第211話◆人間も女神も獣もダメになる魔道具
妖精のダンジョン騒動から、一週間ほどが過ぎた。
ハックはトンボ羽と一緒にピエモンから旅立って行った。世界中でダンジョンを回って、お宝探しをするとトンボ羽君がとても張り切っていた。
頑張れ、ハック。遠くからだけど、応援しているぞ!!
ハックのダンジョン内の立ち回りは、トレジャーハンターらしい立ち回りで、俺にも学ぶ事が多かったし、こちらに合わせた動きをしてくれるので非常に戦いやすかった。機会があれば、また彼と一緒にダンジョンを探索してみたいが、次に会えるのはいつになることやら。
トンボ羽君がおやつを食べたくなったら戻って来るんだっけか? 帰って来るのかなぁ?
そのトンボ羽君のおかげで獣舎も完成して、手が空いたのでのんびりしながら好きな事を色々やっている。
獣舎の事に関してはトンボ羽君にとても感謝している。獣舎作りから解放されて、やろうと思っていた事が色々出来るようになった。
妖精のダンジョンで拾って来たミミックの肉を、一口サイズに切って塩ゆでにして、軒先に吊した。これは、そろそろ美味しい干物になっていそうだ。そのまま酒のツマミにする他にも、塩漬けにしてみようかな。ああ、出汁に使うのもいいな。
たくさん倒して持って帰って来たミステリーリザードの解体も終わった。ダンジョンの宝箱を開ける為に、表面に張り付いていた魔石は、かなり剥がしてしまったんだよね。
それと、ミステリーリザードを解体しているところをアベルに見つかってしまい、一番綺麗で魔石も残っているやつを、丸々買い取って持って行かれた。
アベルすら知らない魔物だったので、王都の冒険者ギルドに持って行ったのだと思う。
妖精の持ってきたダンジョンにいた魔物だったとしても、新種なら報告をしないといけないからな。はっきりするまで、素材の売却はしない方がいいかもしれないな。
しばらく間が開いたが、パッセロ商店にポーションを持って行った。これからは前と同じように週に一回のペースで納品していく予定だ。
ポーションをキューブ型にするのは、まだまだ上手くいかなくて試作品がどんどん増えている状態だ。自分だけじゃ使い切れないし、効果が安定しないから高ランクのダンジョンに行くアベルには渡せないんだよなぁ。
ジュストは採取メインで依頼を受けているので、あまり怪我もしないし回復魔法持ちだから、魔力回復用のポーションくらいしか使わない。
そうだ、ロベルト君にテスターになってもらおう!!
そうそう、三姉妹達のワンピースが見ているだけで寒いので、シランドルで買ってきた布と、サッカルイタチの毛皮で冬用のワンピースを作ってやった。
素人の裁縫なのでシンプルなワンピースだけど、三姉妹達は喜んでくれたので良かった。
三姉妹が可愛いので、変態馬が現れたら危険だと思い、森のパトロールをしていたら、うちのすぐ近くでばったりと遭遇した。
角がしっかり再生して、鼻息を荒くして向かって来たのでたたき折ってやった。
前の角は妖精のダンジョンで使っちゃったからね。聖属性素材回収完了!! 角が生えたら、また来たまえ!!
そして、うちの倉庫の地下室に開いた穴……じゃない、モールの集落に続く隠し通路、これはいつの間にか俺が通れるくらいの広さになっていた。その上、何故かダンジョンにいた光る苔達が、通路の壁に住み着いていた。
普通のダンジョンや暗い洞窟にも光る苔は生えているのだが、自分で動く光る苔は見た事ない気がする。しかも、こっちの言葉を多少理解していそうなんだよなぁ。君達ホントにただの苔? 変な生き物じゃないよね?
まぁ、モールの集落に行く通路が明るいから、気にしないことにしよう。
で、その通路通ってタルバがちょこちょこ遊びに来るのだが、タルバと一緒に冬の必需品を作った。
コタツ!! あの、コタツである。二つ作って一つはタルバが持って帰った。もう一つは俺の部屋に置いてある。
うちは人数が多いからね、少し大きめのコタツだ。おかげで部屋がとても狭い。それにコタツに入る為に靴を脱ぐので、俺の部屋は綺麗に掃除して土足も禁止にした。
部屋の中に大きなコタツがドーンと居座って狭いのだが、なんというか、コタツ最高。
コタツが出来てから、ずっとコタツで作業をしている。座椅子も欲しいな、作るか!?
