感じの箱庭になっていたのに、ここでやめてしまうのは悔しいわ」

「そうですねぇ、朝起きてグランがいなかったことにはびっくりしましたけどぉ、解決策があるなら箱庭を助けることもできますからねぇ。助けた後はまたそうならないように、今度は私達が気を付ける番ですねぇ」


 さっすが三姉妹、女神の末裔!!

 血の気の多い酒くさ番人とヤンチャチビッ子達も、三姉妹を見習って慈悲の心を覚えたまえ!!

 この様子なら箱庭が落ち着けば三姉妹は出禁を解除してもらえそうだ。

 箱庭には海や火山や荒野もあるはずだから、出禁が解除されたら森の中では見ることのできない場所に遊びにいこう。


「あの箱庭をもっと探索してみたいからグランに賛成! せっかく面白そうな別荘もあるんだしぃ? ふふふ、君達は箱庭に入れないみたいだから俺達が箱庭を満喫してきて話を聞かせてあげるよ。グランの面倒もちゃんと俺が見てあげるからね、ふふん。つめたっ!」

「アベルとカメッ子は相変わらず仲良しだなぁ~おっと、危ない。ま、俺もグランの意見に賛成だぁ。苔玉だってよく言ってたじゃねーか、生きものを使役するならその命に責任を持てって。ま、俺はハイエルフの血を引いてても魔物使いの素質はなかったけど」

「箱庭は危険な状態かもしれませんが、やれるだけのことはやってみたいので僕もグランさんに賛成します。キノコさんも箱庭で暮らしたいみたいでしたし」

 アベルとカリュオンとジュストも俺に賛成してくれて、多数決でも箱庭は壊したり捨てたりしないことに決定だ!!


 というわけで、箱庭はこのままリビングに置いておくけれど、しばらく弄るのは禁止!!

 今回の出来事でラト達も箱庭の現状がわかったようなので、落ち着くまでは触らずにいてくれそうだ。

 落ち着いた後もやりすぎないように頼むぞ!!

 中には楽しそうな別荘があるから、ラト達も出禁が解除されたら遊びにいこう。


 そのために箱庭の平和を取り戻して、鍵集めも頑張るぞぉ!!


 五つ目の鍵の条件はラトによるスゴロクストライク事件で達成できなかったが、帰る前に読んだ妖精の箱庭観光のしおりに残りの鍵の入手条件がかかれていた。

 五つ目は一度失敗してしまったので、お題が変わってスゴロクの影響の縮小になっていた。

 これは森を燃やしたことで達成されたみたいで、箱庭から帰還したタイミングでいつものように光の鍵をもらった。


 残る六つ目と七つ目は――。

 珍獣と駄女神と小動物の躾!

 箱庭内の魔力の安定化。とくにスゴロクが入り込んだやっべー割け目をどうにかして!


 という内容だった。

 躾といわれましても……でも今回俺達が箱庭に引き込まれたことをラト達は相当心配していたのか、しばらく箱庭をそっとしておくことには納得してくれた。

 おそらくこれでラト達がしばらく大人しくして達成されるんじゃないかな?

 うんうん、箱庭が平和になったらキノコ君に交渉して出禁を解除してもらうからね。


 そして七つ目――またスゴロクですかーーーー!!

 しかもスゴロクストライクをしてしまった本拠地の割れ目!!

 箱庭の上から見ただけでわかるやっべー黒い空間!! 見るからに伏魔殿!!

 そこに行けってなんとかしてこいってことかな!?


 やだ……ゲームのラストダンジョンみたいなところで、怖くて怖くてワクワクしちゃうーーーー!!


 ラストダンジョンってあれだ! すっげー強い装備とか素材がある所!!


 なんか楽しくなってきたので、次は装備万全でパパッと箱庭世界を救っちゃいますよーーーー!!





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