第32話◆リベンジ五日市

「え? 今日もついてくるの? お客さん来るかわかんない露店に、座ってるだけだよ?」

「田舎のバザーって、掘り出し物ありそうじゃん?」

 確かに前回ショウユとかササ酒とかソロバン見つけたけど。


 昨日のポーション納品に引き続き、今日の五日市にもアベルがついて来ると言うので困惑している。


 この世界の暦は、一年が三百六十日で十二ヵ月、一月が三十日、一週間が六日だ。ちなみに一日は前世と同じ二十四時間である。


一月 火の月

二月 風の月

三月 聖の月

四月 空の月

五月 光の月

六月 冥の月

七月 水の月

八月 地の月

九月 沌の月

十月 時の月

十一月 闇の月

十二月 天の月


 という風に月には名前がついていて、曜日は竜の日、獣の日、鳥の日、虫の日、魚の日、神の日という順に繰り返される。

 ちなみに神の日はその名の通り、教会でミサが執り行われる。


 今日は五月十五日つまり光の月の三ノ鳥の日である。

 パッセロ商店にポーションを納品しているのが毎週獣の日なので、三週目が、パッセロ商店にポーションを納品した翌日が五日市の日になって、ちょっと忙しいスケジュールになったのだ。


 一年も一ヵ月も一週間も六の倍数なので、非常に計算しやすい。

 五年に一回ほど閏年があり、七月が三十六日になりこの六日間は時織日ときおりのひと呼ばれ、世界各地で大きな祭が催される。


 そんなわけで、今日もアベルの転移魔法で、楽してピエモンに移動して五日市の会場に到着した。

 ホント、転移魔法便利すぎるな!! チート魔法ずるい!!


 前回の失敗とキルシェのアドバイスを生かして、今回は値段と性能を書いた値札をちゃんと用意した。

 商品は魔力付与した、アクセサリーや小物が中心だ。




「小物っていうか、もうこれ立派な魔道具だよね?」

 露店の準備をしていると、アベルが目を細めてこちらを睨んでいるが、気にしない。


「延々と水がでる水筒って、しかも中の水の温度が冷たいままって、明らかに魔道具だよね?」

「水筒に水の魔石付けて、容器に断熱効果付けただけだし。魔石の魔力切れたら魔石取り換えるか、補充するかしないと水でなくなるし? ホントは延々お酒の出るグラスとか作りたかったけど無理だった」

「そんなグラスあってたまるか!! で、こっちの髪の毛の色が変わる髪留めとか、これもう完全に隠密用の装備だよね?」

「おしゃれな女性に需要あるかなーって? あ、見て見てこれおっぱいがでっかくみえるブローチだよ、超力作。男なら女装にも使えるよ?」

「何を思ってそんな物作ったの!?」

「悩める女性の為?」

「そのブローチ、後で俺にも作って」

「え? アベル女装すんの!?!?」

「違うよ!! それ絶対に王都で、貴族相手に売るとガッツリ金取れそうだから、貴族向けの貴金属店に売り込む為だよ!!」

「えー、貴族とかめんどくさいから、庶民向けに細々作るよ」

「ダメ! そんな、世の中の悩める貴婦人方が食いつきそうなアクセサリー、すぐに商人に目付けられるよ!! 変な商人に捕まる前に、信用できる大手商会を紹介するからね? こんな小さいアクセサリーに、体型変えて見えるくらいの幻影効果付与できる職人限られてるんだからね? 直接やりとりめんどくさかったら、俺が間にはいるからね?」

「はーい」

「あと、目新しい物作った時はちゃんと商業ギルド登録してる? どうせグランの事だからめんどくさいって、先送りしてるでしょ?」

「う……」


 さすが付き合い長いだけあって鋭い。


「もー、変な魔道具もいっぱい作ってるでしょ?、魔道具ギルドにも行かないといけなさそうだし、今度王都まで転移魔法で連れて行くから、その時商業ギルドにもいこうね?」

「だって、ピエモンに魔道具ギルドないんだもん」

「返事は?」

 言い訳はスルーされた。

 というか変なって失礼だな、変なって!

