サラ視点 昔話

 久しぶりに王城に来たわね。


「久しぶりね、リリア。いいえ、今は王妃様と呼んだ方がいいかしら」

「お久しぶりです、サラ様。昔のようにリリアとお呼びください」


 私が学生の時、私とリリア、そしてアイリスの3人でよくお茶会などをしていた。主に、バカ陛下についてですけど。


「本日の要件は…アイリスのことですね」

「ええ、あの子の娘の叔父が当主を名乗っているようだけど、許可したの?」

「するわけないじゃないですか。けれど、あれのバカさ加減を測りきれていなかった11そうです。申し訳ありません」

「謝らないで。あれをあなたに押し付けたのは私なのだから。私もそれは同罪よ。ただ、アイリスには悪いことをしたわね」


 空気が重くなるが、いつまでも後悔してはいられない。次の目的を果たさなくてわ。


「これで、終わりにしましょう。とりあえず、今フォード家の当主を名乗っているのは、あなたは認めていないということで、いいのよね」

「はい、書類も用意させます」

「そう。なら後は正式な後継者がいれば問題ないわけね」

「はい。いなかったとしても、アイリスの娘、アリシアでしたか、彼女が継ぎ、補佐を用意すれば問題ありません」

「あら、それは駄目よ。あの娘は息子が貰うもの」


 あの子はまだ、自分の気持ちに気づいていないみたいだけど、アリシアに一目惚れしていることは、一目瞭然なのよね。

 言い寄って来る令嬢たちはほとんど無視なのに、彼女の元へは自分から言い出したり、必死に探したり、あれで気づかない方がおかしいわ。


「そうですか、ならそれもすぐに用意しましょう。あの子たちの婚約を王家が保証しましょう。これ以上、あれに好き勝手させないためにも」

「ええ、そうしてくれると助かるわ。あれのことだから、息子の方も似たようなことをしそうなのよね」

「そうなんですよね。全く。あの時のサラ様の気持ちが痛いほどわかります」

「…後悔してる?」

「…少し、ですが、私にはセシルがいますから。それだけが救いです」

「…そう。セシル王子はあなたに似て優秀だものね」


 自分が逃げ出したこと、彼女に押し付けて、自分は気ままに生きている。そんな、罪悪感は今でもずっと残っている。だから、私はいつも彼女と会おうとはせずに、夫や息子に任せていた。ずっと逃げていたのだ。


「…サラ様は後悔していますか?私を残したことを」

「…ええ、後悔しているわ。あなたに押し付けて、逃げたことも、自由を楽しんでいることも」

「なら、気にしないでください。私は今を充実して、この国のために生きています。あなたに罪悪感を抱かれる理由はありません。けれど、これは貸しにしておきます」

「…貸し?」

「はい。もし、私が大変なことにあったら、その知恵を貸してくださいませ」

「なら、その貸しは却下よ。あなたの頼みならいつでも聞くもの。だから、その貸しは別の物を考えておいてね」


 全く、アイリスもあなたも昔から真面目なんだから。

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