第371話◆閑話:とある元勇者の異世界日記帳
空の月七日(竜)
今日、僕は長い間お世話になったグランさんの家を出て、ドリーさんのところに来ました。
ドリーさんに文字の練習を兼ねて日記を書くようにと日記帳を貰ったので日記を書きます。
今日はドリーさんの実家に泊めてもらいました。明日からからはオルタ辺境伯の職業訓練施設の寮に入るそうです。
ドリーさんの実家はすごく大きくて、でっかいお城みたいでした。
ドリーさんは貴族なのでその家族の人に会うのはすごく緊張しました。
この世界の事はまだよくわからないので。僕のいた世界で読んだ漫画の貴族のイメージしかないので、こんな姿だし出て行けと言われないかすごく不安でした。
アベルさんとドリーさんは貴族の中でも特殊な人達なのは僕でも何となくわかります。
アベルさんとドリーさん以外の貴族の人とはちゃんと会うのは初めてなのですごく怖かったです。
だけど、ドリーさんのお姉さんや妹さん達はみんな優しくて、初対面なのにとても親切にしてくれました。
もう着ないからと息子さんや弟さんの服を色々試着させてもらって、たくさん貰ってしまいました。
高そうな服なので貰っていいのかわからなくて困ったけれど、ドリーさんが仕事で使うかもしれないというので、ありがたくいただきました。
僕はこれからドリーさんの実家が運営している職業訓練施設に入って、僕の持つスキルを活用する訓練をたくさん受ける事になっています。
まだ迷っているけれど、僕は将来ドリーさんのような冒険者として各地を回りながら情報を集める仕事に就くつもりです。
僕の持つスキルの収納や自動翻訳、簡易食料生成が旅をするのに便利だからです。
ドリーさんに聞いた話だとニンジャみたいな仕事だなって思いました。僕は命を奪えないので回復役と後方支援と情報収集がメインになるそうです。
ヒーラーニンジャとして頑張りたいと思っています。
危ない事もたくさんある仕事と聞いているけれど、僕は僕にできる事をしてこの世界で生きていきます。
空の月八日(獣)
ドリーさんに案内されて職業訓練施設の寮に来ました。
割り当てられた部屋は三人部屋で、これからは僕と同じくらいの年の男の子二人と一緒に寝起きする事になります。
仲良くできるといいな。
部屋には生活用品が揃っていて、この施設で訓練を受けている間も少ないけれど給料が出るそうです。
訓練のある日は冒険者ギルドの仕事ができないので給料が貰えるのは嬉しい。
明日は能力測定があるので、今日は早く寝て明日に備えます。
空の月九日(鳥)
今日は能力測定でした。
筆記テストと魔力や身体能力のテストをした後、試験官さんと模擬戦をしました。
冒険者ギルドのランクアップ試験でも使う、一定以上のダメージが蓄積するとブザーが鳴る魔道具を使ったテストでした。
装備は普段使っているものを使用していいと言われたのでいつもの装備で挑んだら、装備の効果で軽い攻撃はほとんどバリアのような壁で弾かれてしまいました。
これはグランさんと行った妖精の地図で貰ったローブのせいです。
この効果のおかげで大きな熊と戦った時もほとんどダメージを受けませんでした。
ローブのバリアがどのくらいまで耐えられるのか試してみようとなって、試験官さんが強めの攻撃を放ったら攻撃を受け止めたバリアがパリンと割れて僕は吹き飛んだけれど、割れたバリアがドラゴンゾンビの姿になって試験官さんに攻撃しました。
今までは一人では強い敵のところに行く事はなく、強い敵の出る場所はグランさん達の後ろにいたので強烈な攻撃を受ける事がなかったので、僕はこのローブにそんな効果があるとは知りませんでした。
このローブを貰った時、謎の宝箱にドラゴンゾンビの魔石を入れたからなぁ?
