第219話◆王都冒険者ギルド別館

 さぁて、ギルドの別館で色々買い物するぞおおおおおお!!

 っと、その前に。





「日替わりAランチ大盛りで、サラダはレタスかなぁ、スープはベーコンと豆のやつで」

「俺はBで。サラダはタマネギにしてね。デザートはフルーツで」

「どれにしようかな……えっと、僕もBランチで、サラダはレタスのやつで、デザートはアップルパイでお願いします」


 王都の冒険者ギルドの別館にある大規模購買部で買い物をする前に、同じく別館にある冒険者向けの料理屋で昼飯だ。

 王都ギルドの別館の一階にある『ガストリ・マルゴス』、冒険者向けの料理屋で店内でのメニュー以外にも、持ち帰り用、長期遠征用と様々な料理を取り扱っている。

 お手軽価格でボリュームもあり、冒険者ギルドの施設なので持ち込まれる素材のおかげで、メニューの種類も豊富で味も良い為、王都の冒険者には大人気の食堂だ。

 特に日替わり定食シリーズは、日々ギルドに持ち込まれる素材によって献立が変わる、この食堂の目玉メニューだ。

 そして、ウェイトレスのおねーさんが美人で優しいのも、とても良い。


「グランさん、ずいぶん久しぶりですねー」

「ああ、久しぶり。田舎の方に引っ越しちゃって、そっちでのんびりやってるんだ」

 注文を取りに来たおねーさんが、俺の事を覚えてくれていた。

 王都にいた頃は、時々ここの食堂のメニューを一緒に考えてたんだよなぁ。その時、料理長のおっちゃんに色々料理を教えてもらっていたよなぁ。

「そうでしたかー。グランさんが来なくなって、料理長がすごく寂しがってるんですよー。また一緒に料理したいって」

「あー、俺もまた料理を教えてもらいたいなぁ」

 前世の記憶にある料理は、記憶を引っ張りだせば何とでもなるが、こちらの世界にしかない料理はそうもいかない。

 そして、プロの料理人の技術は知識だけではどうにもならないので、この食堂の料理長と一緒に料理をするのはすごく好きだった。

 また色々教えてもらいたいなぁ。


 ウェイトレスのおねーさんとそんな話をした後、料理と一緒に料理長がテーブルにやって来た。

「いよお、グラン。しばらく見ないと思ったら、引っ越したんだってな」

 ドリーとはまた別の意味で熊みたいな髭面で体格の男が、テーブルに料理を並べながら話しかけて来た。

 この熊系コックが、王都冒険者ギルドの食堂の料理長だ。

「ああ、挨拶とか何もしないで引っ越してすまなかった」

「いやいや、グランはそういうやつだったよな。まぁ、怪我もなく元気そうで何よりだ。それで、いつまで王都にいるんだ?」

「あー、すぐ戻る予定なんだよなぁ。明日と明後日はダンジョンかな」

「そうかー、また何か料理でも考えようかと思ったが、時間がなさそうだな」

 すぐ帰ると言っても、アベルの転移魔法だし、夕飯までに帰ればいいから、少しくらい時間ありそうだな。

「この後、購買で買い物する予定だから、その後なら時間ありそう。ジュストの王都の案内は、アベルに任せていい?」

「ん? いいよー、グランの料理の手数が増えるなら歓迎だしね。ジュストは俺が案内するから料理長と一緒に料理してきなよ」

 ジュストの王都観光はアベルに任せてしまおう。アベルは王都出身らしいし、俺より王都には詳しいはずだ。

「お、そのくらいの時間ならうちもちょうど暇だな。よっし、そうしよう」



 熊さんみたいな料理長と後で一緒に料理をする約束をして、テーブルに並べられた昼食に手を付け始める。

 俺が頼んだ日替わりランチAセットのメインディッシュは、シーサーペントの窯焼きだ。それに、サラダとスープが付いている。パンと飲み物はおかわりし放題。

 体力を使う仕事の多い冒険者向けのボリュームランチだ。


 アベルとジュストが頼んだBセットは、メインディッシュが大きく分厚く切ったサラマンダーの肉が、皿の真ん中にドーンと入っているシチューだ。シチューなのでスープの代わりにデザートが付いていて、他は俺と同じ内容だ。

 メインディッシュにサラダとスープが付くのが日替わりランチセットで、そのサラダとスープは何種類かある中から選ぶ事ができる。

 メインディッシュがスープ系だと、スープの代わりにデザートが付いて来る。


 さぁて、ボリュームたっぷりの昼ご飯いただくとするかなぁ。

 でっかいグラタン皿でドーンと出された、シーサーペントの窯焼きから手を付ける。

 シーサーペントの肉は白身の魚に似ており、独特の匂いが若干あり少しパサパサした身の為、塩漬けにして干物にした後に料理に使う事が多い。


 大きくカットされたシーサーペントの干物の上に、スライスしたパタイモと薄切りにしたタマネギ、みじん切りにしたニンニクが載っており、そこに刻んだパセリやローズマリーが散らされている。そして、一番上にはたっぷりとチーズを載せて、石窯でパリッパリに焼き上げられている。


 フォークとナイフを刺すとパリッと気持ちのいい音と手ごたえがして、チーズとニンニクの香りが溢れてくる。

 これをパンと一緒に食べる。

 超濃厚チーズにたっぷりニンニク、塩味の利いたシーサーペントの肉、パタイモとタマネギの甘味が複雑に絡み合って非常にうまい。そしてガッツリと腹に来る。ニンニクとチーズたっぷりでも決してしつこさはない。

 そして塩味とチーズの味が残る口の中を、あっさり味のスープで洗い流す。

 冒険者向けのボリューム料理でありながら、後に引く脂っこさはない。

 お手頃価格でこの味とこの量、やっぱガストリ・マルゴスのメニューはレベルが高いな。


 一方アベルとジュストの頼んだBセットは、ブラウンシチューの中にドーンとあるサラマンダーの厚切り肉のインパクトがやばい。

 シチューがかかってテカテカとしているサラマンダーの肉は、スプーンを添えるとホロリと崩れるのが見えて、トロトロに柔らかく煮込まれているのが分かる。

 野菜は肉とは別に調理してあるようで、スープと肉はトロトロでも、野菜はしっかりときれいな形をしている。

 そしてアベル、俺は見たぞ! 手を付ける前にジュストの皿に転移魔法でニンジンを移動させたな!?

 ジュストは全く気付いていないけれど、俺の目は誤魔化せないぞ!!



 飯を食ったら、王都冒険者ギルドの巨大売店を見て回らないとな。

 別館の一階には料理屋ガストリ・マルゴスの他に、ポーションや薬、携帯食などの消耗品を扱うコーナーがある。

 二階は金属系の装備、三階は布製品や木工品、装飾品、四階はその他冒険者向けの備品と中古品のコーナーがある。

 あまり癖のない装備なら、初心者から中級者は、だいたいこの別館で冒険者の活動に必要な物を揃える事ができる。

 上級者向けや、特殊な装備、オーダーメイド品になると、町にある専門店に行く方がいい。

 ウーモの店はそういう、上級者やお金に余裕があって良い装備を使いたい者、少し癖のある装備を希望する者向けの店だ。

 ジュストの装備はだいたいウーモの店で揃え終わったので、ここでの目的は四階にある中古品コーナーだ。


 ご飯の後は楽しい掘り出し物探しの時間だああああああ!!!

 ワックワクするなあああああ!!


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