シルバー伯爵視点 遭遇
ジークに家を頼み、私は家を出る。ジークは13歳だが、もう立派に成長しているので任せられる。私のその意図を感じたのか、嬉しそうにしていたのがその証拠だ。
さて、ここから、フォード子爵の領地は遠い。馬車で3日くらいかかるだろう。それでも、息子のためにはやってやらないとな。
ジークは確実にアリシア嬢に惚れている。10歳まではシシリー以外の女の子とは距離をとっているように見えた。喋りかけられたら、しゃべる。自分からは話さない。そんな距離感だった。それが変わったのは、アリシア嬢に会った時からだろうか。あの日の帰りの馬車での会話は今でも覚えている。
商売の話を聞いたら、可愛かったと答えたときには笑うのを堪えるのに必死だった。あの時からジークは彼女に惚れていた。だからこそ、私は爵位を獲得したのだ。
この国は実力主義の国だ。だから、この国に利益があるとわかれば、その功績にあった爵位をもらうことができる。貴族の令嬢と婚約するには爵位が必要なので、ジークにも頑張ってもらった。まあ、理由はジークには言ってはいない。
馬車を用意して、出かけようとするときに、一人の老人と出会う。老人といってもまだ若い方か。今は忙しいのだが、仕方ない。
「ご老人、どうしましたか?」
「すまない、商人に聞くことではないとはわかっているのだが、人探しをしてもらいたくてな」
多くの人数を派遣してもらいたく、話しかけていたらしい。でも、このタイミングは…
「もしかして、フォード前子爵でしょうか?」
「!どうしてそれを。まさか、アリシアは…」
「はい。今は家で保護しています。今からあなたに情報を届けようと思っていたのですよ」
「…当主自らか?」
「もともと私は商人ですから。彼女を返すにしても人を見極めたいと思いまして」
「…あれとはあったのか?」
「ええ。こちらの身分を知らず、彼女は出て行ったと、恥ずかしげもなく言っていましたよ」
「…迷惑をかけた。すまない」
「いいえ、それで、今からでも家に来ますか?」
「いや、今からでは迷惑をかける。宿は取っているので、明日、そちらに伺ってもよろしいか?」
「ええ、もちろん」
彼女の祖父は話がわかる方でよかった。あれを見てしまっては、彼女の親族は全員見定めたいと思っても無理はないことだろう。将来的に家族になるのなら、なおさら。
私も、ジークには甘いようだ。それとも、私自身、彼女のことを気に入っているのかもしれないね。
予想外のことではあったが、目的が達成したので、家に帰る。思った以上に早かった私の帰りに、ジークが少ししょんぼりしているのがおかしかった。
大丈夫だよ、ジーク。お前がもう少し大きくなったら、重大な仕事を任せるつもりだから。今は焦らず、ゆっくりと成長すればいい。
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