第23話◆ドラゴンロールキャベツ
今日は朝食を終えたらピエモンの町へ買い出しへ。
予定では来週のポーション納品の時に買い出しもしてくるつもりだったが、アベルがグリーンドレイクとかいう低級とはいえドラゴンを捕って来たので、そいつを解体した時に出る血液を、詰めておく瓶を買いにパッセロ商店に行く事にした。
竜種系の魔物は血液も含め、捨てる部分が無いほど、全ての部位が素材になる。ついでに料理を作り置きして、収納の中に突っ込んでおけるように大きめの鍋もいくつか買っておこう。
そうだアベルがいるうちに、卵をまとめて買っておいて、浄化魔法かけてもらっておこう。魔道具でちまちま浄化するのめんどくさいんだよね。
ちなみに昨日解体した、ロック鳥は可食部分を貰って、羽を幾分か買い取らせて貰い、残りはアベルに返却した。
そのアベルはと言えば、所属が王都ロンブスブルクの冒険者ギルドなので、うちから転移魔法で王都のギルドまで通って仕事をするつもりらしい。
転移魔法と聞けば便利そうにも聞こえるが、魔力の消費が激しく、距離に比例して更に消費が増えるので、長距離を頻繁に移動できる者はそうそういない。
……なのだが、ありあまる魔力でゴリ押しして、うちみたいな田舎と王都を往復するというチート野郎がアベルだ。
俺の飯が食いたいだけで、それだけの事をやってのけるのだから、相当な物好きである。
移動のせいで戦闘中魔力が枯渇されても困るので、魔力回復のポーションをいくつか渡しといた。ついでに、昼は帰って来れないらしいので、弁当用にサンドイッチも渡しといた。
ピエモンの町へ到着すると開店と同時にパッセロ商店に駆け込んで、瓶と鍋を買い占めてついでに手土産――と言っても捕って来たのはアベルだが、ロック鳥の肉をお裾分けして、卵を買いに市場へ。
今日はグリーンドレイクを解体する予定なので、買い出しは手早く済ませて帰るつもりだ。
卵は一つの店で買い占めると、店にも他の客にも迷惑になりかねないので、何ヶ所か回って買うことにした。
おかげで、いろんな種類の卵を買う事になったので、食べ比べてみるのもありかもしれない。
そうだ、ブラックバッファロー解体したら、胃袋を使ってチーズが作れるからミルクも多めに買って帰ろう。
チーズと言ったらピザだな! ピザ生地用に小麦粉追加で買っとくか。ついでに、パンやパスタの作り置きもしたいから多めに……どんどん買う物が増えてるな。
結局予定よりかなり多く買い物をしてしまった。
買い出しが終わったら、文字通り身体強化スキルでダッシュ帰宅。
さて、グリーンドレイクの解体に手をつけるかー。
グリーンドレイクが竜種のわりに小型だと言っても、あくまで竜種の話であってデカイもんはデカイ。
5メートルもあると丸ごと吊るすのは無理なので、部位ごとに切り分けてから血抜きの作業をしなければいけない。
竜種の血液は高級なポーション素材になるのでブラッディダガーを使うわけにはいかないのだ。
部位ごとに分けて血抜きをして、桶に血液を溜めて、溜まった血液は先ほど買って来た瓶に小分けして、鮮度が落ちる前に収納スキルで回収してしまう。同じく鮮度が落ちる前に内臓も抜き取り収納へ。内臓もまた高価なポーション素材である。
鱗は武器や防具、アクセサリーの素材に角や爪も武器防具素材の他にポーションの素材にもなるので、解体後速やかに収納空間へポイポイ。
肉はもちろん食用になるし非常に美味である。今夜の夕食確定だ。
もちろん骨も武器、防具、アクセサリー、ポーション素材と使い道が多い。そして目玉も魔術素材として需要が高い。そして、竜種なので魔石も大きい。
捨てるとこが全くないのが竜種の素材だ。
鮮度が重要、グリーンドレイク解体タイムアタックは昼時を過ぎたくらいになんとか終了した。
連日の魔物解体作業で、解体のスキルがもりもり上がってそうな気がする。
「ステータス・オープン」
名前:グラン
性別:男
年齢:18
職業:勇者
Lv:104
HP:943/943
MP:15550/15550
ST:834/834
攻撃:1148
防御:836
魔力:12460
魔力抵抗:2183
機動力:628
器用さ:18740
運:216
【ギフト/スキル】
▼器用貧乏
刀剣96/槍45/体術68/弓53/投擲39/盾68/身体強化86/隠密35/魔術35
▼クリエイトロード
採取68/耕作12/料理62/薬調合75/鍛冶38/細工60/木工36/裁縫35/調教13
分解62/合成56/付与37/強化27/美術15/魔道具作成45