グランさんが妖精のやる事に常識は当てはまらないと言っていたので、深く考えるのはやめました。
このローブは強すぎるので、ローブは脱いで試すように言われてローブを脱いで試験の続きをしました。
グランさんがローブにたくさん武器を仕込んでいたせいでローブがめちゃくちゃ重くなっていたので、ローブを脱いだらすごく動きやすくなりましたが、やっぱりローブがないと攻撃に当たってしまいダメージを受けて、魔道具のブザーが鳴ってしまいました。
試験官さんの魔道具ももう少しで鳴りそうだったから悔しかったので、次こそは試験官さんの魔道具を鳴らせるように頑張りたいです。
そう言ったら、試験官が勝つ事前提だからそう簡単に鳴らされたら困ると苦笑いされました。
ですよねー。でもいつか鳴らせるように頑張りたいです。
空の月十日(虫)
今日から訓練施設の授業に参加です。
グランさんの家にいた時より起きる時間は遅くていいのですが、目が覚めてしまう習慣が付いてしまったので、朝ご飯前に筋トレをしました。
ニホンにいた頃はつい夜更かしをして毎朝ギリギリまで起きられなかったのに不思議です。
こちらは夜はやる事もないので早く寝るので朝早くに目が覚めてしまいます。
同じ部屋の人とは話すきっかけがなくて会話が続きません。仲良くしたいけれど難しいです。
施設の授業は体を動かす事と座学と両方あります。
僕は自動翻訳のスキルがあるので、語学はスキルの検証も兼ねて特別授業でした。
魔法もアベルさんにたくさん教えてもらっていたので昨日の筆記テストの結果が良くて、補助回復系の専門授業に参加させてもらえる事になりました。
体を動かす授業は、体力作りから始めるそうで今はまだ緩くて楽です。
慣れてきたらドリーさんの筋トレみたいにキツいのになるのかなぁ。こわいなぁ。
空の月十一日(魚)
ルームメイトの人と少し話しました。
僕は話すのがあまり得意ではないので、グランさんみたいに知らない人と会話が弾みません。
こんな時グランさんならどうするだろう。グランさんなら美味しいもので解決してしまいそう。
僕は料理はあまりできないからなぁ。そろそろニホンの料理が食べたくなってきました。
グランさんが作ってくれたポテチをこっそりとパリパリしていると、ルームメイトの二人が興味を示したので一緒に食べました。
二人とも美味しいって喜んでくれました。僕が作ったものではないけれど嬉しい。
そしてポテチのおかげでルームメイトの二人とちょっと仲良くなれました。
空の月十二日(神)
今日は神の日です。神の日はニホンでいう日曜日的な日です。
こちらは一週間が六日で一月が三十日なので計算しやすいです。一年はニホンと同じ十二ヶ月です。
神の日は訓練はお休みなので、冒険者ギルドの仕事を受けに行きました。
訓練施設のあるオルタ・クルイローは城塞都市で、防衛のため道が立体構造ですごく複雑になっています。
複雑すぎて迷子になってしまいました。
困っていると偶然ルームメイトのユーリ君に会って、冒険者ギルドまで連れて行ってもらって一緒に冒険者ギルドの依頼をこなしました。
ユーリ君は僕より小柄だけれど、素早さ重視の短剣使いで強かったです。
僕はずっと薬草を集めてた。この辺りはピエモンとは違う薬草があるので楽しいです。
僕もニホンではゲームが好きだったので、素材を集めるのが楽しいグランさんの気持ちがよくわかります。
薬草がコツコツと増えて行くのはすごく楽しいです。
帰りもユーリ君に寮まで連れて帰ってもらいました。
夜はグランさんがくれた小型のポップコーン製造機でポップコーンを作りました。
トウモロコシをどれくらい入れていいのかわからなくて、適当に入れたら鍋から溢れてしまって大騒ぎになりました。
騒ぎすぎてたまたま寮に来ていたドリーさんが様子を見に来ましたが、ポップコーンで許してもらえました。
ポップコーンは美味しいですからね。
ルームメイトの二人とも一緒にポップコーンを食べて、たくさん話をしました。
グランさんの家を出て明日で一週間になります。
少しホームシックな気分になりますが、僕はここで頑張っていけそうです。
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