第477話◆大自然の解放者
「ステータス・オープン」
解体作業が終わって、カリュオンとシルエットも解体場に置いてある休憩用の椅子の上に座ってぐったりとしているので、俺も一息つきながらステータスを確認してみる。
名前:グラン
性別:男
年齢:19
職業:勇者
Lv:109
HP:988/988
MP:16320/16320
ST:874/874
攻撃:1203
防御:876
魔力:13060
魔力抵抗:2302
機動力:666
器用さ:19470
運:226
【ギフト/スキル】
▼器用貧乏
刀剣99/槍47/鈍器35/体術69/弓59/投擲50/盾68/身体強化89/隠密50/魔術41/変装47
▼クリエイトロード
採取71/耕作45/料理73/薬調合81/鍛冶41/細工68/木工46/裁縫44/美容35/調教55
分解74/合成65/付与65/強化40/美術32/魔道具作成48/飼育41
▼エクスプローラー
検索(MAX)/解体81/探索85/察知93/鑑定40/収納96/取引42/交渉51
▼転生開花
【称号】
オールラウンダー/スライムアルケミスト/無秩序の創/大自然の解放者
やったーーー! レベルが上がっているぞおおおお!!
そりゃあんだけダンジョンに籠もって上がっていなかったらさすがにへこむ。
武器系がちょいちょい上がっているけれど、滅多に上がらない領域まで上がってしまっている刀剣スキルが上がっているのが最高に嬉しい。やっぱ敵が強いところだと上がるなぁ。
体術はあんま使った覚えがないのに上がっているのは、ドリーにボコられたおかげか?
残念ながら収納は上がっていない。あれ? 調教がめっちゃ上がっているのはなんで?
後は細かいところがちょいちょい。採取やら料理も上がってんなー、それから解体、この辺は今回も雑用を頑張ったから。
交渉が上がっているのはきっと職員さんを買収したおかげ。
え?
変な称号ついてるううう!? 大自然の解放者って何!?
あ、もしかして海底都市? そっかー、十五階層攻略のきっかけになったからお手柄だもんなー。
実際にやったのは鮫顔君だけど。
というか、最近悪さはしていないので無秩序の創とかいう不穏な称号は消えて欲しい。
「カメェ?」
ステータス画面を指でなぞりながら、成長したスキルをニヤニヤと眺めていたら、カメ君が肩の上で不思議そうに首を傾げた。
あっ、ステータス画面は俺にしか見えないから、端から見たら何もないところで指を動かしてニヤニヤしている変な人だ。
「俺のスキル。自分のスキルとか身体能力が数字で見えるんだよ。ちょっとだけ強くなって嬉しいなって。大自然の解放者って称号がついちゃった、鮫顔君のおかげかな?」
「カァ?」
ん? カメ君か首を横に振っているな。カメ君的には違うと言いたいのかな?
でも他に心当たりはないし、きっと鮫顔君のおかげ。
「そっちは終わったー?」
一仕事終えて解体場の椅子でぐったりとしていると、報告書が終わったのかアベル達がやって来た。
「終わった終わった。さすがに疲れた。でももう肉はいらないって言われたから、オルタ・クルイローの冒険者ギルドに寄って肉を売りたいな」
「む? それなら肉を売っている間に屋敷の方に知らせを出しておこう。うむ、これで突然帰ってくるなと言われることもない」
お貴族様の事情はわからないけれど、連絡なしで俺達を連れて行くつもりだったのか?
宿屋ではないのだから、いきなりこの人数で押しかけると迷惑なのでは? それに辺境伯様のお屋敷だし。
いや、大貴族様のお屋敷だから突然の客にも対応できるのか?
「もー、だから午前中のうちに俺が転移魔法でパパッと知らせに行こっかって聞いたでしょ? 先触れなしでいきなり訪問は困るでしょー」
やっぱ、でっかいお貴族様の屋敷でもいきなりの訪問は迷惑だよね?
「馬鹿野郎! アベルを……客をパシリに使う方が怒られる! 大丈夫だ、クルイローのギルドで肉を売っている間に知らせを出しておく。ついでにジュストにも知らせを出しておくか」
ジュストにもこれから連絡するんだ……。
だよな、ダンジョンから帰ってきたのは今日の午前中だし。転移魔法や遠距離通信ができる高級魔道具がないと無理だよな。
遠距離通信のできる魔道具は存在するが、国の重要機関や大きな町のギルド、後は大貴族が家門で所有してくらいで、一般人が目にすることはほとんどない。
しかしあるとこにはあるし、魔道具の技術も日々発展していることを思うといずれ一般人にも、すぐに連絡が取れるような便利な魔道具が普及する日がくるかもしれない。
すぐに連絡が取れる系の道具は、あると便利なのだけれど休みに邪魔が入りやすくもなるんだよなぁ……、前世にもそういうのがあって帰宅後とか休日に……ウッ、転生開花の副作用がっ!
