第5話
「グレンデル、寮は共同生活の場です。そのような格好で共同スペースをうろつくのではありません」
グレンデル、と呼ばれた女子生徒は真っ赤な髪を振り乱して叫ぶ。
「寮生は俺一人だろうが!」
「残念ながら今日から二人です。ツナ姫様、どうぞ中へ」
「マグロ・ツナです。よろしくお願いします」
精一杯の笑みを浮かべて、挨拶をする。
挨拶は大事だと母がよく言っていた。
(めちゃくちゃ怖いけど!)
グレンデルさんはどのような理屈か真っ赤な髪を逆立てている。
見事なまでの三白眼で、瞳孔は縦に細くなりシーサーペントのようだ。
「オイてめえ、マグロだかツナだか知らねえが」
「マグロだし、ツナだよ……」
「あ? なめてんのか? 殺すぞ?」
(理不尽だよー!)
こんな人に海底では会ったことがない。
その首筋には、髪の毛と同じ、真っ赤な鱗が並んでいるのが見えた。
「てめえが来たせいで、俺が迷惑かけたみたいになってんだろうが」
「そ、そんなことないよ。迷惑なんてこれっぽっちも!」
セバス先生に助けを求めようとしたら、既にいなくなっている。薄情者!
「とりあえずお部屋に入りたいんだけど、いいかな?」
「あ? それもそうだな……ついてこいよ」
(あれ? 意外に話が通じる?)
また怒鳴られるかと思っていたのだが、拍子抜けだ。
拍子抜けで一向にかまわないんだけどね。
「個室は二階に三部屋、一階に二部屋あるが……」
「あるが?」
板張りの廊下は、私たちが歩くたびにキシキシ音を立てる。
「二階は俺が一部屋使ってるし、一番奥の部屋は何故か開かない。だからおめえの部屋は三つから選べ」
そんな言葉をもらったのでありがたく一階の部屋を頂戴した。
予想通り埃っぽく、掃除がまず必要だ。
「ねえー、グレンデルさーん」
「なんだよ、殺すぞ」
「呼んだだけで殺さないでよ、掃除道具ってある?」
グレンデルさんはふむ、と思案顔になりこう言った。
「掃除の前に寮長を決める。おもてに出ろ」
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