第379話◆準備はしっかりと

 ルチャキャロットで作ったリフレッシュエクストラポーション、これは体力が回復して疲れが吹き飛ぶやつ。

 リュウノアカネで作ったエリミネイトエクストラポーション、これは状態異常系が複数回復するやつ。毒と麻痺に加えてパニックや昏睡からも回復するのができた。

 リュンヌの花から作ったディゾルブエクストラポーション。これは石化を解除するやつ。

 そして何度も失敗もしたけれど、やっとこさ品質"上"が安定してきたヒーリングエクストラポーション。すごい傷薬だ。


 リュンヌ以外は手元にあるの全部ポーションにしてやったぞ!!

 またルチャルトラに行けばいいからな! 開き直った俺は強いのだ!!

 リュンヌはキノコ君の地図産なので、たくさん手に入る機会がくるかわからないので、もったいない病が発症してしまいあまりたくさん作らなかった。

 強力な石化を使ってくる敵なんてそうそういないしな。

 やばい石化の代表といえばバジリスクなのだが、食材ダンジョンなので食えないやつは出て来ないはずだ。

 野生のバジリスクは毒がやばくて食えないからな。いや、毒を抜けば食えるけれど……それだと不味いし食えない判定でいいよな?

 ……出てこないよな? あれは食材じゃないよな? ……一応もう少しディゾルブポーションを追加で作っておくか。

 シランドルに行った時に買って来た、バジリスク専用の解毒ポーションの在庫はまだあったよな。


 リヴィダスがいるので回復系のポーションの出番は少なそうなのだが、備えあれば憂いなしだ。

 ヒーラーの手が回らない時は本当にやばい時なので、そんな時に必要になるポーションは生死を分けるものなのだ。


 そうだ、アベル用に魔力回復のポーションを作っておいた方がいいな。

 魔力は回復魔法では回復できないし、アベル以外にも魔力を大きく消費すれば誰でも使う。

 マナポーションの材料は薬調合のスキルが不安なので、それなら焼き鳥にしてしまうかと思いつつ、やはりもったいなくて使っていないロック鳥の肝。

 ロック鳥の肝は魔力を大幅に回復するマナエクストラポーションになるので、さすがに焼き鳥にするのはどうかと葛藤しているうちにすっかり収納の肥やしになっていた素材だ。

 今ならこれも失敗しないでエクストラポーションにできるだろう。


 へっへっへ、ここまできたら収納の中の高位の調合素材もポーションにしてやるぜええええええ!!

 まずはペルシモス。

 枯れにくい上に華やかな花を付けるため園芸目的で庭に植える人もいるが、その全ての部位が強い毒を持っているおっそろしい毒植物だ。

 更には植えた土壌をも毒で汚染し、抜いたあと一年以上その土に毒が残り、ペルシモスの近くに植えたイモを食べて中毒死したなんていう事故もあるとんでも植物である。

 そんな植物なのでもちろん毒薬――ハイポーション、上手く作ればエクストラポーションにもなる素材である。

 むかーし、ギルドの仕事でお金持ちの家の庭掃除をした時にどうせ捨てるならと貰ってきたのだ。

 今なら特上品質のハイポーションか上品質のエクストラポーションまでいけそうだな。

 ごく稀に魔物相手に毒を使うこともあるしな……あっても無駄にならないだろう。

 もちろん人には使わないよ!!


