セッション2 逃げる風と負わされた影 前編
お、来たか。
え?
どこだここ
俺の中だよ。
俺の中ってどういうことだよ。
だから、ぼくちんは今、夢を見てるんだって。
ぼくちんって、お前、頭の中にいるやつか!
いや、そうだけど。なんか名前くらい付けてくれてもいいよな。
夢なのかこれ。けっこうはっきり意識あるけど。
夢だよ。まあ、寝て見る夢じゃなくて、気絶して見てるんだけど。
はあ?大丈夫なのかそれ。
まあ、そろそろ話さないとまずいなと思って、けっこう無理に気絶させたわけだし、100%大丈夫とは言えないかもしれないけど…気にすんな。
気にするよ。
まあまあ。いいから座って。
座るって、景色があいまいでどこが椅子なんだか。
なんか椅子を思い浮かべろ。そしたら座れる。
あ
ほらな。一気に会社の会議室だ。これが頭の中の世界だよ。
すごいな。
ま、それはいいとして。
ぼくちん、これからどうする?
これからって?
いや、だから、このまま俺がこうやって頭の中に居座るの、どうすんだって話。
え、そんなの、どうこうできるって話じゃ…
できるよ。ぼくちん、もう2年前のトラウマは消えつつあるんだから。
俺が頭の中で友達やって、精神保つ必要、なくなってきたんだよ。
そうなのか。
ああ。
でも、待って。…僕はトラウマはそりゃ、性欲とかで色々あったりしたけど、そんなの2年も望海以外とそういうことにならなかったんだし…とっくに吹っ切れたと思ってた
吹っ切れてなかったよ。きっかけがなかったんだから。
どういうこと?
だから、きっかけがないと、ぼくちんは自分がした酷いセックスや最低な自分について考えないようにするわけだ。性欲を女性に向ける機会を減らして、無理に忙しくしたり望海のことを考えたり、遠ざけて。そうしたら、悩んで悩んで乗り越えるものが、全部先送りになってたってことだ。
…
まあでも、補足を言うと、ぼくちんみたいな奴は、そうやって遠ざけても、どうしてもムラムラしたり、本能的に、時々理性の限界を超えることがあるわけだな。
まあ、否定はできない。
だから、その理性の限界を迎えてるのは過去の自分なんだって、そう考えるために、ぼくちんは無意識に俺を造った。
え?
「過去の自分は消せない。でも今の自分とは違うんだ」って。「僕」は更生したんだって。無意識的に切り離したんだよ、ぼくちんは。気持ち悪い自分を。頭いいよな、ほんと。自分の嫌な部分を対話相手にして、いつも優位に立ってた。それで自分を清潔に保ってたんだ。
そんなの知らなかったよ。それに、難しいよ。
あっそ。
で、まあ3割くらいは理解できただろ。
本題に戻るけど、どうしたい?
どうしたいって言われても。
あのな、ぼくちん。分かってると思うけど、俺はぼくちん自身だ。
自分には、幸せになってもらいたい。
あ、ありがとう。
だけど、これは言ってしまえば病気だ。
寿命を縮めてる。
え?
だからこそ、どこかで俺は消えないといけなかったんだ、もともと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます