菅谷勇利8
赤羽菜月:ごめん。会いたい。
ごめん。彼女が謝ることは、僕の記憶の限り、滅多になかった。
菅谷勇利:久しぶり。突然どうしたの?笑
-おいおい、返信すんなよ。無視しろそんな過去のセフレは-
セフレじゃないだろ。彼女だったろ、菜月は。
-まあ4年前は彼女だったけどさ。半年だけじゃん。それから結局1年以上セフレなんだから、期間的にさ。それにそんな不純な関係に持ち込んだ人間を、彼女だなんて綺麗な言葉で片づけるなよ。ぼくちんの悪い癖だな、自分を美化しようとするの-
赤羽菜月:え、ブロックしてたんじゃないの、私のこと。
菅谷勇利:してたよ。でも俺はいろいろ、許すことにした。自分のことも、菜月のことも、いろんな人をね笑 ブロックなんて、まるで相手が一方的な悪者みたいで、俺が逃げてるみたいでさ、やめたんだよ
-クッサ!ぼくちん、言うねえ-
赤羽菜月:ありがとう。
赤羽菜月か。
もう2年会っていなかったけど、時々、彼女の人間味があって且つさっぱりした性格を思い出す。
気軽に話せる友人としてとても居心地がよかったし、性的な関係になって距離感を破壊することなく、友人として細く長く日々を過ごしたかった。
それでも、二度と会うことはないと思っているし、そしてそうすることが二人にとって幸せなことだとも思っている。LINEでやり取りしてる、今でも。
赤羽菜月:家行っていい?
-おい、これはよくないぞ。いいことが起こる気がしない-
そうだな。
それに僕は、いまや自分のつきたい仕事について、2年前みたいな
だから今は、失うものがある状態なんだ。
菅谷勇利:家はちょっときついな。電話とかでよくない?
-まあ、いい判断だな。電話もしないでブロックでもいいと思うけど-
バカ。そんなことしたら、何されるかわからんぞ。
僕が2年前、マッチングアプリやサークル、バイトなどから知り合った女性たちと狂ったように交わっていたころ、彼女はその一人だった。
その時に、僕からの一方的な軽視や無視でひどく彼女を怒らせてしまい、10日くらい多くの彼女らしい報復を僕は受けた。
窓にトマトがぶつけられていたり、郵便受けが壊されていたり、ドアノブやドアにボンドが大量につけられていたり。
僕は大家さんに事情を説明し、それから躊躇なく静かに引っ越した。
だから彼女は、僕の今の住所を知らない。
スマホが鳴った。彼女からの電話だ。
僕はベッドに寝そべり、ワイヤレスイヤホンを耳にかけ、天井を見上げて、通話ボタンを押した。
もしもし
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