▼エクスプローラー
検索(MAX)/解体76/探索83/察知92/鑑定15/収納95/取引30/交渉43
▼転生開花
【称号】
オールラウンダー
気になって久々に確認してみた。
こっちに引っ越してから戦闘らしい戦闘はほとんどしてないので、レベルや戦闘関連のスキルはほとんど成長してないが、やはり予想していた通り"解体"が結構あがっている。だいたい、昨日のロック鳥と今日のグリーンドレイクのせいな気もする。
あと、家を改築しまくったせいで"木工"が地味に上がっていた。"薬調合"は低級のポーションばっかり作ってるので全く伸びてないな!
さて、グリーンドレイクの解体も終わったし、昼飯の後はブラックバッファローも解体しておくか。あれは数があるから、まとめてやるのはあきらめて一日一、二体ずつやっていこう。
午後からは、ブラックバッファローを解体しつつ、シャモアに貰ったハーブ類を乾燥させて料理に使えるようにしておいたり、昨日解体したロック鳥のガラを煮込んでスープを作ったりした。本格的なスープにするつもりはなかったので、長時間手間掛けたりはしてないが、今後の料理に活用する用に鍋ごと収納空間に入れておいた。
気付けば夕方になっていたのでそろそろ夕飯の支度をしなければ。
今日もあのシャモア来るのかな……まぁ、鍋の予備も増やしたし多めに作って、余ったら収納空間の中に入れておけばいいか。
さて、今日の夕飯のメニューは……せっかくなのでグリーンドレイクの肉を使う事にしようか。
ステーキにするのも悪くないのだが、昨日せっかくベーコンを作ったわけだし、そこでそのベーコンも活用してロールキャベツにしよう。
少し勿体ない気もするけど、ここは贅沢にグリーンドレイクの肉をひき肉にして使う。
竜種の肉は赤身が多く、牛肉を濃厚にしたような味の物が多い。味の濃いグリーンドレイクの肉だけではしつこくなりすぎそうなので、グレートボアの肉を三割程度混ぜて合い挽きにする。
よく捏ねた合い挽肉に、半透明になるまで炒めたタマネギのみじん切りと、卵とパン粉を加えてさらによく捏ねる。それを手のひらより少し小さいくらいのサイズに分けて丸めて、軽く湯がいて柔らかくしたキャベツの葉でくるんで、ベーコンを帯にして留める。
スープは野菜ベースとトマトスープと迷ったが、今日は野菜ベースのスープにすることにした。タマネギやキャベツの切りくずを煮込んで作った野菜ベースのスープで、ロールキャベツを煮込んで塩と胡椒で味を整えて完成。
ロールキャベツの帯のベーコンと中身の肉から、いい感じに旨味がスープに溶けだして、ちょうどいい具合だ。
ロールキャベツだけでは、食い足りないと言われそうなのでもう一品追加。
同じくグリーンドレイクとグレートボアの合い挽き肉で作ったメンチカツだ。揚げ物なら腹に溜まって満足するだろうと、メンチカツも揚げておいた。
うーん、肉ばっかりで野菜がないから、ジュレでも作っておこう。
アベルは生野菜があまり好きではないっぽいが、ちょっと手を加えると物珍しさからか素直に食べるので、ジュレなら野菜でも素直に食べてくれるだろう。
先ほどロールキャベツにも使った野菜ベースのスープに、食用のスライムパウダーを加えて溶かしたら、冷蔵庫に入れて冷やして固めてジュレにする。
ちなみに食用のスライムパウダーは、前世で言うとこのゼラチンの替わりだ。
何でも分解消化して食べるスライムだが、その食べた物でスライムの特性が決まる。
毒の無い植物や綺麗な水をばかりを摂取したスライムは、毒や臭みもなく食用になる為、各地にスライムの養殖場があり、わりとメジャーな食材だ。
トマトは一口大に、キャベツは太めの千切りに、ひよこ豆はさっと湯がいて、その上に、先ほどのスープにスライムパウダーを入れ冷やして固めてゼリー状にした物を、崩しながらかける。
最後にエリヤ油という風味のいい植物性の油と、酢とレモンと塩で作ったソースをかけたら完成。
そうこうしてるうちに、アベルが帰って来て、食事時を見計らったのかシャモアもいつものように手土産を持って現れたので、昨日と同じように庭にテーブルを出しての夕食になった。
今のとこ天候に恵まれてるからいいけど、雨が降ると外で食事できないから東屋かオープンテラスを作るべきなのだろうか……。
うーん、食堂の壁をぶち抜いて庭に出入りできるようにしてそこにオープンテラスを作るのもありっちゃありだなぁ。
また、やることが増えた気がする。スローライフって意外とやる事多いな!!!
