第46話◆閑話:アンダーグラウンドな活動家達

 とある町の、とある居酒屋の個室に、私達は集まっていた。

 私達は、とある人物を追い、その近況を逐一報告し合い、情報を共有している組織である。





「先日、ある魔物の調査依頼で出向いた先で、ターゲット様を確認しました。最近行方が掴めなかった、相方様の方も一緒に確認しました」


「それはどこで!?」


 私の言葉に、その場に集まる同志たちが騒めき始めた。



「ソートレル子爵領のピエモンという小さな町の近くです。現在調査中ですがおそらくピエモンの町に滞在されているものかと」


「ソートレル子爵領といえば領都付近は穀倉地帯で、町から離れた平原も森も魔物が少なく、平和な場所だと聞いたことがあります。どうしてそんな場所に、高ランクの冒険者が滞在しているのでしょう」


「どうしてでしょう? ソートレル子爵領には、人の出入りが制限された未開の魔の森があると聞きます。もしや、そちらにアタックを掛けられているのでは?」


「たまたま、滞在していた可能性は?」


「調査中ですが、相方様の方は頻繁にピエモンで目撃されてるようです」


「そういえば先日、王都で夜遅くにターゲット様と相方様がお二人で一緒にいるのをお見掛けしましたわ」


「夜遅くに……」


「お二人で……」


「公式が私達を殺しに来てるわ」


「それでお二人はどちらへ」


「花街の方へ一緒に行かれましたわ」


「やはり男性ですからね。戦いの後は特に昂るといいますし、そういうことなのでしょう」


「そんな……、需要があればいつでも私がお相手するのに」


「何を言ってるのです、本人凸はご法度ですよ」


「ハッ! すみません、思わず取り乱してしまいました」


「我々の活動はあくまで、本人様には迷惑を掛けず、遠くからそっと見守る事です」


「他にご報告のある方は」


「はい、最近ターゲット様は王都ギルドでよくお見掛けしますが、お一人か、コードネーム"クロクマ"氏のパーティーに参加してるのはお見かけますが、相方様とご一緒のところはお見かけしません。先日、偶然ダンジョンの休憩エリアでご一緒になりまして、その際手作りのお弁当を召し上がられました。ギルドの仕事が終わるとどこかに転移して行かれて、王都内の宿に宿泊してないところを考えますと、相方様の所へ向かわれてるのではないかと」


「なんですって!?」


「はー……手作り弁当をダンジョンに持ち込むなんて……」


「しんどい」


「尊い」


「公式が殺しに来てますわ、早急に"会誌"に描き起こして補完しなければ」


「落ち着いてください、まだお二人が一緒に暮らしてると確定したわけではありません。もしかすると、ターゲット様はご実家に帰られてる可能性もあります」


「ターゲット様のご実家に潜入している者からの報告ですと、たまにご当主様に面会に来られるものの、ご実家の方に宿泊はしておられないようです」


「ではやはり……」


「その可能性は高いですね」


「相方様がピエモンで頻繁に目撃されているのなら、その周辺を拠点にされてる可能性が高いですね」


「では、ターゲット様はわざわざ遠くの町から、転移魔法で王都まで通われてるということですか……」


「相方様と一緒に暮らす為に」


「それだけ相方様に胃袋も心も掴まれているのですね」


「王都から遠く離れた小さな町でひっそり二人で……はー……尊すぎてしんどい」


「公式に殺される」


「場所が場所だけに、さりげなく見に行ける場所ではないですね」


「えぇ、みなで押し掛けては迷惑がかかるやもしれません」


「それでは、ソートレル子爵領のソーリスの冒険者ギルドが拠点の私が、引き続きピエモンを調査してきます」


「よろしくお願いします、しかしあくまで公式様に迷惑を掛けないように」


「はい、それは重々心得てます」


「他にご報告のある方はいらっしゃいますか? いらっしゃらなければ、報告は終わりにして、推しについて語らう時間に入りましょう」





 とある町のとある居酒屋。これは、とある冒険者の殿方を"推し"として見守る女性達の集まる女子会。


 本人様に気付かれることなく、迷惑を掛けないように、ただひたすら見守り、情報を共有し、妄想するだけの活動家達の集まり。


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