「はい。王都でちゃんと登録するので、連れて行ってください」



 とまぁアベルに小言を言われもしたが、露店の準備も終わって客が来るのを待つのみになった。今回は自力で売り捌けるといいな。



 前回は閑古鳥が鳴いて暇を持て余していたので、今回もそうなっていいようにと、暇つぶし用に刺繍糸を用意して来た。

 店番をしながら暇そうなら、ミサンガを作るつもりだ。


 刺繍糸は普通の刺繍糸の他に、水蜘蛛の蜘蛛糸から作られた刺繍糸も使う。

 魔物素材はそのままでも軽い属性耐性があるので、お守り替わりにアクセサリーや小物に使うこともよくあり、手に入り易い魔物素材は人々の生活にも浸透している。

 もちろん魔物素材なので魔力を付与する事もできる。とは言え、ミサンガに少しだけ水蜘蛛の蜘蛛糸を織り込む程度だとお守り程度の気休め効果しかつけれない。


「…ラン。グラン!」

「あ?」

 ミサンガを作るのに熱中してしまい、アベルが呼んでいる事に気が付かなかった。

「グラン、お客さんだよ」

「え? あ? ごめん気付かなかった。どうもいらっしゃいませ」

 アベルに言われて前を見ると、女性三人組がうちの露店を覗き込んでいた。


「この髪の毛の色の変わる髪留めって、どんな色になるんですか?」

 三人組のうちの一人に尋ねられた。

「金髪になるよ? 試着してみる? 他の色が良かったら、ちょっと時間もらえれば変更もできるよ」


 この世界は、前世の世界にあったような、お手軽なヘアケア用品が流通してない。あるかもしれないが平民の間では流通してないので、平民はくすんだ髪色が多い。その為、金髪や銀髪のようなキラキラした髪色が見た目麗しいと思われる事が多い。


 ちなみに、前世と比べてこの世界の髪色はかなり多様である。かく言う俺もくすんではいるが、前世の世界ではありえないような赤毛だ。隣にいるアベルはキラッキラの銀髪なので、顔だけではなく頭髪までイケメン盛りである。


 そーだよ! アベルみたいなキラキラの銀髪は、それだけで雰囲気イケメン認定されるんだよ! くそが! 俺なんか錆びた鉄みたいな色だよ!! イケメン爆発しろ!!


「着けてみてもいいですか?」

「どうぞどうぞ」

 枯れ葉色の髪の毛の女性が髪留めを付けると、キラキラのブロンドに髪の毛の色が変わったので、手鏡を手渡した。


「すごい! ホントに金髪になった! これで大銀貨二枚ですよね?」

「うん、ちょっと高くてごめんね? ずっと使っても二、三年魔石切れないと思うけど、魔力減ってきて魔石くすんで来たら、魔石に魔力補充するとまた使えるようになるよ。魔石壊れちゃっても、本体壊れない限り魔石交換したら、また使えるようになるからその時は細工師に頼んで魔石交換するといいよ。魔石は水の魔石だから覚えておいてね。あと魔力が使えない場所では効果出ないし、魔力吸収する物が近くにあると魔石の消耗激しいから気を付けね」

 アクセサリーとは言え、魔力で効果が出る物なので注意事項はちゃんと使えておかなければいけない。

「わかりました。けっこう長持ちするんですね! それで大銀貨二枚なら買います!」

「色は金でいいかな?」

「はい! じゃあ大銀貨二枚ですね!」

「ありがとう、じゃあこれはおまけ。手がすべすべになる薬。そのうちパッセロ商店に置いてもらうつもりだから、使ってみて良かったらよろしく」

 さりげなく、試作のハンドクリームを渡して宣伝をしておく。

「ありがとうございます!!」

 喜んでもらえて何より。


「私もこっちの髪の毛の色変わる髪留め欲しいです」

 今度は一緒にいた灰色の髪の毛の女性だ。


「これもこのままだと彼女と同じ金だけど、色変えるかい?」

「ストロベリーブロンドとかってできます?」

「出来ると思うよ、ちょっと待ってね」

 髪飾りの裏側に彫りこんである、色指定の術式の部分を魔力を通しながら、指で擦って一度術式を消す。ポーチから装飾用の針を取り出して、消した部分に魔力を流しながら新たな色指定を彫り込んだ。


