七月隆文 『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』

 お久しぶりでございます。

 今回は四作目、七月隆文さんの『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』です。


 いつもと同じように、この作品との出会いは今から8年前と少し前の事でした。

 当時高校生だった私は、通学を自転車で行っていたのですが、夏も終わりかなり涼しくなってきた頃に、たまにはいつもとは違う道から帰ってみようと冒険心を出したことで出会いました。

 当時の自分はあまり方向感覚が優れているわけでもなく、案の定知らない道という事もあり、道に迷っていた時に、ふと視界に一軒のコンビニエンスストアを捉えました。

 はっきりと具体的な店名を言ってもいいものか分からないので、店名は一応伏せておきますが、青が基調のコンビニです。

 ひとまず、コンビニに入って道を尋ねようとした時に、偶然にも書籍の置いてある棚に本書が置いてあったのです。

 これはもう、運命だと思いました、中身もまだ分からない状態で、あらすじしか読んでいない状態ではありましたがそのあらすじだけで一気に惹かれて、衝動のままにレジへと持っていったのです。


 あらすじとしては、舞台は京都、主人公はそんな京都にある美大に通う一人の男で、彼がある春の日にいつも通りの通学電車の中で出会った女の子に一目惚れをするという物です。

 始めは、一目惚れをしてからの展開が早いなと思うこともあり、すぐに両想いへとなった、正確には互いに一目惚れしたこともあってこの後は二人の甘い恋愛のストーリーが展開されるのかと予想していたのですが、読み進めていくうちにただの恋愛小説ではないと気が付きました。

 そして、彼女の秘密が明かされた時には、彼女の秘め事を理解してしまった時には思わず鳥肌に襲われ、そして読んでいる途中だというのに何度も戻って様々な場面を読み返してしまいました。

 巷でよく、一度読んだらもう一度読みたくなるといったような煽りはよく見ますが、そう言ったものは大抵が伏線が張られていた部分をもう一度見てすっきりしたい、といったようなものだと思います。

 しかし、本書はそうではなく、一度読んで彼女の秘め事を知ったからこそ、もう一度、視点を変えて読むことで真にこの一冊を楽しめたと思えるようになっているのです。


 実際、私も何度もこの作品を視点を変え、読み方を変え、順番まで変えてまでして何度も読んできました。

 その中で、どの場面もやはり素晴らしいのですが、一番に印象に残るのは、そしてこれから読む人に対して、本当にしっかりと見て欲しいと思うのは、最初の二人の出会いのシーンなのです。

 これは、決して最初の出会いがピークだからそれ以降が面白くなくなっていくわけではなく、最初のシーンをしっかりと印象に残したうえで読み進めていくからこそ、面白く読むことが出来ると思っているのです。


 基本的に、ネタバレのようなことをしたくは無いので物語の根幹になるような部分について言及はしないようにしていたのですが、これだけは言わせてください。

 二人が奇跡的にも出会えて、そして二人の人生を通して運命の相手だと思うことが出来るような、運命の相手と幸福に過ごすことが出来た、この二人の二十歳の40日間が、本当に切なく、喜ばしく、そして最高でした。


 もし、興味を惹かれたという方は、書店や、ネットで是非とも探してみてください。

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夏の記憶 かんた @rinkan

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