いや、寒いから暖かい日にしよう。ああ、コタツ最高。
「グランー、暇ー? うわっ! またコタツに入ってる!!」
朝食の後片付けを終え、部屋で寛いでいると、アベルがノックと同時に俺の部屋に入ってきた。
コタツを作ってからは、ついコタツで出来る作業ばかりやるようになってしまっている。
うむ、コタツだから仕方ない。それに今日は、雪が降っているので仕方ないのだ。
「アベルも入る? 暖かいぞ」
「くっ! 俺は、釣られないぞ。それに入るとそこから動かなくなるからね。ってジュスト、君もコタツなの? ギルドの仕事は?」
「Dランクになったので、グランさんに教えてもらいながら細工と付与の勉強中です~」
勉強中と言いながら、ジュストの表情はかなりトロンとしている。コタツの魔力恐ろしい。
「勉強中って君、両手ともコタツの中に入れてるよね? それにラトも三姉妹も毛玉ちゃんもコタツなの!? 何なのこれ!? 新手の魅了効果か睡眠効果が付与してあるの? みんなだらけすぎだよ!?」
ジュスト以外にも、ラトと三姉妹と毛玉ちゃんもすっかりコタツの子だ。ラトは森の見回りをサボっていていいのだろうか。
三姉妹は朝食後すぐにコタツに入りに来て、キルシェに借りたという本を読みながら、そのままうとうとしている。コタツで寝ると風邪を引くぞ!!
ジュストはジュストで、細工の練習をすると言いつつ、手がかじかんだとか言ってコタツの中に手を入れて、顎をコタツの天板の上に載せてとても眠そうである。
かくいう俺も、コタツでずっとアクセサリーを作っているので、次回の五日市は商品がいっぱいになりそうだ。
「アベルも入る? 外は雪が降ってるし、温まって行けば?」
「くっ……、今日は寒いから仕方ないだけだからね。せっかく今日は暇だからグランとどっか遊びに行こうと思ったのに、こんなコタツなんかに……」
ブツブツと文句を言いながら、アベルも結局コタツに入ってしまった。
コタツの吸引力恐るべし。
妖精のダンジョンから帰った後、その話をアベルにすると非常に興味津々で、行けなかった事をとても残念がった。行けなかったものは仕方ないので、次に時間が取れたらユーラティア国内のダンジョンに行きたいと言っていた。
もしかしたらアベルは、ダンジョンに行くつもりで俺を呼びに来たのかもしれない。
そうだなぁ、ドリーが迎えに来るまでまだ時間ありそうだし、大規模なダンジョンにジュストを連れて行ってみるのもいいなぁ。
でも、今日は外は雪だし、コタツから動きたくないな。
「ねぇ、グランー、お腹すいた」
アベルは、俺をコタツから引っ張り出しに来たようだったのだが、すっかりコタツに居座って本を読んでいる。
そして、動く気がなさそう。
「動きたくないんだよなぁ……簡単なものでいい?」
「うん。収納の中に何か入ってないの?」
「あるよ。アベル、部屋の中で火を使いたいから、魔法で換気お願いしたい。それから後で消臭というか浄化も頼む」
部屋の中で火を使って料理をしたくないのだが、コタツの吸引力が強すぎる。
「了解ー。それで何作るの?」
「クラーケンの干物を焼くだけ」
野営用のコンロをコタツの上に出して、網を載せ、そこにオーバロの手前の漁村で買ったクラーケンの干物を載せて炙るだけ。
炙り終わったら、食べやすいサイズに手で裂いて食べるだけ。あ、チーズも載せる? 炙ったクラーケンの熱で、チーズが自然と溶けるのが美味しいんだよね。
あ、イッヒも焼くか。イッヒなら腹に溜まるしな。海苔と醤油があれば問題ないだろう。
超手抜きだけど、コタツから出たくないので仕方ない。
コタツの吸引力は恐ろしい。
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