「よし、できた。ちょっと着けてみてもらえるかな?」

「え、もう出来たんですか?」

 灰色の髪の彼女が髪飾りを着けると、彼女の髪の毛の色がふわっとしたピンク味掛かったブロンドヘアに変わった。

「わあああああああーすごいー別人みたい!! これも大銀貨二枚でいいんですか?」

「はい、さっきの彼女と同じおまけもつけるよ。これもさっきの彼女のと同じでそのままでも二、三年使えるから、魔石の魔力減ってきたら注ぎ足すか新しい水の魔石と交換すれば引き続き使えるよ。魔力が使えない場所では使えないのと、魔力を吸収する物の近くで使うのはできるだけ避けてね」

 しつこいようだが、注意事項は一人一人ちゃんと伝えるのが、お互いの為だと思っているので、ストロベリーブロンドの髪色になった彼女にもブロンドヘアの彼女と同じ説明をする。

「はーい! ありがとうございますー!!」

 髪の毛がピンクブロンドに変わった彼女から大銀貨二枚を受け取った。


 女性三人組はキャアキャアとはしゃぎながら去っていった。

 去り際に髪留めを買わなかった銀髪の女性が、チラリとこちらを見た気がするけど、多分気のせいだろう。


「ねえ? 前から思ってたことだけど、どうやってあの大きさの銀製品に、あれだけの付与つけてるの?」

「普通に付与してるだけだけど?」

「いやいや、グランの銀製品鑑定したら"シルバー?"って疑問形出て来るんだけど? ていうか魔法銀であのサイズに、髪色だけとは言え、動きのある物の見た目かえるほどの付与すると、土台が耐えれないと思うんだけど?」

 いつの間に鑑定してたんだよ!


 確かにアベルの言う通り、複雑な付与をしようと思うと、それに比例して土台となる物の魔力の容量も必要となる。

 俺がアクセサリーによくつかう魔法銀は、手に入り易く価格も安いが魔力の容量はそこまで多くない。故に、複雑な付与をしようと思うとサイズを大きくするか、魔力の容量の多い素材を使わなければいけなくなる。


「さっきの髪飾りなら魔法銀に少しだけ魔法金を混ぜてて、裏側に液状にしたミスリルがちょっとだけ塗ってあるから、普通の魔法銀製品より、少し複雑な付与できるんだよ」

「は? ミスリル?」

「ミスリルって言っても、溶かして固める前の状態のを一滴程度だよ。表に塗っちゃうと斑になるくらいの少量だから裏に塗ってある。分解スキルで鉱石を分解すると時々出て来る、すっごい少量のミスリルの鉱石の破片とか、うっかり欠けたミスリル製品の破片とかの再利用? それだけで魔法銀製品の補強になるから、コスパもいいし便利なんだよね」


 ミスリル自体は結構高価な物だけど、ほんの一滴程度で魔法銀の強化に使えるから、それだけならそこまでコストはかからない。使い古した装備や魔道具の破片、他の鉱物に混ざっていたせいで純度の低いミスリルの再利用にはちょうどいいのだ。

 先日アベルにガラクタだのゴミだの言われた、使わない装備の再利用だ。無駄に貯め込んでるわけじゃない、ちゃんとリサイクルして使ってるんだよ!


 "分解"のスキルがあるおかげで、再利用や分離が厳しい物に含まれてるミスリルも取り出して再利用できるので、ガラクタやくず鉱石を安く買い取って分解して、コツコツと貯めていた物だ。