「ドレイクの肉ってもっとしつこい味のイメージあったけど、これはずいぶん口当たりいいね」
グリーンドレイクと、グレートボアの合い挽き肉で作ったロールキャベツを、口に運びながらアベルが言った。
「竜肉だけだとちょっと味がしつこくなるから、グレートボアの肉と混ぜて挽いてあるんだ。こっちのメンチカツも同じ合い挽き肉だ」
「メンチカツは、余ったら明日の昼飯用に包んどいてもらいたいな。大きさのわりに食べ応えあるから弁当にちょうどいいや」
「了解、それじゃあメンチカツサンドにしとこうか? その方が手づかみで食べれるからいいだろう」
「おっ、そうしてくれ。そういや今の仕事区切り付いたら、グランが言ってたシランドルの東の方行ってみようかと思ってる」
「マジで!?」
アベルの発言でテンションが爆上がりする。
「国境の町までは転移魔法で飛べるけど、そこから馬車になるから、東の端まで行くにはすこし時間かかるかもしれないね」
転移魔法を使うには、一度転移したい場所に行ってその場所にマーキングしておかないといけないので、転移魔法は行った事のある場所にしか飛べないのだ。
転移のマーキングは基本的にどこでもできるが、転移直後の安全確保の為、町近くなどの魔物の少ない場所にマーキングすることが多いらしい。
また、城や砦、神殿などの重要施設や身分の高い者の住居等は、転移魔法妨害の結界が張られてる為、転移魔法の使用に制限がかかる場所もある。
しかし、転移魔法が実用レベルで使える者は極少ない為そういった結界がある場所は珍しく、ほとんどの場所はマーキングさえしていれば転移可能である。
転移魔法は遠距離の移動ほど魔力の消費が激しく、マーキングがあっても遠すぎる場所には転移出来ないので、そういった場合は途中に中継地点にもマーキングをする必要がある。
「シランドルの東の方は行った事ないんだよねぇ。結構広い国だから東の端まで行くとなると乗合馬車だと一ヵ月近くかかるかもしれないなぁ……まぁ行った事ない場所だから、転移魔法の行先増やしに行くと思えばいいか」
「もちろんちゃんと対価は払うよ」
「対価ねぇ……飯と住居の保障と……あー、何かいい素材採れたら装備でも作って貰おうかなぁ?」
「んんー趣味でやってる程度だからたいした物作れないぞ?」
「趣味程度ねぇ……複数付与も出来るんだよね?」
「まぁ素材にもよるけど、高ランクのダンジョンで出るような物は作れないぞ?」
「めぼしい素材見つけるとこからだけどね。とりあえず近いうちにシランドルの方には行ってみる事にするよ」
「ありがとう助かるよ」
「俺も東の方の食材気になるしな!」
よっし!!! 他力本願だが米が一歩近づいたぞ!!!
その後はいつものように酒を持ち出して来て、二人と一匹の夕食の時間は過ぎていった。
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