 それからなんとなく作ってしまった爆弾ポーション。

 王都のダンジョンでニトロラゴラたくさん採ってきたから、なんかつい出来心でこれでもかっていうくらい威力底上げしてポーションにしてしまったのだ。

 思わずバーミリオンファンガスも混ぜてやったぜ。

 鑑定したら爆弾どころかインフェルノハイポーションとか見えたのでそっと収納の中にしまっておいた。

 これは近所で試してみたくないな……、食材ダンジョンでも使う気がしないな……、うむ、これを使う日が来ないことを祈ろう。

 使う日は来ない方がいいと思うけれど、ちょっと使ってみたいと思うのが男の浪漫である。



 食材ダンジョン行きは出発日は聞いているが、その後の詳しい予定は聞いていない。

 アベルはこういうところわりとテキトーなところがあるというか、直前まで忘れていることがある。重要な事の報連相は忘れないでほしい。

 俺の中では長くても一週間程度のつもりなのだが、念のためパッセロ商店には多めに商品を納品しておこう。


 お留守番勢のご飯もたくさん作った。

 三姉妹が簡単な料理ができるようになっているので、火を通すだけとか、混ぜるだけとかそういう状態のものも用意しておいた。

 例によって今回も留守中はキルシェが、時々家の様子を見に来てくれるというので安心だ。

 畑にはフローラちゃんがいるし、ラトのおかげで留守中に泥棒の心配もないだろう。

 キルシェが来てくれるなら三姉妹と仲良くお茶をしていそうだし、おやつも多めに作っておこう。


 ……と思ったら、作りすぎてしまった。

 またちょくちょく留守番を頼むことになるだろうし、ダンジョンに行く前にキッチンの棚にガッツリ停滞を付与して、中身が日持ちするようにしておくか。

 ただの棚だと無理だから少し改造しておかないといけないけれど。

 むしろアベルか三姉妹に頼んで棚をマジックボックスにしてもらうという手も……いや、元が普通の棚だからそこまでは無理だな。

 食材ダンジョンから帰って来たら棚も新調するか。

 そうだ! ガッツリ空間魔法まで付与すると台所に食材置き放題じゃないか!!

 幼女達が料理の練習をするのにも、食材を詰め込む棚はありだな。よし帰って来たら棚を作ろう。



 おっと棚も改造しないといけないが、その前に装備も調えないとな。

 む? 作業をしていたら三姉妹達がやって来たぞ。

 ああ、例の遠見の付与ね。それ、やり方を俺にも教えてくれないかな。

 そういう魔道具は存在しているけれどすごく高価で、身分の高い人や重要なお役所にしかないんだ。

 音声だけとか文字だけとかを一方的に送りつける魔道具なら、お役所とか大きな商店なら使っているところがあるかな。

 ギルド関係は俺もよくわからないけれど、なんかすごい大規模な魔道具で情報のやりとりしていると聞いたことがあるな。機密事項らしいから詳しい事はわからないよ。


 ん? ついでに防具も強化してくれるって? 機動力重視の軽装備で強度は低めだから助かるな。

 耐性系は結構盛ってるんだけどな。

 その作業も俺も一緒にやるよ。自分の装備だし、付与の練習もしたいからな。

 これだけ盛ればサラマンダーと正面衝突しても平気?

 いや、そんなことはしないから……。

 うん、ありがとう助かったよ。食べ物だらけのダンジョンみたいだし、お土産たくさん持って帰ってくるから、帰って来たら美味しいものたくさん食べような。



 今回行くダンジョンは、ピエモンのあるソートレル子爵領の東隣、オルタ辺境伯領の領都オルタ・クルイローから北にある山岳地帯の町オルタ・ポタニコのすぐ近くで発見されたダンジョンである。

 まだ見つかってから二年も経っておらず、調査が進んで一般開放されたのはごく最近である。

 そのため、入場に要求されるランクはBランク以上と高く、Aランク以上という制限のあるエリアもあるそうだ。

 また、調査は海の階層で止まっておりそこから先は立ち入りが制限されている。

 実際のところ、立ち入り制限もなにも海の階層なので、そこから先は進みたくても進めないという状況らしい。

 しかし陸地部分には入れるらしいので、そこで釣りをしてもいいなぁ。

 ドリー達はすぐに飽きそうだけれど、俺は一日中釣りをしていてもいい。

 一日分分け前がなくていいから、丸一日自由時間が貰えないかな?

 今回のメンバーは俺とアベルの他は、ドリーにカリュオンにリヴィダスそしてシルエットの、ドリーパーティーフルメンバーだ。

 メンバーが超火力すぎて確実に俺は雑用係。一日くらい自由時間を貰っても平気そうだな。お願いしてみよう、そうしよう。


 そしてこのダンジョンは出てくる敵も採れる素材も食用可能なものばかりだと聞いているので、たくさんお土産を持って帰れそうで楽しみしかない。

 食材ばかりのダンジョンか……、料理を用意して行こうかと思ったけれど現地調達でも良さそうだな。

 料理を用意しないで現地ですぐ食べられるものがなくても困るし、半々くらいになるようにするか。

 冷静に考えると食材だらけでものすごく楽しそうだな。

 以前アベルが持って来た米はあのダンジョンの宝箱と言っていたし、宝箱を片っ端から開けて回りたい。

 あ、ミミック? アイツも食材だからいそうだな。


 えへへ……、食材ダンジョンからたくさん食材を持って帰ったら、食い道楽生活しながら不労所得でのんびり過ごすんだ。




 そしてついに、食材ダンジョンに向けて出発する日がやって来た。


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