冒険者ギルドの職員さんが限定的だが通信可能な魔道具を使っていたし、ギルド系など各地に支部のある機関では他の支部と情報を共有できる魔道具を使っているところもあるし、便利な連絡手段が普及する日はくるんだろうなぁ。
この後オルタ・クルイローへ移動して、冒険者ギルドで残っていた肉や素材を売り分配を済ませ、少し町で買い物をしてからドリーの実家が所有のお屋敷に到着する頃には夕方の空気になり始めていた。
そして、その今夜お世話になるお屋敷――ゲストハウスっていうの? でっかっ!
や? これ、オルタクルイロー城の城内だよね? めっちゃ辺境伯様のお城の一部だよね? いいの?
あぁ、城の中が小規模な町になっている? あっちには軍の施設や養成校がある?
へー……、ドリーが貴族のお坊ちゃんなのはあまり感じたことがなかったけれど、こうしてみるとやっぱいいとこのお坊ちゃんなんだなぁ。
ユーラティア王国の首都ロンブスブルクにある王城は、いかにも王城といった煌びやかで綺麗な城だったが、国境を守るオルタ・クルイローの城は美よりも守りの実用性を最優先にした城塞。
城下町も外から内側に行く途中に大きな防壁で区画分けがされた立体的構造で防衛と市街地戦を意識した作りだ。
そしてその中心のオルタ・クルイロー城、ここも城内が防壁で区画分けをされた構造になっている。
そのオルタ・クルイロー城の敷地内にあるゲストハウス。
冒険者ギルドを出た後アベルの転移魔法でオルタ・クルイロー城の前まで来て入城の手続き後、手配された馬車でそこに案内された。
ゲストハウスの入り口の門をそのまま馬車で通過し、小洒落た庭園を抜けて建物の前で馬車を降りた。
そして目の前には今夜お泊まりをするお屋敷。
ゴツゴツした作りの建物が多いオルタ・クルイローの中では、比較的小綺麗でオシャレな建物。逆に小綺麗過ぎて少し浮いている気もする。
馬車を降りると屋敷の前にズラリと使用人が並んで俺達を迎えてくれた。
うっわ、いかにも貴族っぽい。貴族のことはよく知らないけれどだいたい俺の中にある大貴族のイメージ。
その使用人の先頭には、ビシッと執事服を着こなした白髪と白髭が印象的な細身の男性。
パッと見お爺ちゃんだけれど、俺の勘が言っている。絶対この執事さん凄腕の暗殺者とか仕事人に違いない!
俺の前世の知識がそう言っている。前世で読んだ本に出てくる老齢の執事さんはやべぇ凄腕の戦士だと決まっていた。
「ドリアングルムお坊ちゃま、おかえりなさいませ」
お坊ちゃま! ドリーがお坊ちゃま!! この熊がお坊ちゃま!!! プププププププッ!!
吹き出しそうなのをこらえていると、アベルにこっそりとつま先を踏まれたが、そういうアベルも笑いをこらえた顔をしている。
だって、お坊ちゃまだもんなー!!
「ギリギリに連絡したのは悪かったと思うから、パーティーメンバーの前で坊ちゃまはやめてくれ……。とりあえず客人を部屋に案内してくれ。食事はその後から――」
苦笑いをしながら使用人に指示を出すドリーは、貴族の威厳たっぷりで……ん?
「ドリー! たまに帰って来たと思ったらまったギリギリで連絡をしてぇ!!」
「うげえええええ!! 姉上!? 何故ええええええええ!?」
ドリーの貴族の威厳が一瞬で崩壊した。
その原因は屋敷の入り口の左右で綺麗に整列して頭を下げる使用人の真ん中を堂々と歩いてきた背の高い美人。
細身で巨乳、俺よりも鮮やかな赤毛。そしてシンプルで上品なデザインのマーメイドラインの真っ赤なドレスと高い踵の真っ赤なハイヒールの組み合わせが全くケバさがなく、ただただ格好いい。
素敵なお姉様!!
って、姉上!? ドリーのお姉様!?
似てない!! 全然似てない!! 美女とグリズリー!! 遺伝子不思議発見!! 俺の知らない遺伝子の世界!!
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