第2話

「もし、そこの青い髪のお嬢さん」


 クラゲが舞うようなふわり、とした声をかけられた。

 顔を上げれば、奇妙な黒い帽子を片手に笑みを浮かべる人物がすぐそばにいることに気が付く。


「わっ」

「おっと、驚かせてしまって済まない。私はミシェル」


 怪しいものではないよ、と白手袋に包まれた両手をひらひらさせるが、それは怪しさを助長させるのではないだろうか。


「この近くに町があり、そこには広場があるはずなんだが、案内してくれないかな?」


 広場は、迎えの場所だ。

 私も行くのは初めてだが、地図がある。


「私もちょうど広場に向かっているので、大丈夫です」

「そうなのかい? これは素晴らしい運命の導きだね」


 とりとめもないおしゃべり、というかミシェルが一方的にまくしたてるのを聞き流していたら、すんなりと目的地に着いてしまった。

 広場にはいくつかの屋台が並び、陸生の様々な魔族が行きかっている。

 迎えらしき人はいないようだった。


「おお、ここはなかなかいい『ステージ』じゃないか」

「すてーじ?」

「ああ、すまない。君たちの言葉ではステージというのだったかな」

「ああ、それならわかります。ここも詩人や旅芸人が技を披露できそう」

「そうだね、よし、さっそく僕も歌うとしよう」

「え、ミシェルさんは詩人だったの?」


 ミシェルは軽い足取りで振り返るとこう言った。


「バカ言っちゃいけない。私は『アイドル』」

「魔王よりもかっこいい職業さ」



『Michele is coming』


さあさ どなたも お立合い

ここに 歌うは きらめく

スーパースターの ミシェルさ

顔上げなきゃ もったいないぜ



キミは 光 見えてる?

キミと キミと キミと そうキミも

薄暗い 魔界の空に 光ないと いうなら

ボクが ここで 輝くのさ



Ah Michele is coming

退屈は 今日までさ

ボクの光 届けに来たぜ

キミの中にも 輝く心

必ずあるから 探しに行こう


Ah Michele is coming

臆病は ここまでさ

ボクの瞳 覗いてごらん

キミの中に 輝く夢が

映ってるから つかみに行こう

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