 その後もポツポツとお客さんが来て、順調に商品が売れていった。

 時々手慰みのミサンガ作りに集中してしまい、お客さんが来たことに気付かず、アベルに声を掛けられて気付くというのを繰り返していた。

 作ってるうちに慣れてきて、約一時間で一つのペースで作れている。


「アベル暇じゃない?」

「とくには? ていうかグランが手芸に集中しすぎて、俺が店番になってる」

「うん、助かってる。おなか空いたらサンドイッチあるから食べてくれ」

 マジックバッグから取り出す振りをしながら、収納空間からお昼ご飯用に作って来たサンドイッチを取り出してアベルに渡しておく。

「グランは?」

「もうちょっとでこれ出来るから、これが出来たらかな」

「ふーん、ミサンガは何か付与するの?」

「うん、水蜘蛛の糸使ってるから、簡単な水属性の付与ならだいたいできるよ。お客さんの希望聞いてから、その場で付与しようかなって思ってる。特に希望なければ、防毒効果つけるつもりだよ。ここの模様がキーになってるんだ。防毒っていっても、虫とか弱い毒ヘビとか、軽い食中毒くらいにしか効果ないけど」

「またそういう……」

「うん?」

「いや、何でもない」

 アベルがふいっと目を逸らしてため息をついて、サンドイッチを食べ始めたので、俺もミサンガを作る作業に戻った。


 三本目のミサンガが出来上がったところで、俺も昼飯にする事にした。

 午前中だけで色々売れて商品も残り少なくなって来た。前回はキルシェに手伝って貰うまではさっぱりだったので、今回は前回から大進歩だ。


「ところでグラン。防毒付与って土台になるアクセサリーの素材に、魔力容量大きい物使ったらどれくらいの効果いける?」

「うーん、あんま高級な素材でやったことないから何とも言えないなぁ……。自分で使ってるミスリル製のピアスに状態異常耐性つけてるけど、それだとコカトリスの毒と石化くらいならレジストできるかな? 今ならユニコーンの角があるから、それを使ったらもっと状態異常耐性全般に高い物が作れそうかも?」

「いや、コカトリスの毒と石化を防げるって相当だよね? あの石化がっつり喰らうと、神官レベルの治癒魔法かハイポーションでも品質のいい物じゃないと、一回で解除できないよね?」

「そお? ごちゃごちゃ色々術式書かないといけなかったから、ちょっと作るのめんどくさかったけど」

「うん、わかった、グランだしそうだよね。前に装備作ってくれるって話してたやつさ、そのユニコーンの角使って状態異常耐性付与したアクセサリー二つほど作って欲しい。できれば男性用と女性用ペアで。もし追加で欲しい素材あったら、融通できる範囲で融通するから、出来る限り小型で効果高くしてほしい。もちろん相応の報酬も払うし、約束通りシランドルのオーバロって町まで行ってこよう」

 マジか! オーバロ! 米! 醤油! 酒! ついでに味噌も見つけてきて欲しい。

 よぉし! がんばっちゃうぞー!

「やる! めっちゃ本気出す! 素材も出来る限り良い物を使って作ろう!」

「お、おう。やり過ぎが心配だけど、やり過ぎて欲しい気もする」

「ん? 何か言った?」

「何でもないよ」


「……あの」

 アベルと話していると、露店に来た女性に声を掛けられた。

「あれ? さっきの?」

 午前中に来た三人組の女性のうちの一人、髪飾りを買わなかった銀髪の女性が一人で、うちの露店の前に立っていた。


「あの……」

 その女性は少しそわそわした感じで、ちらちらと露店を見て口籠った。


「何か試着してみますか?」

 迷っているようなのでこちらから声を掛けてみる。

「えっと……このブローチ……見せてください……!!」


 俯きながら彼女が指さしたのは、バストアップ効果のあるブローチだった。

 あー……うん、ごめん。確かにこんなもの売ってるのが、男だと声かけ辛いわな。というかノリで作った物だけど、よく考えたらセクハラ装備だよね?

