ジーク視点 婚約までのながれ
父上が思ってた以上に早く帰ってきたことに、少しショックを受けるも、それだけ早く、彼女の祖父と連絡が取れたことを表すので嬉しくも思う。
「どうでしたか?」
「ああ、思っていた以上にも前子爵は話がわかる方だった。明日の朝に彼女と会ってもらうつもりだよ」
「そうでしたか」
良かった。これで、彼女の祖父もおかしい人だったら、俺は絶対に彼女を会わせないだろう。たとえ、それが理由で彼女に嫌われたとしても。もう、彼女に悲しい思いをさせたくはない。
朝になり、唐突に彼女が家を出て行こうとしていたので、体で彼女を受け止める。それでも離れそうだったので、抱きしめる。
「どこに行くつもりなんだい?」
彼女が離れたそうだったので、残念だが離す事にする。だが、勝手に出て行こうとするのはよろしくないな。
彼女は俺たちに何もできないことが心苦しいらしい。何もする必要はない。彼女にはいてくれるだけで良いのに。それを伝えてもまだ納得できないらしい。そんなことをしている間に、前子爵が来たようだった。
彼女は久々に会った親族に、涙を流す。よかった。前子爵が望むものを聞いてくるが、俺としては彼女のためにしたことだったので、何もいらないと思う。だけど、これは家の問題であり、決めるのは父上なので、黙って見守る。
すると、父上はこちらを見て、微笑んだ。どうしてだ?不思議に思っていると、父上はとんでもないことを言い出した。
「では、次期伯爵のお嫁さんにアリシア嬢を候補にさせてもらっても?」
俺は何も言えずに、黙ってしまう。本当はとても嬉しいが、なんだか彼女に対して弱みを握っているみたいで、少しいやだ。助けたお礼として、付き合うのではなく、思いあって付き合いたい。
彼女は俺が望んだ人を婚約者にしてあげてほしいと父上に頼む。自分の名前はいくらでも使って良いからと。俺と違って貴族としての知識があるからか、婚約の重要性を理解しているのだろう。
だが、そんなことを言われても、より彼女が魅力的に映るだけなのだがな。彼女はそのことに気がついていないのだろう。
父上も彼女のことに気づき、俺に話を降ってくる。だから、俺は正直な気持ちを伝える。
「ジーク、アリシア嬢はこう言っているが、お前はどうなんだい?」
「俺は婚約するなら、アリシア嬢がいい。それ以外は考えられない」
「わかった。どうですかなフォード子爵」
「では、婚約と言うことで、これからもよろしく頼む」
思った以上にとんとん拍子に話は進む。ここで、彼女に止められても面白くないので、釘を刺しておこう。
「ジーク様はこれで…」
「ああ、もちろんだ。こんなに嬉しいことはない」
一目惚れだった彼女と婚約者になれるなんて夢のようだ。最初は身分の差で、一緒になることはできないと思った。だから、できるだけ彼女に似合うものを用意し、俺が彼女を着飾るだけで満足しようと思っていた。
けれど、父上が貴族になってからは、希望が見えてきた。そして、そのチャンスを手に取ることができた。
俺はもうこのチャンスを手放さない。
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「まあ、俺が彼女と婚約した経緯はこんな感じです」
「…そう。サラ様が私に釘を刺すわけね。あなた、最初から彼女に夢中じゃない」
「…ええ、そうですね。釘を刺されてもなお、彼女を何故か婚約者と思っている愚か者がいると噂を聞いたのですが?」
「耳ざといわね。わかっているわよ。遅れを取るようなことはしないわ」
学園の卒業パーティーまで、あと一週間だ。何事もなければいいのだが、あれがいる限り、何かに巻き込まれる可能性は高い。
「よろしく、お願いします」
「…ほんと、彼女のことに関してはあなたは素直ね。パーティーでは任せて」
パーティーでは俺にできることはない。あとは、王妃様に任せた方がいいだろう。
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