「グランって女心に疎すぎるよね?」

 アベルが呆れた顔でこちらをチラ見して、パチンと指を鳴らした。

「彼女に認識阻害の魔法を掛けたから、これで俺達と彼女以外からは、意識して見ないと彼女の事は記憶に残らないよ」

 くそぉ、認識阻害の魔法はありがたいけど、高性能なお気遣いイケメンに嫉妬するわ。

 次回からは、認識阻害の魔道具も用意しておこう。


「あ、ありがとうございます!」

「ごめん、配慮足りなかったね、ありがとうアベル。じゃあ彼女、試着してみる?」

「は、はい!」


 彼女がブローチを着けると、やや控えめだった胸がボリュームアップした。

「わわっ」

 マジックバッグから姿見を取り出して彼女の方へ向けると、鏡に映った自分の姿を目にした彼女が感嘆の声を上げた。

「く……ください!!! 買います!!!!」

「あ、ありがとう」

 さっきまでのそわそわはどこに行ったのか、鬼気迫る勢いでお買い上げを宣言してくれた。

「大銀貨四枚ですよね? それでこの効果なら安い物だわ」

「これは大きめの魔石複数使ってるから、ずっと使ってても四、五年は効果持つと思うよ。ただし魔力吸収するような場所に行くと魔石の魔力の減りも速くなるし、魔力が封じられる場所では効果出ないから気を付けてね。魔石は水の魔石だよ」

「はい! ありがとうございます!」

「あと、ちょっと俺の配慮が足りなかったお詫びと言ったら何だけど、試作品でよければコレをオマケするよ」

 マジックバッグから桃色の液体の入った小瓶を取り出した。小瓶の蓋の内側には小さな刷毛が取り付けてある。

「何ですかそれは?」

「爪がピカピカになる魔法の液体なんだけどどうかな?」

「ほ、欲しいです!! どうやって使うんですか?」

「使い方を教えるから、ちょっと手に触れていいかな?」

「えっ!? は、はい」


 了承を得て彼女の手を取って、マジックバッグから取り出した、植物から作った爪を磨く為の柔らかいヤスリで、彼女の爪を丁寧に磨いた。

 そしてその上に、爪がピカピカになる魔法の液体こと"マニキュア"を蓋に着けてある刷毛で丁寧に爪で塗っていく。


「はい、できた」

 元々形の良かった彼女の爪だが、磨いて整えてさらに薄い桃色のマニキュアを塗ったおかげで、爪がキラキラとしている。

「わあああああああああ」

「気に入って貰えたかな? 乾いたら水に濡れてもとれなくなるから、手洗ったり、水仕事しても平気だよ。剥がしたい時はこっちの薬を脱脂綿に含ませて拭き取ると剥がせるよ。ずっと塗ったままだと少しずつ禿げてくるから、塗りなおす時は前のを剥がして塗りなおしてね」

 マニキュアと一緒に、マニキュアを剥がす為の液体の入った小瓶と爪を磨く為のヤスリを渡した。

「はい!!」

「爪を磨く為のヤスリはやりすぎると爪が薄くなるから気を付けて」

「はーい! ありがとうございます!!」

「次回の五日市もたぶんいるから、良かったらまた来てね? ブローチとか爪の薬の使い心地教えてくれるだけでもいいよ」

「はい! また来ますね! ありがとうございました!!」

 最後に、彼女の友達にも渡したハンドクリームを彼女にも渡して、アベルの掛けた認識阻害の魔法を解いて貰って、銀髪の彼女が大きくなったおっぱいを、揺らしながら帰って行くのを見送った。


「うむ、いい子だった」

「巨乳好きすぎるだろ」

「俺はただ、女の子が(物理的に)胸を張って生きていける手助けがしたいだけだよ」

「ところでさ、さっきの爪に塗る液体は?」

「ん? 森で採って来た樹液をちょっと弄って、赤い花の花びらで染めてみたんだ」

「弄って?」

「樹液のままだと塗り難いから少し薄めるついでに、爪に優しい成分を入れたんだよ。爪に塗るポーションだと思って貰えれば」

「なるほど? 王都連れていくから、これも商業ギルドで商品として登録しておこうね?」

「わ、わかってるよ!! ていうか貴族の間とかでそういうのないの? 爪に模様描いたりとか、小さな色付ガラス付けたりとか?」

「貴族に知り合いはいるけど、爪を磨いて整える事はあっても、薬塗ったり、模様描いたりって話は聞いたことないな。だからその話帰ったら詳しく聞かせて貰おうか?」


 うわ、藪蛇だった。

 アベルがすごくいい笑顔でこちらを見ていた。

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